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第四百九話 ボーナスステージ

 再び20階層を巡っていると、フェルが足を止めた。

「どうした?」

『この先、気になるな……』

 そう言いながら鼻先で指したフェルの右手の通路。

 10メートル程度行った先が行き止まりになっている場所だ。

「でも、行き止まりだぞ」

『うむ。だがその行き止まりの壁の先が怪しいのだ』

 フェルの言葉から、俺たち一行は行き止まりになっている場所へと移動した。

「この先か」

 ペシペシと壁を叩いてみるが、頑丈そうでこの先に何かがあるとはとても思えなかった。

『よし、俺の魔法で壁をぶっ壊してやる』

 そう意気込むドラちゃんだったが……。

 間髪入れずに『馬鹿者。ダンジョンの壁がそうそう壊れるはずがなかろう』とフェルの突っ込みが入る。

『じゃあどうすんだよ?』

 不貞腐れた顔のドラちゃんがフェルに聞いた。

『どこかに仕掛けがあるはずだ』

「仕掛けか……。となると、床か壁だよな」

 みんなで手分けして床を踏みしめたり、壁をペタペタと触っていくが、それらしい仕掛けは見当たらない。

「それらしいものはないなぁ……」

『あるじー、何にもないよー』

 スイも一生懸命触手で壁や床をペタペタと触っているが、何も見つからない。

「仕掛けっていっても近くにあるわけじゃないのかな?」

 フェルは行き止まりの壁の向こうがおかしいと言ってるけど、これだけ探してないってことは仕掛け自体はこの壁の近くにあるとは限らないんじゃないかな。

『……ちょっと待て。まだ探してない場所があるぜ』

「ええ? 探してない場所ってどこだよ、ドラちゃん」

 この辺の床や壁はみんなでくまなく探したのはドラちゃんも分かってるはずなのに……。

『上だよ上』

 そう言って短い腕を天井に伸ばすドラちゃん。

「天井? そうか、確かに天井までは調べてないな。でも、天井になんて仕掛けするかな?」

『いや、わからんぞ。何せここはダンジョンだからな。それに、今の今まで知られていなかったのだろう? それならばなおさらドラの言う天井というのも否定はできない』

 フェルがそう言った。

 そう言われると確かに。

 ここ20階層には、それなりの数の冒険者が入っている。

 その割には隠し部屋があるとかそういう話は聞いてないし、地図にもそれらしいものは載っていない。

 デミウルゴス様も、誰も手をつけていないからこそ教えてくださったのだと思うし。

 ならば当然見つかりにくい場所や、まさかと思うような場所であるというのも頷ける。

『まぁとにかく確認してみるぞ』

 そう言って飛んでいるドラちゃんがちっちゃい手で天井をペタペタ触っていった。

『ん? ここ何か動きそうだぞ。よっと……』

 ドラちゃんがグッと力を入れて押すと、天井部分にあった1つの石が押し込まれていった。

 ゴゴゴーッ―――。

 行き止まりになっていた壁がスライドして新たな通路が現れた。

「おおっ、ビンゴ! ドラちゃんお手柄だ! まさか天井に仕掛けがあるとはね」

『フフン、俺が見つけたんだからな!』

「はいはい、分かってるって。そんじゃ進んでみようか」

 俺たち一行は、現れた新たな通路へと進んでいった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 新たな通路を30メートルくらい進むと広い空間が現れた。

 中を覗くと、この階のボス部屋よりも広いのではないかと思われる部屋だった。

 奥に3体のガーゴイルがたたずんでいた。

 しかし、この3体のガーゴイル、大きさがおかしい。

 今までのガーゴイルの倍はあるのではという大きさをしていた。

『おいおいおい、ずいぶんとデカいガーゴイルだな』

『普通のガーゴイルではないようだ。我もあの大きさのガーゴイルは初めて見る』

「ドラちゃんもフェルも初めて見るのか?」

『ああ。あんな大きさのガーゴイルは初めてだぜ』

『我もだ。もしかしたらこのダンジョン特有のガーゴイルなのかもしれんぞ』

 ドラちゃんも初見で、長生きのフェルでさえも初見となるとかなりレアな魔物みたいだな。

 ここは慎重にいった方が良さそうだな。

『大きくったって石の魔物だもん。今までと同じくスイがやっつけちゃうよー!』

「えっ、ちょっと待ってスイ」

 攻撃態勢に入っていたスイを止めに入るが間に合わず……。

『エイッ!』

 ビュッ、ビュッ、ビュッ―――。

 大きめの酸弾が立て続けに発射された。

 さながらロケット砲が顔面にぶち当たったかのごとく、顔に大穴を開けたガーゴイルがゆっくりと倒れていった。

「スイ……」

『瞬殺だな』

『うむ。一瞬で終わったな』

『エヘヘ~、スイ強いでしょー。もっともーっと強くなるんだぁ~』

 スイちゃん、今でも十分強いからそんな強くならなくてもいいんだぞ。

 強さを求めるスイがちょっとだけ心配になる俺だった。

 そして、デカいガーゴイルが消えると、そのあとにはスクエアカットのそこそこ大きな赤、青、緑の宝石が落ちていた。

 鑑定してみると、赤はルビー、青はサファイア、緑はエメラルド。

 3体全てから宝石が出るとはね。

 しかも、けっこう大粒なのが。

 ちょっと得した気分で、宝石を拾っていく。

『あるじー、あれー』

 スイが触手で指した先を見ると、壁沿いに古びた箱がポツリと置いてあった。

「古びてるけど一応宝箱ってことなんだろうな……」

『だろうな』

『鑑定でも宝箱となっているぞ。罠もないようだから開けてみろ』

 フェルはそう言うけど、ドラン然りエイヴリング然り、ダンジョンの宝箱は罠が仕掛けられているものが多い。

 念には念を入れて……。

 そう思いながらアイテムボックスから久しぶりに取り出したのは、スイが作ってくれたミスリルの槍だ。

 槍の先端を使って古びた宝箱をこじ開ける。

 パカリと空いた宝箱を恐々覗いてみると……。

「おお~、金の延べ棒だ」

『ピカピカ~』

『なぁんだ、つまんねぇの~』

『魔道具の類なら多少は興味も沸くのだがな』

 君たち、食えるものというか肉以外だとあっさりした反応だよね。 

 だけどさ、既に人が入った階層から出たお宝としてはかなり良いと思うぞ。

 デカいガーゴイルのドロップ品の大粒宝石3つと宝箱に入っていた金の延べ棒十数本だもんな。

『無事見つけられたようじゃな。そこは言ってみれば1回限りのボーナスステージみたいなものじゃ。次はどこに現れるか分からんからのう』 

 急に頭に響いてきたデミウルゴス様の声に驚いて声が出そうになる。

 しかし、なるほど、そういう類の物なのか。

 ボーナスステージと言うだけあってこれだけで一財産だ。

 換金率が良いものばかりなのもポイントが高い。

「ありがとうございます、デミウルゴス様。次のお供え物は期待しててくださいね。奮発しますから」

『ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、楽しみにしておるぞ~い』

 楽しみにしていてください。

 デミウルゴス様が好きな日本酒、ランキングベスト10全部と最近お気に入りの梅酒のランキングベスト10を揃えて贈っちゃいますからね。  

「それじゃあ最初に転移したところに戻ろうか」

『うむ。さっさと30階層に進むぞ』

『ここからすぐに30階層へ跳べるといいんだけどな』

「ドラちゃんの言うことも分かるけど、そうもいかないよ。そういう仕様のようだしさ。ま、転移石があるだけありがたいと思おうよ」

『ねぇねぇあるじー、次の魔物って何が出てくるのー?』

「30階層の魔物か、ちょっと待っててね」

 ポケットに入れていたダンジョンの地図を確認してみる。

「えーっとね、30階層はゲイザーっていう大きい目玉の魔物だな」

『ゲイザーか。また肉も落とさん雑魚か』

 30階層の魔物がゲイザーだと聞いて顔を顰めるフェル。

 ゲイザーにもフェルの食指はまったく動かないようだ。

『えー、俺もそんな雑魚はパス。スイ任せる』

 ドラちゃんもパスとか言ってスイに丸投げだ。

「フェルとドラちゃんはゲイザーを雑魚って言うけど、けっこう強い魔物なんじゃないのか? なんか状態異常を引き起こして、光線で攻撃してくるって書いてあるぞ」

『我にとっては雑魚以外の何物でもないぞ。そもそも、状態異常は神の加護がある我等には効かんだろう』

 あっ、そうか。

『そうそう。それにあいつの魔法光線の攻撃って溜めがあるから、避けるのも簡単だぞ』

 そういうドラちゃんにフェルも『うむ』とか言ってるけど、フェルとドラちゃんだから言えることなんじゃないのそれ。

『あるじー、大丈夫だよ! 次もスイがんばるもん! だから早く行こー!』

「はいはい」

 フェルとドラちゃんから丸投げされても今度もヤル気満々のスイに苦笑いの俺だった。






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― 新着の感想 ―
[一言] 「ドラちゃんがちっちゃい手で天井をペタペタ触っていった。」 が、ツボ。可愛い(♡˙︶˙♡) 創造神さま、飛べるドラちゃんいなかったら、ボーナスステージ辿り着けなかったのでは? 盗賊王の宝とい…
盗賊王のお宝で金ピカのお宝に興奮して「ドラゴンだから光り物が好き」と言われてたドラちゃんがここの金の延べ棒には反応しないのは矛盾では……?
[一言] 回が進むにつれ、面白みが薄れてくる、主人公の発言も…
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