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第四百十話 どんどんどんどんパワーアップ

ダンジョンでの話が予想以上に長くなりそうなので

20階層から探索開始

   ↓

20階層を探索したあと、転移石でダンジョン入り口に戻ってそこから30階層へ転移

と変更させていただきました。

それに伴い、405話と409話を辻褄が合うように修正いたしました。

既読の方はよろしければもう1度お読みいただければと思います。

 20階層の最初に降り立った転移部屋へと戻ってきた俺たち一行。

「よし、みんな魔法陣の上に乗ったな」

 魔法陣の真ん中にそそり立つ円柱の中央に転移石を近づけた。

 エレベーターに乗ったときと同じような浮遊感の後に、ダンジョンの入り口近くで自然光の差し込む転移部屋へと戻ってきていた。

『あるじー、早く早くー』

「はいはい、すぐやるよ」

 急かすスイを宥めつつ、魔法陣の中央の円柱に転移石を近づけて「30階層」と唱えた。

 さっきと同じ浮遊感の後、20階層のときと同じような薄暗い部屋へと転移していた。

『よし、行くぞ』

 フェルの掛け声を合図に、20階層のときのように俺とスイはフェルに乗り、ドラちゃんはその脇を飛ぶ布陣で30階層の探索へと繰り出した。

 30階層は、見た感じは20階層と同じような感じで石壁に囲まれた通路が続いていた。

 少し進んだ所でフェルが声をあげた。

『来るぞ』

 その声の直後、前方からやってきたのは触手をたなびかせて宙に浮く巨大な目玉の魔物のゲイザーだ。

「あれがゲイザーか。キモい見た目だな~」

 思わず眉をひそめてしまうほどグロテスクな魔物だ。

 その視線で獲物を麻痺させたり眠らせたりの状態異常を引き起こして、動けなくなったところを光線で息の根を止めるそうだ。

 何とも狡猾な魔物だが、ありがたいことに俺たち一行には神様の加護があるので状態異常は効果がない。

『いっくよーっ、エイ!』

 ビュッ―――。

「ギュァァァァァッ」

 目玉の中心をスイの酸弾で撃ち抜かれたゲイザーが断末魔の声をあげた後、ドロドロに溶けて消えていった。

「エェ……、酸を浴びせたわけじゃないのにドロドロに溶けちゃうの?」

『ゲイザーなどあまり出ない魔物ではあるが、死ぬときはそうだな』

『ああ。俺も前に2回くらい戦ったことあるけど、ドロドロに溶けていってたな』

 長寿のフェルと実は100歳超えのドラちゃんがそう言った。

「ゲイザーって見た目もキモいけど消えるときもキモいんだな……」

 顔をヒクつかせながらドン引きしていると、スイの念話が。

『あっ、何か落としたよー!』

 スイが目ざとくドロップ品に気が付いて、フェルの頭から飛び降りた。

『はい、あるじー』

 戻ってきたスイに手渡されたのはつるつるした表面で直径3センチくらいの大きさのビー玉のような緑色の石だった。

「これはヒスイか。確かゲイザーはオニキスとヒスイ、そして魔石をドロップするって地図に書いてあったな」

 ゲイザーは魔力が豊富な魔物なので、Bランクの魔物ながら高確率で魔石がドロップされるというような記載もあった。

 オニキスとヒスイと魔石か。

 ヒスイは確かにキレイだけど……。

「どうする? 30階層もくまなく回ってみるか?」

『相手も雑魚だし、食えもしないそんな石など興味ないわ』

『俺もー』

『スイはねー、ビュッ、ビュッてしていっぱいやっつけられればいいの~』

 30階層になると冒険者の数は極端に少なくなるようだけど、いないわけじゃないからなぁ。

 みんなの実力を考えると、他の冒険者とかち合うよりは、下の階に進んだ方がいいのかもしれない。

「それじゃ、この階は最短距離で通って下の階に進むか」

『うむ、それがいい』

『賛成』

「それじゃあフェルお願いな」

『承知した』

 そんな感じでフェルの誘導で30階層を最短距離で駆け抜けた俺たちは、さっさと31階層へと進んで行った。

 ちなみに、途中で出会ったゲイザーはすべてスイが瞬殺。

 とりあえず倒した分のドロップ品は機動性のあるドラちゃんにお願いして拾ってもらった。

 ボス部屋に着くと、待っている冒険者もいないうえに、ボス部屋の中にはゲイザーが多数蠢いていた。

「待ってる冒険者もいないし、すぐにでも入れるぞ。どうする?」

『もちろん行くに決まっている。スイ、撃ち漏らしのないよう倒すのだぞ』

『うんっ』

 ボス部屋に足を踏み入れた瞬間―――。

 ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ、ビュッ!

 スイの酸弾が高速連射される。

 的確に酸弾に撃ち抜かれたゲイザーが次々と断末魔とともにドロドロに溶けていった。

 勝負は一瞬のうちについていた。

『うむ、なかなか良いではないか。次もこの調子でがんばるのだぞ』

『ホント、スイもだんだん強くなってきたよな。つっても、まだまだ俺には敵わないけどさ。まぁ、がんばれよ』

『うん、スイがんばるー!』

 フェルとドラちゃんに褒められて嬉しいのか高速でプルプル振動するスイ。

 フェルもドラちゃんもがんばれなんて簡単に言うなよ。

 益々スイが張り切っちゃうじゃないか。

 スイちゃんの戦闘力がどんどんパワーアップしていく……(遠い目)

 戦闘力が爆上がりしていくスイを複雑な思いで見ながら、俺はゲイザーのドロップ品を拾い集めた。

 そして、俺たち一行は31階層へと進んで行った。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 階段を下りて、31階層へと着いた俺たちが最初に出くわした魔物は、ストーンゴーレムだった。

 そのストーンゴーレムは、フェルが爪斬撃(そうざんげき)を放って瞬殺。

 すると、オーバル型にカットされたそこそこの大きさの黄色い宝石がドロップされた。

 鑑定してみるとトパーズと出てきた。

「トパーズだって。ストーンゴーレムからは宝石がドロップされるのか。粒もけっこう大きいし価値があるかもね」

『このダンジョンのドロップ品はキラキラした石ばかりだな。雑魚相手でも、落とすなら肉の方がやる気も起きるのだがな……』

 俺が手に取ったトパーズを覗きながら、フェルがボヤいた。

「まぁまぁそう言うなよ。もっと下に行けば肉をドロップする階があるかもしれないしさ」

『だといいけどな』

 そんなやり取りをしていると、ガンゴンと石を叩く音と怒声が聞こえてきた。

「この音、この近くで戦闘してるのかな?」

『うむ、すぐそこにある部屋の中でやりあってるようだぞ』

 フェルがそう言うので、部屋に近づいて行ってそっと中を覗いてみた。

「おりゃっ、死にやがれ!」

 ドゴンッ―――。

 大きなメイスを持った大男がストーンゴーレムをぶっ叩いた。

「関節をやるから頭を潰せ!」

 ガゴンッ―――。 

 肉厚で頑丈そうな大斧を持ったこれまた大男がストーンゴーレムの膝部分の関節を叩き切る。

 膝関節を切断されて、よろめいて倒れるストーンゴーレム。

「よしきたっ!」

「おらよっ」

「そいやっ」

 ドゴンッ、バゴンッ―――。

 巨大ハンマーを持ったドワーフとウォーハンマーを持ったドワーフの、背は低いが力はありそうなドワーフコンビがストーンゴーレムの頭をぶっ叩いて粉々にしていった。

 そして……。

「おー、今回は当たりだぜ! エメラルドに魔石が出た!」

「よっしゃー!」

「これだから、ここのダンジョンの探索は止めらんねぇな!」

「今回もダンジョンから出た暁には美味い酒が飲めそうだわい!」

 そんなことを口々に言いながら拳を付き合わせて喜ぶ男たち。

 その様子を見届けて、そっと部屋を後にした。

 ……何とも汗臭そうなパーティーだったな。

 それはともあれ、今の様子を見てトリスタンさんの言葉を思い出した。

 31階に出るストーンゴーレムは大なり小なりの違いはあれど必ず宝石をドロップする。

 魔法攻撃が効きにくいストーンゴーレムは物理攻撃に特化した力量のある上級冒険者パーティーにとっては正にお宝ザックザクの相性の良い階層で、そういうパーティーはこの階を主な活動場所としているんだというようなことを言っていた。

 この階の宝石は質の良いものが多いということで、俺にも、大粒の宝石を取得した際は是非とも当ギルドへなんて手揉みしながら言ってたっけ。

 とは言っても、みんな宝石には興味なさそうだしなぁ。

 お金にはなりそうだけど。

 それに、宝石なら20階の隠し部屋分で十分だろうとか言われそうだしさ。

 そもそも元であるストーンゴーレムも雑魚扱いだし……。

 さっきの汗臭そうなパーティーに対して、フェルなんて『ストーンゴーレムを倒したくらいで、あそこまで喜べるとは幸せだのう』なんてボソリと呟いてたし、ドラちゃんも『ストーンゴーレムなんてたいしたもんじゃないだろうによぉ』なんて呟いてたもんな。

 スイはきっといっぱいやっつけられればいいって言うだろうし、うーむ。

 とりあえずフェルとドラちゃんにどうするか聞いてみると、案の定先に進むことを優先した。

 なのでここも最短距離で進むことに決まった。

 最短距離でボス部屋へと進む俺たちを発見したストーンゴーレムが追いかけてくることもあったけど、3メートル近い重量級のストーンゴーレムがフェルやドラちゃんの移動速度に付いてこれるはずもなく脱落していった。

 時々ムキムキの冒険者たちがストーンゴーレムをフルボッコにしているのを見かけて苦笑しながら、俺たちは31階層を一気に駆け抜けた。

 ボス部屋に着くと、待っている冒険者もいないうえに、ボス部屋の中にはストーンゴーレム10体が待ち構えていた。

 これ幸いとそのまま突入して、ボス戦へ。

 もちろん対峙するのはヤル気満々のスイだ。

『スイ、ストーンゴーレムを屠るなら斬撃が1番だ。お前の水魔法にもそういうのがあっただろう。ストーンゴーレムは魔法が効きにくいと言われているが、お前の力量ならば問題ない。やってみろ』

『うん、分かったー!』

 フェルの指南により、スイがウォーターカッターの魔法を展開。

 脳天から縦に一直線に切断されて左右に分かれて倒れるストーンゴーレム、腰の辺りで上半身と下半身が分かれ前後に倒れるストーンゴーレム、スイのウォーターカッターで次々とストーンゴーレムは倒れていった。

『フェルおじちゃん、どーお?』

『うむ、上出来だ』

『スイ、なかなかやるじゃんか』

『あるじはどうだったー?』

「え? あ、す、すごいぞ、スイ」

『えへへ~、スイすごいってー。嬉しいな!』

 ……フェルさんや、とりあえずスイちゃんに戦闘指南はやめような。

 フェルを睨むがまったく気が付いてないのがもどかしい。

 飄々とするフェルをちょっぴり苦々しく思いながら、俺はドロップ品の大粒の宝石を拾っていった。






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― 新着の感想 ―
たぶん勘違いでしょうか? 目玉の中心をスイの酸弾で撃ち抜かれたゲイザーが断末魔の声をあげた後、ドロドロに溶けて消えていった。 「エェ……、(酸を浴びせたわけじゃないのに)ドロドロに溶けちゃうの?」 …
[気になる点] う~ん<(・・; 原稿(初稿)内容の変更訂正修正がちょこちょこ行われるとなると、読んでいるものが既読のものか、修正変更されたものかわからないなぁ<(~~; タイトル表記以降に初稿投稿期…
[一言] ウォーターカッター、まるで先端器具ですね
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