第三百三十八話 神様たちがスタンバっていたようです
本日、コミックガルドにて「とんでもスキルで異世界放浪メシ」の第2話更新です!
よろしくお願いいたします!
「うぁ~、風呂サイコー」
『風呂は何度入っても気持ちいいな~』
『きもちー』
今夜もドラちゃんとスイと一緒に風呂に入っている。
畑作りで疲れた体にじんわり沁みるねぇ。
昼間、試しに買ったハーブの香り(カモミール)の入浴剤を入れてみた。
少し甘めの香りだけど、これはこれで悪くないな。
何にしても、日本人としては毎日風呂に入れるってのはいいもんだとしみじみ思う。
俺としちゃもうここに定住してもいいかもなんて思うけど、フェルたちがいるから無理だよなぁ。
みんな新しいダンジョンの話も聞いちゃってるし、行かないわけがない。
ダンジョンと騒ぎ出す日も近いだろう。
はぁ~、ダンジョンなんて行きたくねぇな~。
なんてことをつらつらと考えながらゆっくりと風呂に浸かる。
「フゥ~」
『ヴァ~』
この声はドラちゃんか。
おっさんぽい声だな。
薄目を開けて見ると、実に気持ちよさそうにプカプカ浮かぶドラちゃん。
目をつむってプカプカ浮かびながら腹をボリボリ掻いている姿は正におっさんだった。
そんな姿を見てクスリと笑い再び目をつむる。
気持ち良すぎて瞼が落ちそうになる寸前に、何とか風呂から上がる。
なかなか、風呂から出ないスイに声をかけた。
「スイ、もう上がるぞ」
返事がないままスイがプカプカ浮いている。
『おい、スイ寝てねぇか?』
「ええ?」
『Zzzz……』
「寝てるわ」
『そうだろう。ったくしょうがねぇ奴だなぁ』
ドラちゃんをタオルで拭いてやって、寝たままのスイも拭いてやる。
『俺も眠いからスイ連れて行って先に寝てるわ』
「おい、大丈夫なのか?」
『バッカ、俺だってなスイくらいは抱えられるんだよ』
そう言って、ドラちゃんにしたらちょっと大きいスイを抱き上げる。
「おお、大丈夫みたいだな。それじゃお願いな」
『へいへい』
スイを抱えたドラちゃんが2階へと飛んでいった。
俺はパジャマ代わりに着ているスウェットに着替えると、リビングに向かった。
このまま寝たい気分だけど、約束だからねぇ。
リビングのイスに座り、例のみなさんに呼びかけた。
「みなさん、いらっしゃいますか~」
『いるのじゃっ! 待ちわびていたのじゃ!』
『いるわよ!』
『おうっ、待ってたぜ!』
『待ってた』
『おおーっ、つ、ついにっ!』
『やっとだぜ!』
みなさん今か今かとスタンバっていたようだ。
でも、まさかずっと待ってたわけじゃないよな?
『待ってたぞ! ずーっと待っていたのじゃ! 妾たちへの供え物を選んでいたときから見ていたからな! 楽しみで仕方なかったのじゃ~』
おおう、そ、そこから?
ニンリル様、それって1日中見てたってことじゃないの?
『ごめんなさい。でも、私たちもすっごく楽しみにしてたのよー』
『そうそう。楽しみで楽しみでしょうがなかったんだよ。大目に見てくれよ』
『アイスとケーキ、楽しみにしてたの』
『お主が選んだウイスキーを早く飲んでみたくてうずうずしとったんじゃ』
『ああ。かなりいろんな種類選んでくれてたみたいだからな。飲むのが楽しみでしょうがないぜ』
まぁ、そう言われると気持ちも分からなくはないか。
昨日渡したのは、没収された特別ボーナス分だけだもんな。
そんなに楽しみにしてくれていたなら、早く渡しちゃいますか。
「1月分なんで量が多いんで段ボールに入ったままお渡しすることになりますね。手元に行ってから、じっくりと中を確認してみてください。それじゃ、まずはニンリル様から」
アイテムボックスからニンリル様と書かれた段ボール箱を出していく。
「見ていたのならお分かりのように、どら焼きを中心にして甘味をそろえてみましたのでどうぞお受け取りください」
『ありがとうなのじゃーっ。うわぁぁん、ひ、久しぶりのどら焼きなのじゃーっ』
ニンリル様のその言葉とともに段ボールが消えていった。
その直後に、ビリビリっと段ボールを開ける音がした。
そして……。
『どら焼きぃーっ。美味しいのじゃぁぁぁ』
…………うん、聞かなかったことで。
「えーと、次はキシャール様です。どうぞお受け取りください」
キシャール様への供え物が入った段ボールをアイテムボックスから取り出して置いた。
『あ、ありがとう! 化粧水とクリームが底をついたところだったのよ。助かったわ。良かった、本当に良かった……』
心底安心したような声でそう言ったキシャール様。
そしてキシャール様の段ボール箱が消えていった。
ニンリル様のときと同じようにすぐさま段ボール箱を開ける音がした。
『化粧水とクリーム! やっと、やっと私の求めていたものが手に入ったわ!』
キシャール様、あんたどれだけ化粧水とクリームに依存してるんですか。
「つ、次はアグニ様ですね」
アイテムボックスからアグニ様の分を出して置いたと同時に段ボールが消えた。
『ありがとなー! く~、オレの好みのビール分かってんじゃん! 昨日もらったビール、とてつもなく美味くてなぁ、もう飲んじまったんだよ。これでまたしばらくの間冷えたビールが楽しめるぜ!』
エェ~、も、もう飲んじゃったんですか?
あれだって結構入ってたと思うんだけど……。
あれを1日で飲み切るアグニ様、これで足りるのかとちょっと不安になるが、これで1か月なんとかやってもらうしかない。
『次は私。アイスください』
おおう、ルカ様が待ちきれなかったのか?
「ええと、ルカ様の分はこれです」
またもや段ボールをアイテムボックスから出したらすぐに消えたよ。
『ありがと。アイス、アイス』
フフッ、よっぽどアイスが食いたかったんだろうな。
『『次は儂(俺)らだ!』』
「はいはい、分かってますって。これがヘファイストス様とヴァハグン様の分です。よっと」
女神様たちよりも大分重い段ボールを並べていく。
『おおおーっ、待ちに待ったウイスキーじゃ!』
『昨日のウイスキーももちろん美味かったが、やっぱりいろんなウイスキーを味わいたいもんな!』
ヘファイストス様とヴァハグン様の興奮しきった声が聞こえてくると同時に段ボールが消えていった。
ベリベリッと段ボールを開ける音が。
『おおっ、お主、やっぱり分かってるのう』
『ああ。俺たちがいろんなウイスキーを飲みたいのを分かってやがるぜ。さすがだな!』
『おい、戦神のっ、これもこれも初めてのウイスキーじゃぞ!』
『おっ、本当だな! よしっ、これから飲むぞ!』
『当然じゃわい!』
『あ、お前、困ったことがあったら必ず言うんだぞ。絶対助けてやるから』
『うむ。儂もじゃ。助けるぞ』
「は、はい。い、今のところは大丈夫ですから……」
……ヘファイストス様とヴァハグン様もテンション高いよ。
というか、神様たちみんなそうだったけど。
みんな、飢えてたんだねぇ。
「ま、何とかお勤めは終わったし、さっさと寝よっと」




