第三百三十五話 再びの神々とステータスチェック
飯も食って風呂も入ってさぁて寝ようかと寝室に向かおうとしたところ……。
『ようやく、ようやく、謹慎が解けたのじゃ~。甘味を、妾に異世界の甘味をぉぉぉ。うわぁぁぁぁん』
『化粧水とクリームっ、化粧水とクリームを今すぐっ、今すぐちょうだい! お願いだからぁぁぁっ』
『頼むっ、頼むからオレにビールを!』
『…………ケーキとアイス』
『ウ、ウイスキーを、くれ……。ウイスキーを…………』
『酒酒酒。ウイスキー、ウイスキー、ウイスキー、俺にウイスキーをくれぇぇぇ』
突如頭に響いてきた神々の懇願の言葉の数々。
…………何か、カオスだな。
「お、落ちついてください。ちゃんと話を聞きますから」
そう言うと、神様たちから謝罪の嵐。
『うわぁぁぁん、ごべんなざいぃぃぃ。これからは困らせるようなことしないから、妾の楽しみを奪わないでぇ~』
『ごめんなさい、本当にごめんなさい。もう、わがままは言わないわ。だから美容製品をください。異世界の美容製品がない生活なんてもう考えられないの。お願い、お願いよぉぉぉっ』
『すまんっ! 週一はさすがにウザかったよな。本当に反省してるんだ。だからビールを、オレにビールをくださいっ!』
『週一ごとにお願いするのは、ちょっと多かったかもしれない。反省してる。だから、またケーキとアイスください』
『儂らも、いろいろと注文付けてうるさいこと言ったのは悪かったと思ってる。異世界の酒は美味すぎてのう。特にウイスキーは格別じゃからな。儂らも夢中になってしまったんだ。のう、戦神の。お主には迷惑かけた』
『鍛冶神の言うとおりだ。ウイスキーに夢中になり過ぎて、いろいろ注文つけちまったのは本当に悪かったと思ってる。すまんかった』
『『後生だから、ウイスキーを儂らに!(俺らに!)』』
神様たち、余程謹慎が堪えたようだな。
必死過ぎなのにはちょっとドン引きだけど。
ニンリル様なんて、この声、泣いてるよね。
てか号泣してるっぽいし。
何とか落ち着かせて、神様たちから話を聞くと……。
神様たちは、デミウルゴス様から謹慎以外にも厳しいお言葉を頂戴したらしい。
『創造神様が言ったのじゃ。あんまり無理強いするのなら、お主との接触を一切許さんとな。お主は優しいから、妾たちのわがままも笑って聞いてくれるかもしれないが、儂が許さんからなとおっしゃられたのじゃ』
甘味命のニンリル様までしおらしくしてるなんて、デミウルゴス様はけっこう強めに神様たちを叱ってくれたんだな。
『そうなの。そうなれば、異世界の素晴らしい品々が手に入ることは二度とないってことよ。そんなことになったら……、イヤァッ、考えたくもないわ!』
人一倍美容に気を使ってるキシャール様は異世界の美容製品にハマってたもんな。
それに、こういうのって一度いいものを使うと、それ以下の効果しか見込めないものは使う気になれないんだって。
美容製品命だった姉貴がそう言ってたのを思い出す。
『創造神様、今回は割と本気だったもんな。だからオレたちみんなで話し合って、お前にはちゃんと謝ってお願いしようってことになったんだ。オレだって、ここ最近の一番の楽しみのビールが飲めなくなるなんて絶対に嫌だし』
『……私もケーキとアイスが食べられなくなったら悲しい。もっと食べたい』
アグニ様はビールめっちゃ気に入ってるし、ルカ様もアイス大好きみたいだしね。
『儂だって同じじゃ。ウイスキーが飲めなくなるなんて考えたくもないわい。儂にとってウイスキーは正しく命の水なんじゃからのう』
『俺も同じだ。ウイスキーが味わえなくなるなんて、考えるだけでゾッとするわ。俺にとっちゃウイスキーこそ至高の酒だ。ウイスキーを味わったら、この世界の酒でなんて満足できねぇよ』
ウイスキー至上主義のヘファイストス様とヴァハグン様の酒好きコンビも、今回はさすがに思うところあったようだ。
「あー、みなさん、加護ももらってるし、節度を持っていただければ、俺もお供えするのを拒否することはないですから大丈夫ですよ」
俺がそう言うと、神様たちの間から歓声が上がった。
ニンリル様なんて、泣きながら『ありがどぉぉぉ』って言ってるよ。
「でもですね、さすがに週一はきついかなって思ってます。できれば月一くらいにしていただけると……」
『もちろんそれで問題ないわ。ねぇ、みんな』
キシャール様がそう言うと、他の神様たちも同意した。
その後少し話し合って、とりあえず月一で金貨4枚分でと決まった。
週一のときだって金貨1枚だったからね、月一に換算して金貨4枚で特に俺のほうも問題なしだ。
それで、これだけはという品があれば言ってもらって、あとはこちらにおまかせにしてもらった。
やっぱりいちいち希望を全部聞いていると時間がかかるからね。
とは言っても、大筋の希望は今までと同じだけど。
ニンリル様は当然甘味でどら焼き多めを希望。
キシャール様は美容製品で、シャンプー&トリートメント、ボディーソープ、化粧水とクリームは今までのシリーズのもの、ストック分を含めてそれぞれ2セットを希望。
アグニ様はもちろんビールを希望で、種類はおまかせということだった。
ルカ様は最初から言っているとおり、ケーキとアイスだ。
ヘファイストス様とヴァハグン様の酒好きコンビは、ウイスキー一択で、ウイスキーであればあとはまかせるとのこと。
月一なので、これで希望の品は暇な日に用意しておけばいいので楽ではある。
アイテムボックスに入れておけばニンリル様やルカ様への菓子類だって悪くはならないしね。
これで目安はたったものの、金額も金貨4枚というのもあって今回分をすぐには用意できない。
そこで、明日はゆっくりする予定だったから、今回分は明日の夜渡すということで納得してもらった。
とは言っても、ずっと我慢していたのもあって、それを聞いた神様たちの意気消沈した様子が手に取るように分かった。
だって声があからさまにショボーンとした感じなんだもんな。
なんだか可哀想になっちゃったよ。
この間デミウルゴス様に没収されたものは、どうやらデミウルゴス様とその従者さんたちで山分けされちゃったみたいだし……。
甘いかもしれないけど、デミウルゴス様に没収された特別ボーナス分の品をあげることにした。
ネットスーパーの購入履歴からすぐ買えるからね。
「あの、みなさん、今回限りですけど、没収されてしまった特別ボーナス分の品です。どうぞ」
そういっていつもの段ボール祭壇に置いたところ……。
『お主はいいやづなのじゃー。うわぁぁぁん』
『あなた本当にいい人ね。ありがとう』
『いい奴だなぁ。ありがたくもらうぜ』
『……ありがと』
『本当にありがたいのう。お主、何か困ったことがあったらすぐに相談するんじゃぞ。儂にできることなら協力するぞい』
『ああ。俺もだ。何か困ったことがあったら何でも言ってくるといい。特に武に関することだったら、俺の右に出るものはいない。何かあったら力でねじ伏せてやるぜ』
そんな感じで、みなさんえらく感激しておられた。
若干1名危ないことを言っているお方がいたけども。
「それではまた明日の夜にお呼びいたしますので」
俺がそう言うと、神様通信がプツリと切れた。
「ふぅ、とりあえずはこれでよしと。それにしても、デミウルゴス様のお灸が大分堪えたみたいだね。まぁ、月一になったのは良かったけど」
よし、もう寝よう。
みんなが寝静まった主寝室に入りベッドに横になったところでふと思い出した。
「今日はあんだけ戦ったんだし、一応ステータスだけ確認しておくか」
ベッドに横になりながら、小声でステータスと唱える。
【 名 前 】 ムコーダ(ツヨシ・ムコウダ)
【 年 齢 】 27
【 種 族 】 一応人
【 職 業 】 巻き込まれた異世界人 冒険者 料理人
【 レベル 】 77
【 体 力 】 464
【 魔 力 】 457
【 攻撃力 】 446
【 防御力 】 438
【 俊敏性 】 364
【 スキル 】 鑑定 アイテムボックス 火魔法 土魔法
従魔 完全防御 獲得経験値倍化
《契約魔獣》 フェンリル ヒュージスライム ピクシードラゴン
【固有スキル】 ネットスーパー
《テナント》 不三家 リカーショップタナカ
【 加 護 】 風の女神ニンリルの加護(小) 火の女神アグニの加護(小)
土の女神キシャールの加護(小) 創造神デミウルゴスの加護(小)
お~、レベルがけっこう上がってる。
ダンジョン入ったりで、何だかんだ俺のレベルも上がってきてはいたから、少しずつ上がりも悪くなってくるんじゃって思ってたんだけど。
オークといえども、数匹倒したから思っていたよりもレベルアップしてるな。
獲得経験値倍化もあるおかげなんだろうけど。
それにしてもレベル77か。
3つめのテナントが入るレベル80までもう少しってところまで来ちゃったな。
意図してたわけじゃないんだけど。
うーむ、次はどんなテナントが選べるのか……。
それには興味あるな。
ま、それはその時になってみないとね。
「ふぁ~、もう、寝よ」
眠気に負けた俺はそのまま目をつむった。