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第三百五十一話 ドロップ品にモツが出た!

 2階層も草原が広がっていた。

 この階層にいるのは、ワイルドチキンとホーンラビットだ。

 冒険者に成り立てという感じの少年少女がチラホラと見受けられる。

 俺たちの狙いは下層のダンジョン豚とダンジョン牛の上位種だから、この階は当然スルーだ。

 この階の転移魔法陣も4箇所あると聞いているが、ここも1番遠い魔法陣へと向かった。

 どこの転移魔法陣を使っても転移先は同じ場所になるため、そこから近い転移魔法陣は結局冒険者でごった返すことになるという。

 目的の1番遠い魔法陣に向かいがてら見てみたらやっぱりズラリと行列が出来ていた。

 俺にはフェルがいてくれるから遠い魔法陣でも何てことはないけど、普通に歩いていったら何時間もかかるだろう。

 このダンジョンに潜る冒険者は、ドロップ品が生もの()ということもあって、基本日帰りということだから、混み合っているとはいえ近場の転移魔法陣を使うのが常だという。

 そういうこともあって、数多くの冒険者がメインの狩場にしている中層の8階層辺りまではこんな状態が続くという話だった。

 3階層、4階層、5階層と、特に気になる獲物もいないので何もせずに通り過ぎる。

 そして6階層。

 ダンジョン豚の生息している階層だ。

 この街でも多く需要のあるダンジョン豚がいる階層でもあり、見かける冒険者も一段と増えてくる。

「あれがダンジョン豚か。けっこうデカいな」

 ダンジョン豚は、下顎から突き出た鋭い牙が特徴の薄茶色の毛の丸々と太っている豚だった。

「どうする? 少し狩っていくか?」

『通りすがりに少し狩っていくくらいでいいだろう。我らの狙いは、これの上位種だからな』

『ああ。上位種の肉の方が美味いっていうからな。どうせ狩るなら美味い肉の方がいいもんな』

『スイはどっちでもいいよー。でも、お肉は美味しい方がいいかなぁ』

 あくまでも狙いは美味い肉の上位種ってことだね。

「それじゃ、転移魔法陣に向かうまでにかち合ったら狩ってくってことにするか」

『うむ』




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 俺たちが転移魔法陣に向かって進んでいると、前方にダンジョン豚の群れが現れた。

『む』

 ザシュッ、ザシュッ、ザシュ―――。

「「「「「「ブヒィィィィッ」」」」」」

 草原に響き渡るダンジョン豚の絶叫。

「おぅ……」

 かまいたちが吹き荒れてダンジョン豚を切り刻んでいった。

「あれはフェルの風魔法か?」

『うむ。邪魔だからな。ついでだ』

 ついでで殲滅された豚さん、ご愁傷様です。

 いた場所が悪かったな。

「とりあえず、肉拾っておくか」

『うむ』

 20頭以上いたダンジョン豚はすべて肉に変わっていた。

「ここのダンジョンは倒せば必ずドロップ品が出るのもいいよな」

 ご丁寧に葉っぱに包まれた肉塊が点々と落ちていた。

 その中に……。

「これ、モツじゃん! うぉー、これでモツ鍋とかモツ煮ができる! モツは焼いても美味いしなぁ~。楽しみが広がるぜ」

 俺がモツを拾って歓喜しているとフェルたちがよって来た。

『む、どうした?』

「モツだよモツ! これ、美味いんだぞ~」

『美味しーの? なら、スイ食べるー』

『内臓か? うーむ、お主の料理に慣れるとどうもな……』

『だよなぁ。内臓ってクセがあるしよう。食えなくはないけど、お前の料理に慣れたあとじゃ好んで食おうとは思わないよなぁ』

「でもさ、ちゃんと料理すれば美味いんだぞ。新鮮なモツは臭みもないし本当に美味いんだからな」

 俺がそう言うと、フェルもドラちゃんも「本当か?」「あれがなぁ」とか半信半疑だ。

「ま、とにかく美味いの作ってやるよ。食ったらびっくりするぞ。それにさ、ここでモツが出てくるってことは、この下の階の7階のダンジョン牛のドロップ品でも出てきそうだし、それ以降の上位種のドロップ品でも出てきそうだしな。新鮮なモツがたくさん手に入るんだから食わず嫌いは損だぞ」

 ダンジョン豚にダンジョン牛のモツがたくさん手に入れば、いろんな料理ができそうだ。

 ダンジョン牛の上位種のモツで久しぶりにモツ鍋なんてのもいいな。

 そんな感じでモツ料理に思いをはせながらドロップ品の肉を拾っていると、周りがザワザワしてきた。

「ん?」

 見ると、この階層にいた冒険者たちが俺たちの周りを囲んでいた。

「おい、あれテイマーだよな」

「珍しいな」

「俺、知ってる。Sランクのテイマーだろ」

「Sランクッ?!」

「聞いた話じゃドランとエイヴリングのダンジョンを踏破したらしいぞ」

「本当ならスゲェな、それ」

「しかしよう、あの勢いで狩られたら、俺らの獲物がなくなるぜ」

「確かに」

「数が少なくなれば湧いてくるとはいえ、翌日にならないと増えないしな」

 冒険者たちの視線が痛い。

 す、すんません。

 言い分はごもっともです。

 冒険者がたくさんいるこの階での狩りは諦めて、そそくさと撤収した。

 そして、転移魔法陣を通り7階へ。

 7階にいるのは、ダンジョン牛。

 当然この階層にも冒険者は多かった。

 いらぬ軋轢は避けるために、この階層も素通りして転移魔法陣へとすぐさま向かい8階層へ。

 8階はダンジョン豚とダンジョン牛がどちらもいる階層だ。

 6、7階層に比べて冒険者の数は若干減ったものの、けっこうな数の冒険者が狩りに勤しんでいた。

 そんなわけで、もちろんこの階もスルーだ。

 そして9階層へ。

 9階層にいるのは、俺たちの食卓にも度々上るコカトリスだ。

 この階に来てようやく冒険者の数も大分少なくなった。

「俺たちは普通に食ってるけど、そういやコカトリスもCランクの魔物だったな」

 フェルたちのおかげでいい肉ばっかり食ってるから忘れそうになるけど、俺たちがしょっちゅう食ってるオークもコカトリスも一般庶民にしたら、ちょっと奮発して食ういい肉なんだよな。

「コカトリスは少し獲っていくか」

『うむ、これの肉はまぁまぁだからな』

『ああ。これのから揚げは悪くないな』

『から揚げ~』

「あ、みんなこの辺にいるのだけでいいからな」

 フェルとドラちゃんとスイが散っていく。

 そして、10分もしないうちに辺りは肉塊だらけに……。

「ストップストップ! もう十分っ、十分だから!」

『む、もういいのか?』

『何だよ、もうか?』

『あるじー、もういいのー?』

「十分だよ。これ、拾い集める方が大変だぞ」

 ざっと数えただけでも30は下らない肉塊が。

 って、ああっ、近場にいた冒険者たちが唖然とした顔してるよ。

「みんな、さっさと拾い集めて下の階いくぞ」

 みんなにも協力してもらいさっさとコカトリスの肉を回収し、近くの転移魔法陣へ。

 次は、いよいよ目的の獲物のいる10階。

 10階からは俺たちの独壇場だ。

 まずはダンジョン豚の上位種を狩りまくるぜ!






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― 新着の感想 ―
モツは焼いてもいいし煮ても美味いからなぁ 肉より下処理大変だからムコーダさんは苦労するね
[一言] スッポンに続き、モツ回来た〜 フェルとドラちゃんが知らない、ムコーダさんだけが知る美味しいものを力説するとこ、何度読んでも((o(´∀`)o))ワクワクする〜 フェル達の知らない美味しいもの…
エイヴリングの街で自分で解体したコカトリスの内臓を食べてた上にここでダンジョン豚とかの内臓がドロップするならここのダンジョンのコカトリスからもコカトリスの内臓がドロップしてもいいとは思います。
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