第三百九十四話 ビビるイサクさん
既に店頭に並んでいるお店もあるようですが『とんでもスキルで異世界放浪メシ5 ミックスフライ×海洋の魔物』が4月25日発売します!
特典情報は活動報告に詳しく書いてありますので是非チェックしてみてください。
今日は少し短いですが、5巻発売記念企画ということで今日、明日、明後日の3日連続で更新させていただこうと思っておりますのでお付き合いください。
「どうも、イサクさん」
冒険者ギルドに帰り着いた俺たち一行を見て、イサクさんがポカンと口を開けた。
「え、え、え? 今朝出かけて行ったばかりですよね? まさか討伐失敗とか?!」
あまりに帰りが早かったからなのか、討伐失敗だと勘違いするイサクさん。
そりゃそうか。
腹が減ったというみんなのために、途中で昼飯をとってから帰ってきたけどまだ日が沈む時間には早い。
ちなみにだけど、ドラゴンの肉とフェルもドラちゃんもスイも騒いだけど夕飯でなと言い聞かせて、昼飯には作り置きしていたオークの生姜焼き丼で済ませた。
「失敗なんてしてないですよ。ちゃんとタイラントフォレストパイソンを討伐してきましたから」
「ほ、本当ですか?! 失敗だったら失敗したってちゃんと言ってくださいよ!」
「いや、ですから失敗なんてしてませんって」
俺の後方で話を聞いていたフェルがヌッと顔を出した。
『おい、此奴無礼だな。噛んでいいか?』
不機嫌な顔でそう言い放つ。
『噛んじまえ噛んじまえ。だいたい俺たちが行って失敗するわけねぇじゃんな』
「ダメに決まってるだろ。ドラちゃんも煽らないの」
イサクさんに聞こえないからってフェルを煽ったらダメだろうが。
「か、か、か、噛むって、大丈夫なんですかっ、ムコーダさんっ!」
そう言いながら怯えてイサクさんが俺を盾にする。
「フェルは変なこと言わないの。早く用事を済ませて帰るんでしょ。そうじゃないと夕飯が遠のくよ」
『む、それはいかんぞ。さっさと済ませて帰ろう』
「はいはい。イサクさん、タイラントフォレストパイソンはかなりの大物なので倉庫で出した方がいいですよね」
「そ、そうですね。そうしましょう、ささ、こちらに」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
タイラントフォレストパイソンはフェルの首にかけたマジックバッグの中に入っていた。
レオンハルト王国の冒険者ギルドだと俺の情報もある程度共有されちゃってるようだし、フェルが睨みをきかせていてくれることもあって騒ぎになることはなかったけど、ここは国も違うし一応念のためにね。
フェルの首にかけてあるそのマジックバッグからタイラントフォレストパイソンを取り出すと、イサクさんが口をあんぐり開けて固まった。
「ご依頼のタイラントフォレストパイソンです。このとおりきっちり討伐してきましたよ」
『当然だ。我らが向かって依頼失敗などするはずがないのだからな。それを此奴は』
『だよな。俺とフェルとスイがいるってのにアホのヘビ公を狩れないわけがないのにな』
ああもうフェルもドラちゃんもブツブツ言わないの。
「ムコーダさーん、ありがとうございます~。これで、これで、方々から責められなくてすみます。グスッ……」
イサクさん、安心したのは分かるけど、ハゲのおっさんに涙ぐまれても困惑するだけですから。
「ええと、清算お願いできますか?」
「ハッ、すみません。討伐報酬ですが、緊急依頼でもあったので金貨230枚になります。それから、素材の方はどういたしますか? すべてギルドで買取りさせていただいてよろしいですか?」
素材か。
美味い肉なら是非引き取りたいところだけど、タイラントフォレストパイソンは不味いっていうからな。
他の素材って言っても特に引き取りたいものはないし……。
あ、皮だけは少しもらっていってもいいかも。
珍しい素材みたいだし、本業が革製品の販売のランベルトさんへのお土産にしてもいいな。
【神薬 毛髪パワー】の販売を丸投げしちゃって世話をかけてるからね。
よし、皮を3分の1くらいもらっていこう。
その旨をイサクさんに伝えると、急いでも皮とその他の素材の買取代金を渡せるのは明後日になってしまうということだった。
「そういう話だから、明後日までこの街に滞在するぞ」
そう言うと途端にあがる非難の声。
『えー、ダンジョンはどうすんだよー!』
『そうだ。ダンジョンはどうするのだっ』
「いやいや、しょうがないでしょ。皮と買取代金の受け取りが明後日なんだから」
そう言うとフェルがギロリとイサクさんを睨んだ。
「こらこら睨まない睨まない。こんな大きい魔物なんだから、しょうがないよ。ね、イサクさん」
「は、はいぃぃ。ど、どんなに急いでも明後日くらいまではかかってしまいますぅ」
フェルが睨むからイサクさんがビビッちゃったじゃないか。
「な、そういうことだから無理言わないの。ダンジョンは逃げないんだからいいだろ」
『フン、お主はダンジョン行きに積極的でないからそういうことを言うのだ』
『だよな』
胡乱な目つきでフェルとドラちゃんから見つめられてギクッとする俺。
「い、いや、別にそういうことはないんだけどね、うん。と、ああ、そうだ、イ、イサクさんにちょっと聞きたいことがあったんだった」
『話、誤魔化しやがったな』
『うむ。誤魔化したな』
うるさいやい。




