第三百五十六話 モツの処理
少し短いですが、キリのいいところなので更新。
忙しさも少し落ち着いてきたので、次回はもう少し早めに更新する予定です。
「ほれ、休んでないで揉み込め揉み込め」
「疲れたよぉ~」
「泣き言言わない。食った分はしっかり働く」
「ブー」
只今、借家のキッチンにて子どもたちにモツの処理を指導中。
特に量が多い小腸や大腸、いわゆる白モツの処理をやってもらっている最中だ。
大きめのボウルに白モツを入れて小麦粉を入れてよく揉みこむ。
そして水で洗い流す。
最初は「うへぇ、ブニョブニョする~」とか「何か見た目がキモい」とか言いながらはしゃいでいた子どもたちも、何度目かになると、さすがに「疲れたぁ」とか言ってブーブー文句を垂れるようになった。
確かに力仕事だし、大変だからなぁ。
しかし、約束は約束。
休憩も挟みつつしっかり働いてもらったよ。
今日だけで大量のモツ全部の処理は無理だったけど、大量にあったモツの中でも1番量が多かった白モツの処理も3分の2くらい終わった。
今更だけど、これ俺1人でやろうと思ったら大変だったよ。
やっぱり人手が多いと仕事が進むね。
「あ~、疲れた。兄ちゃんも人使いが荒いぜ」
そうルイスがボヤいた。
ルイス少年のその言葉に他の子どもたちも無言のままウンウンと頷いた。
他の子どもたちもヘトヘトという感じだ。
「まぁ、何だ、すごく助かったよ。ありがとな、みんな。それによくやってくれたから、ほれ、別報酬だ」
子どもたちの前にダンジョン豚の肉塊を2つほどドドンと置いた。
孤児院にどれくらいの子どもがいるのかは分からないけど、一人一人にステーキは無理でもたっぷり肉の入ったスープやら炒め物で十分満腹になるくらいの量はあるはずだろう。
普通のダンジョン豚のドロップ品の肉塊でもかなりの大きさだからな。
「「「「「「うぉぉぉぉぉッ」」」」」」
ダンジョン豚の肉塊を見た途端にヘトヘトだったはずの子どもたちのテンションが上がる。
「兄ちゃん、いいのかっ?!」
ルイスが興奮した様子でそう聞いてくる。
「ああ。みんなよく働いてくれたからな」
そう言うと子供たちの歓声が上がった。
「それで、どうする? これ、けっこう重いけど持って帰れるか? 何なら運んでくけど」
「それは大丈夫。おい、ヘラルド、2、3人連れておっちゃんの店で板を借りてきてくれるか?」
「分かった」
ルイスと同じ孤児院パーティーのメンバーのヘラルドが3人を引き連れてどこかへ出かけていき、少しして木の板を持ち帰ってきた。
何でも、時々下働きさせてもらっている知り合いの店がここの近くにあるらしく、そこで板を借りてきたのだそうだ。
「よし、これに載せてみんなで運べば大丈夫」
なるほど。
これなら、みんなで持ち上げて運べるな。
子どもたちも孤児院にいい土産ができたとはしゃいでいる。
さっきまで疲れたって言ってグデーっとしてたのに、まったく現金なもんだぜ。
でもま、その方がこの後のことも頼みやすいってものだ。
「ルイス、ちょっと聞きたいんだけど、さっき下働きしてるって言ってただろ。それ、1日でどれくらいになるんだ?」
「ん? 給金か? 1日やって銅貨7、8枚ってところだな。安いけど、俺たちには現金を手に入れる機会なんてそんなにないからありがたい仕事なんだぜ」
そうかそうか、いいこと聞いた。
なおさら頼みやすいし、これなら受けてくれそうだな。
「なるほど。そこでちょっと相談なんだけどさ、実はな、まだまだモツがあるんだ。明日もこの仕事してくれたら、1人に銀貨1枚払うけど、やらないか? もちろん飯はご馳走するぞ」
「その話ホントか、兄ちゃんっ?! やるやるっ、絶対やる!」
「おいおい、みんなに相談しなくていいのか?」
「おっと。でも、みんなやるって言うと思うぞ。ちょっと待ってて」
ルイスが他の子どもたちに話を持ち掛けた。
「もちろんやるぞ!」
「銀貨1枚に飯か! やる!」
「また美味い飯にありつけるんだろ! やるに決まってるじゃん!」
「絶対絶対やるっ! 銀貨1枚に飯が食えるんだもん!」
ルイスから話を聞いた子どもたちも大いに乗り気で「やるやる」の大合唱だ。
「兄ちゃん、聞いてただろうけど、全員一致でその仕事やるって決まったぞ」
「そうか、良かった。じゃ、みんな明日お願いな」
そう言うと、子どもたちからは元気な返事が返ってきた。
「うんっ」
「また明日来るぜー」
「分かった!」
「明日も美味い飯期待してるからな!」
そしてワイのワイの元気にしゃべりながら孤児院へと帰る子どもたち。
もちろん、お土産のダンジョン豚の肉塊は忘れない。
「あっ、ちょっと待った! こん棒はどうする?」
俺は、子供たちが帰るのを見て、ここに子どもたちが来た目的を思い出した。
「あっ、そうだった!」
子どもたちも肉塊でテンションが上がってすっかり忘れていたらしい。
引き返してきた子どもたちからこん棒、まぁ硬めの薪なのだそうだが、を預かってスイにお願いした。
「スイ、これを昨日と同じ感じにしてもらえるか?」
『うん、いいよー』
スイにこん棒を渡すと、時間もかからずに次々とバットにしてくれた。
それを子どもたちに渡していくと「おお、スゲェ」と感動しきり。
みんな早速ブンブン振り回して使い心地を確認していた。
「んじゃ仕切り直して、みんな明日頼むぞ」
「「「「「「おう」」」」」」
子どもたちは、お土産のダンジョン豚の肉塊と木製バットを嬉しそうに持ちながら帰っていった。
おそらく明日で大量のモツの下処理も全部終わるはず。
そうすれば、ホルモン焼きはもちろん、モツ鍋やらモツ煮にといろいろすぐに作れるな。
楽しみだ。
次に食うモツ料理は、〆も美味いあれかなぁ。