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とんでもスキルで異世界放浪メシ  作者: 江口 連


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第三百八十三話 魔道具の鑑定

『おい、何をやっているのだ?』

「ん? ああ、ほら今日は冒険者ギルドへ行くって言っただろ。そこで盗賊王の宝を買い取ってもらおうと思ってるんだけど、その前に魔道具だけは鑑定しておこうかなと思ってさ。それで使えそうなものがあればそのまま持っててもいいかなって」

 庭に出て、盗賊王が持っていた魔道具をアイテムボックスから出して鑑定しているとフェルがやってきた。

「ドラちゃんとスイはどうした?」

『昼寝というか朝寝してるな。朝飯を食って腹いっぱいになって眠くなったのだろう』

「はは、平和だなぁ」

『して、もう鑑定はしたのか?』

「この1つだけな」

 俺は2メートル角の1枚板に魔法陣が書かれた魔道具を指差した。

「遮音の魔道具だってさ。これを起動すると、ここに書かれた魔法陣の中の音が一切漏れないんだって」

 フェルが微妙な顔をしている。

『……そんなもの何の役に立つのだ?』

「まぁ、どうしても聞かれたくない話をするときには役に立つんじゃないの」

 一応魔道具だし、高価なものではあるんだろう。

 まったく欲しいとは思わないけど。

「他にもあるし、とにかく鑑定してみるよ」

『我も魔道具には少し興味がある。付き合うぞ』

 俺とフェルで魔道具を鑑定していく。

 微妙なものが多かったが使えそうなものもあった。

 石板型の大きめの火の玉(ファイヤーボール)を出す魔道具とか、魔物が寄ってこない魔道具とかは正直使えない。

 フェルたちがいるし俺自身火魔法は使えるのに、今更火の玉(ファイヤーボール)を出す魔道具とかいらないし。

 魔物が寄ってこない魔道具だって、高ランクの魔物だと効き目は薄いらしいので正直あんまり役に立たないと思う。

 見た目が水瓶の魔道具は、水が湧き出ていつでも満杯になったままの水瓶で、これは使えるからアルバン家に設置するつもりだ。

 みんなの食事はテレーザが主体になって作ることが多いようで、女性陣はアルバン家に集まって作業しているようだからな。

 井戸からの水くみも一苦労だし、これがあれば少しは楽になるだろう。

 あとは箱型の氷の魔道具、いわゆる製氷機みたいなもんもあった。

 これは使えるかと思ったんだけど、フェルの鑑定によると作れる量が少ない上に氷になるまで時間もかかるということで買い取りに出すことに。

 他の魔道具も俺とフェルで鑑定してみたけど、俺たちにとって役に立ちそうなものはなかった。

 水の刃(ウォーターカッター)を出す魔道具とか、魔道コンロとか。

 魔道コンロなんて1口しかないうえに、細かな火力の調整が効かないもので、俺が持ってる魔道コンロの足元にも及ばないバッタもんみたいなものだし。

 そして、とうとう最後の魔道具に。

 相当な年月が経っているはずなのに、少しの劣化も見られない精巧な木彫りの装飾がなされた縦横高さが1メートルくらいの四角い木製の箱。

 側面には取っ手のついた扉がある。

 これは少し期待が持てるかも。

「これで最後だ」

『これで最後? もっとあった気がしたのだが』

 ギクッ。

 例の転移の魔道具はもちろん出してない。

 魔道具はそこまで多くはなかったから、気付かれた?

「いや~、これで最後だぞ」

『そうか、まぁいい。最後は我が鑑定してみる』

「あ、ああ、お願い。フェルの方が詳しく出てくるし」

 ふぅ、セ、セーフ。

『…………む、これは食い物を冷やす魔道具みたいだぞ。それによって食い物の劣化を防ぐようだな』

「食い物を冷やすってことは、冷蔵庫か! 魔道冷蔵庫とはね~。いいじゃんいいじゃん。これは使えるよ!」

『そうなのか?』

「ああ。いろいろ使えるよ。特に肉を漬けダレに漬け込むときなんかは常温放置してたから気になってたんだよな。この国は広いから場所によっては暑いくらいのところもあるしさ。冷蔵庫があれば肉が傷む心配もないよ。それに、プリンとかゼリーとかのちょっとしたデザートもこれでできるな」

『ほうほう、それはいいな。よし、早速それを使って肉を食わせろ』

「早速それを使って肉を食わせろって、今日は予定が詰まってるの。明日な」

『むぅ、約束だからな』

「はいはい、分かりました。んじゃ、冒険者ギルドへ行くか」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 久しぶりのカレーリナの冒険者ギルドに俺とフェルで訪れていた。

 ドラちゃんとスイはまだ寝ていたいということで家で留守番だ。

「おおっ、戻ってきたのか!」

 カレーリナの冒険者ギルドのギルドマスター、ヴィレムさんが出迎えてくれた。

「お久しぶりです。帰ってきました」

「ハハッ、どうよ? ん?」

 フッサフサになった髪を撫で付けて「どうよ?」と聞いてくるギルドマスター。

 嬉しくて自慢したいのは分かるけど、ちょっとウザいですよ。

「あー、順調のようで良かったです」

「おうよ。あのシャンプーと育毛剤のおかげで順調も順調よ! おかげで噂の的だぜ」

 何でも俺が街を留守にしている間、ギルドマスターのあまりの変わり様を見て昔馴染みの元高ランク冒険者からしつこいくらいに「何を使ってるんだ?」って聞かれるし、中には噂を聞きつけて実際にこの街まで足を運ぶ人もいたという話だった。

 ギルドマスターもあまりにもしつこく聞いてくる昔馴染みに困り果てて、ランベルトさんに相談したらしい。

 それで、ギルドマスターから見て経済的にも問題がない(要は代金をしっかり払えるってことだな)高ランク冒険者に限りってことで、ギルドマスターを経由して購入できるようになったみたいだ。

 ただし、その辺の判断はきっちりするようランベルトさんから念を押されているみたいだけどね。

 俺としちゃ“神薬 毛髪パワー”の販売に一役買ってくれてありがたいけど。

「それでですね、今日は帰ってきたことの報告と、ちょっと買い取りしてもらいたいものがありまして」

「まぁた何かやらかしたのか?」

「やらかしたって失礼な。冒険者らしく冒険して得た物ですよ」

 うん、間違ってはいないぞ。

「ま、いいや。それじゃ儂の部屋で話を聞くか」

 ギルドマスターと俺とフェルで2階にあるギルドマスターの部屋に向かった。

 部屋に着くと、フェルは我関せずですぐに丸まって寝てしまった。

 俺は職員の人が淹れてくれた茶をすすりながら、ギルドマスターにローセンダールの街から帰路に手に入れた盗賊王の宝について話して聞かせた。

「……というわけで、盗賊王の宝を手に入れたのでその中のものをいくつか買い取りにだしたいと思って。って、ギルドマスター?」

 俺の話を聞いていたギルドマスターはあんぐり口を開けて唖然としていた。

「あの……」

「ハッ、またお前がどエライことしてくれたから我を忘れたわっ。まったく、お前っていうやつは……。盗賊王の宝っつったら昔から数多の冒険者が追い求めていた宝だぞ」

 ギルドマスターに何だか微妙な顔でそう言われた。

「はぁ、そうなんですか」

 としか言いようがないよ。

 見つけちゃったからしょうがないでしょ。

 しかも、神様の神託があったからだしさ。

「で、何を買い取りに出したいんだ?」

「えーと、盗賊王の宝のほとんどは金貨と宝飾品だったんで、それ以外の武器防具やら魔道具ですかね。宝飾品も買い取りしてもらえるならお願いしたいところですが」

「宝飾品か。買い取ってくれってんなら買い取れないこともないが、ダンジョン都市や王都で買い取りに出した方が利益は出るぞ」

 ダンジョン都市ではダンジョンから出る宝飾品を狙って専門の商人が集まっているし、王都はお貴族様が多いこともあって需要が多い。

 カレーリナのような地方都市では、宝飾品はそれほど需要が多いとは言えないそうだ。

 うーむ、そうなのか。

「それじゃ、ダンジョン都市に行ったときにでも買い取りしてもらうことにします。……そうだ、お願いしたいことがあるんですが」

 どうせただで手に入れたものだし買い取りに出すしかないものなら、ここで王様へ献上しておくのも手かなと思った。

 その旨ギルドマスターに伝えると、どの道盗賊王の宝を発見したことは王都にあるこの国の冒険者ギルド本部には報告しなきゃいけないようで、本部を通じて王宮にも連絡を取ってくれるとのことだ。

「お前の名前を出しゃあ王宮も嫌とは言わんだろう。で、どんな宝飾品を献上するんだ?」

「候補としてはこの3つですかね」

 ミスリル製で大小のダイヤモンドをちりばめたティアラに、同じくミスリル製のチェーンに小粒のダイヤモンドがちりばめられた台座に大粒のルビーがはめられたペンダントトップがぶら下がるペンダント、見事な彫金の台座に大粒のサファイアの載った金の指輪。

 この3つとドラちゃんにあげようとしたミスリルのチェーンに大粒のダイヤモンドがついたネックレスが今回手に入れた宝飾品の中でも目に見えて豪華なものだ。

 大粒ダイヤモンドのネックレスは、ドラちゃんがいらないと言ってはいたけど嫌いなわけではなさそうだから念のためにとっておくことにした。

「宝飾品についてはまったくの門外漢(もんがいかん)だが、高そうなことだけは分かるな……。で、どれを献上するんだ?」

 ぶっちゃけ3つとも献上してもいいんだよなぁ。

 俺はこういう宝飾品に興味ないから、結局金に換えるだけのものだし。

 うーん…………、よし、引き続きよろしくお願いしますという意味合いを含めて3つとも献上しちゃおう。

「3つとも献上しちゃいます」

「こ、これ全部かっ! 気前がいいなぁ、お前。ま、王様というか王妃様がさぞお喜びになるだろうが」

 だろうねぇ。

 でも、王妃様を味方につけておくのは悪くないと思うんだ。

 どこの世でも女性が強かったりするからね。

 この宝飾品を持って王都に行くとなると、さすがにギルドマスター1人でとは行かず、護衛に高ランク冒険者だった教官2人をお供に1週間後に王都へ出発するとのことだった。

 余計な手間かけさせたかなと思ったら「うちの支部もお前には儲けさせてもらってるからな。お安い御用だぜ」と言ってくれたので一安心だ。

 献上品はギルドマスターたちが出発する前日に渡すことで話はついた。

 その後は、倉庫に移動して武器防具やら魔道具の買い取りをお願いした。

 買い取り品の数はそれほどではなかったけど、物が物なので査定に5日ほどかかるとのことだった。

 俺とフェルは冒険者ギルドを後にして、ランベルトさんの店へと向かった。






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― 新着の感想 ―
[一言] 〉大粒ダイヤモンドのネックレスは、ドラちゃんがいらないと言ってはいたけど嫌いなわけではなさそうだから念のためにとっておくことにした。 ムコーダさんのこういう小さな優しさいいよね。 ちゃんと…
ムコーダってバカだろそんなに献上したら顔見せろって言われる伏線にしかならんやろ
[気になる点] 50ゴールドという明確な売値なのに、きっちり支払い出来る人限定というのも妙。ランベルト商会で販売してもキャッシュで買える人のみなら問題ないのでは? [一言] 神薬毛髪パワーはムコーダ…
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