第三百二十五話 石窯といえばこれだよね
書籍をお買い上げいただいた皆様ありがとうございます!
担当さんの話によると、おかげ様で好評とのことです。
ちょっとホッとしました。
これからも『とんでもスキルで異世界放浪メシ』よろしくお願いいたします!
「さてと、ピザの準備だな」
あれ1回作ったことあるから作り方は分かるけど、面倒だし何だかんだ時間かかるんだよな。
滑らかになるまでこねるとか、発酵させるとかさ。
何より、作るならばフェルたちが食う分も含めて大量に作るとなると、とてもじゃないが時間がかかりすぎる。
ドライイーストの代わりにベーキングパウダーを使って発酵なしのピザ生地を作るって手もあるけど、それでもこねて伸ばしては量があるとけっこう時間がかかりそうだからな。
「そんなときに便利なのが、冷凍のピザ生地。俺もお世話になったよ」
冷凍のピザ生地は、もう形になってるから上に好みの具の載せて焼くだけ。
超お手軽で美味しいピザが楽しめる。
これのいいところは、何と言っても自由が利くところだ。
定番のマルゲリータを作るにしても、トマトソースの味やチーズの量も自分好みにできたりするし。
「生地は冷凍のを使うとして、作るピザは、定番のマルゲリータは当然作るだろ。あとは、子どもに人気の照り焼きチキンもあった方がいいな。あとは、何がいいかな……、そうだ」
アイテムボックスの中を探る。
「よしよし、まだ残ってるな」
ベルレアンで仕入れた、ホタテに似たイエロースカラップと車エビに似たバーミリオンシュリンプ。
これを使ってシーフードピザも作ろう。
そうと決まればネットスーパーで材料の調達だ。
冷凍のピザ生地だろ、それにトマトソースに使うホールトマト缶、あとはフレッシュバジルにミニトマト、それからチーズはモッツァレラチーズにピザ用のミックスチーズかな。
精算すると、いつものように段ボールが。
さて、材料がそろったらトマトソースと具の用意だな。
冷凍のピザ生地は袋のまま出しておけば、いろいろと作業している間に解凍されるだろう。
ピザ生地とトマトソースと具を用意して持って行って、あとはみんなで好きに載せてもらうようにしようと思う。
まずは、トマトソースだな。
ホールトマトをボウルに入れて手でつぶしていく。
果肉が残らないようによくつぶす人もいるみたいだけど、俺はある程度果肉が残っていた方が好みだから手でつぶす。
あとはフライパンにオリーブオイルをひいて、ニンニクのみじん切り(俺の場合はちょい多め)を入れてから弱火で炒めていく。
十分に香りが立ったところで、手でつぶしたホールトマトを入れて煮詰めて、ある程度水分が飛んだところで塩胡椒で味を調えたらトマトソースの出来上がりだ。
トマトソースはマルゲリータとシーフードピザに使うからたっぷりと用意した。
トマトソースが出来上がったら、シーフードピザ用のイエロースカラップとバーミリオンシュリンプを下ゆでして適当な大きさに切っておく。
それからプチトマトも半分に切っておく。
あとは照り焼きチキンピザに使うタマネギを薄くスライスして、肝心な照り焼きチキンを作っていく。
肉はコカトリスを使った。
一口大に切ったコカトリスの肉を油を引いたフライパンで焼いて、醤油・酒・みりん・砂糖を混ぜて作った照り焼きのたれを絡めていく。
これもうちの肉好きな面々を考えて大量に作った。
「よしと、こんなもんかな」
作ったものをアイテムボックスへとしまっていく。
「そういや、ピザカッターも必要だな。ネットスーパーにあるかな?」
ネットスーパーを開いて確認すると、あった。
調理器具は割と何でもそろっているのが非常にありがたいね。
とは言っても、あれはさすがにないから作らないとならないか。
「スイ、ちょっといいかな?」
『なぁに~』
「これで、こういうのを作ってほしいんだ」
スイにこんな感じと説明をして作ってもらった。
『これでいいかなぁ?』
「うん、バッチリだよ」
さすがスイ。
俺の説明のとおりの出来栄えだった。
よし、これを持っていざ石窯へ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
石窯のところへ行くと、仕事を終えた男性陣も集まっていた。
石窯の火入れもテレーザに頼んでいたから、いい具合に温まっている。
「あ、警備のみんなを呼んできてくれるかな」
子どもたちに頼むと、警備担当のタバサたち5人を呼びに散っていった。
少しすると、タバサたち5人を連れて子どもたちが戻ってきた。
「よーし、みんなそろったね。石窯を作ったんで、今日の夕食はピザにしようと思います」
ピザと聞いてみんな不思議そうな顔をしている。
ま、この世界にはない食い物だろうからね。
とりあえず1度見せて食ってもらった方が早いな。
土魔法で石の作業台を作り、その上にまな板を置いた。
「それじゃ俺が作ってみるから」
まずはマルゲリータだ。
解凍した冷凍のピザ生地にトマトソースをたっぷり塗ったら、モッツァレラチーズを手でちぎって載せて、バジルの葉をトッピング。
お次はシーフードピザだ。
解凍した冷凍のピザ生地にトマトソースを塗って、下ゆでして切ってあるイエロースカラップとバーミリオンシュリンプと半分に切ったミニトマトを載せたらミックスチーズをたっぷりとかけていく。
最後は照り焼きチキンピザ。
解凍した冷凍のピザ生地にマヨネーズを薄く塗って、その上に薄くスライスしたタマネギを満遍なく散らしてからコカトリスの肉の照り焼きを載せる。
その上からミックスチーズを載せてマヨネーズをトッピング。
「こんな感じかな。とりあえずこれを焼いて、みんなで味見してもらって、あとは自分で好きなように作ってもらうよ」
ここで登場するのがスイに作ってもらったピザピールだ。
石窯にピザを出し入れするヘラのような道具。
あれをスイにミスリルで作ってもらった。
ピザをピザピールに載せて……。
「あ、みんな手を洗ってきてよ。ちゃんと石鹸使ってだよ」
ピザは豪快に手で持ってパクつくもんだし、このあとはそれぞれ自分たちで作ってもらうことになるからな。
手が汚れてたら台無しだ。
みんな各自の家に戻って石鹸で手を洗って戻ってきたところで、石窯にピザを入れた。
いい具合に温まった石窯の中でピザが焼けていく。
チーズが溶けて、ピザ生地がこんがり焼けたら出来上がりだ。
まな板の上に載せて、ピザカッターで切り分けていく。
こんがり焼けたピザの香りにつられ、誰かがゴクリと喉を鳴らした。
「はい、みんな好きなの持ってって。これはね、こうやって手で持って食うんだ。アチッ……、けど、うまぁ」
マルゲリータを1ピース取って食うのを見せると、みんなわらわら集まって思い思いのピザを手に取った。
「ハフハフッ、美味しい!」
「あっつい、けど、美味い!」
「アッフ、うっま」
「このトロけてるのが美味しい~」
ピザは非常に大好評でみんな美味そうにハフハフしながら食っている。
大人たちにはマルゲリータが1番人気で次がシーフード、子どもたちには断然照り焼きチキンが人気だ。
『おい、早く我らにも食わせろ』
『そうだぜ』
『スイも食べたいよー』
おっと、フェルたちの分焼かないとな。
「何がいい?」
『当然肉だ』
『俺も肉がいいな』
『スイもお肉のがいい~』
愚問でしたな。
俺はフェル、ドラちゃん、スイの分の照り焼きチキンピザを作っていく。
肉とチーズは増量で。
そして焼くこと数分。
「はい、出来たぞー」
ピザを皿に盛って出してやる。
フェルとドラちゃんは風魔法で冷ましてから豪快にバクっと。
スイは熱くてもへっちゃらでどんどん取り込んでいる。
『うむ、なかなか美味いな。おかわりだ』
『サクッとしてるのが美味い! 俺もおかわり!』
『スイが好きなお肉と白いトロっとしたの一緒になって美味しいな! これ、スイ大好き~』
みんな照り焼きチキンピザが気に入ったみたいですぐにおかわりが入る。
急いで作って石窯へ。
「あ、みんなもそこにあるから好きなの作ってよ。焼くからさ」
声をかけると、みんなが思い思いのピザを作っていく。
大人はマルゲリータが多いな。
でも、それでも好みは人それぞれでトマトソースたっぷりとか、モッツァレラチーズ多めでとか、バジル抜きとかいろいろやっている。
タバサとバルテルはシーフードピザのようだ。
タバサはトマトソース多めにシーフードもプチトマトも多めでチーズは少なめ、バルテルはトマトソースとシーフード多めでプチトマトなしでチーズも多めだ。
コスティ君にセリヤちゃん、オリバー君とエーリク君にロッテちゃんの子ども連中は見事にみんな照り焼きチキンピザだ。
コスティ君は肉とチーズ多め、セリヤちゃんはチーズ多め、オリバー君とエーリク君は肉とマヨネーズ多め、ロッテちゃんはマヨネーズとチーズ多めと思い思いに載せている。
アホの双子はこういうことには頭が回るのか、シーフードと照り焼きチキンのハーフ&ハーフを作っていた。
そんでもって「俺たち天才だな」なんて言ってやがる。
子どもたちがそれを見て「おおっ」とか言ってるし。
みんな楽しそうで良かったよ。
俺はみんなを見ながらも、フェルたちのおかわりを次々作っていった。
スイに作ってもらったピザピールが大活躍だ。
みんなの分も焼いて、その間に俺の分も。
俺のはマルゲリータだ。
ピザはマルゲリータが1番好きだ。
うん、焼き立ては格別だ。
サクッとした生地とニンニクの利いたトマトソースとモッツァレラチーズが三位一体となって美味さ倍増。
やっぱりこれだな。
みんなはみんなで自分の作ったピザを美味そうに食っている。
ピザ、大成功だな。
今回は冷凍の生地を使ったけど、今度はちゃんと作ってもいいかもしれない。
そうだ、アイヤとテレーザにレシピを教えておこう。
ドライイーストも渡しておいて、事前に作っておいてもらうのもありだな。
こっちの小麦粉は全粒粉だから、全粒粉のピザ生地なんてのもいいかもしれない。
いろいろと夢が広がるね。
石窯、作ってよかったよ。