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第三百二十三話 何が出るかな?

 呆然としているフェニックスの面々にドラちゃんを紹介する。

「俺の従魔に加わったドラちゃんです。ドラゴンはドラゴンなんですけど、ピクシードラゴンって珍しい種類で、これで成体なんですよ。とは言っても、めちゃくちゃ強いですけどね」

「そ、そうなのか。いや、フェンリルの次はドラゴンの子どもを従魔にしたのかと思ってちょっと驚いた」

 ラーシュさん、ドラゴンの子どもじゃないけど、ドラちゃんも一応ドラゴンなんだけど。

「俺も。てっきりドラゴンの子どもだと思った。ムコーダさん、これ以上戦力強化していったい何やるつもりなんだよってさ」

 ヘンクがそう言うと、シードル、アロイス、セサルが「俺も、俺も」と同意している。

 いや、別に何をやるつもりもないし、俺が無理矢理に従魔にしたわけじゃないんだけど。

『おい、そこの人間ども失礼だな! 強さに大きさは関係ないんだぞ! 俺は図体がデカいだけのドラゴン何かには負けてないんだからな!』

 ドラちゃんが念話でそう抗議してくる。

『まぁまぁまぁ、ドラちゃんの強さは俺が分かってるからさ。それに、どんな獲物が獲れたのか見せてやればフェニックスの面々もドラちゃんが強いって分かるんじゃないの』

『そうだった。フハハハハハ、今日はすっげぇ大物獲ってきたんだぜ! なっ!』

『うむ。短い時間だったが、そこそこの獲物が獲れたぞ』

『スイもビュッビュッってしていっぱいとったー!』

 じゃあ、どんなもの獲ってきたのか確認させてもらいますか。

「飯の前にフェルたちの獲ってきたものだけ確認させてもらっていいですか?」

「もちろんだ。俺たちも興味あるしな」

 ラーシュさんがそう言うと、ほかの面々頷いている。

 フェルの首にかかっているマジックバッグを外して、中のものを探る。

「それはマジックバッグか?」

「ええ。エイヴリングのダンジョンで出たものです」

「マジックバッグか。いいな」

「ああ。でも、マジックバッグ狙いならダンジョン行くしかないな」

「やっぱダンジョンか」

「俺らも行ってみるか?」

 俺の所持するマジックバッグを見て、普段はカレーリナを拠点にこの周辺で活動しているフェニックスの面々がダンジョン行きを考え始めている。

「まぁ、潜っても必ず出るってもんじゃないと思いますけど」

 俺たちは幸運にもいくつか取得できてるけど、それも最終階層まで行ったからというのもあると思うし。

 下層に行けば行くほどお宝が出るわけだしさ。

「とりあえず出しますね」

「おおっ、すまんすまん」

 まず出てきたのは、見たことのある魔物だ。

「これは、ブラッディホーンブルですね」

『それ、スイがビュッビュッってしてたおしたんだよー!』

 スイが倒したものらしい。

 確かに酸弾のあとらしきものがある。

『見たことある牛さんがいっぱいいたから倒したんだー。だってこの牛さんのお肉おいしいんだよね』

『そうだ。よく覚えてたな。スイはえらいなぁ』

『えへへ~』

 ブラッディホーンブルは全部で20頭。

 これの肉は美味いから多いに越したことはないな。

「ブラッディホーンブルが20頭か……スゲェな……」

「これだけ並ぶと壮観だな……」

 フェニックスの面々がズラリと横たえられたブラッディホーンブルに呆気にとられている。

 ここが開けた場所で良かったよ。

 いったんブラッディホーンブルをしまって、次に出てきたのは……。

「え、ずいぶんデカいな。何だこれ……」

 出てきたのは、頭の先から尾の先まで5メートルはあろうかというトカゲっぽい魔物だ。

「こ、これはッ……」

 ラーシュさんがトカゲっぽい魔物を見て驚いた声をあげた。

「ラーシュさん知ってるんですか?」

「多分な。前に本で見たことがあるんだが、これはおそらくSランクのギガントミミックカメレオンだ」

 Sランクと聞いて、フェニックスのほかの面々がどよめいている。

 これくらいで驚いてたらまだまだですよ。

 こいつら、平気でドラゴン狩ってきますからね……、ハハハ。

 って、これトカゲじゃなくカメレオンか。

 言われてみればそんな感じだ。

『どうだ、スゲェだろう。これは俺が獲ったんだぜー。こいつ、生意気にも俺のこと食おうとしたんだぜっ。頭にきたから、返り討ちにしてやったんだ!』

 お、おお、そうか。

 手を出した相手が悪かったな、カメレオン。

 南無~。

「こ、これは、フェンリルが?」

「いえ、これを獲ったのはドラちゃんみたいですよ」

 ラーシュさんの問いにそう答えると、フェニックスの面々が全員目を見開いてドラちゃんを凝視していた。

『へへん、どうだ! 俺は強いんだからな!』

 そう言ってドラちゃんが俺たちの周りを飛び回った。

 でもその言葉、フェニックスの面々には聞こえてないからな。

 ギガントミミックカメレオンもいったんしまって、次を……。

 ん、なんかこれもデカそうだな。

 出てきたのは、これまたデカい鳥だった。

 嘴が黄色い真っ黒な羽の全長5メートルはあろうかという鷲のような鳥だ。

『それで最後だ。それは我が狩ったガルーダだ。スイの倒した牛どもを狙っていたのでな。撃ち落としてやったわ』

 フェルが念話でそう伝えてきた。

「ガルーダっていうみたいですね」

「「「「「………………」」」」」

 ラーシュさんを含めて5人とも無言で固まっていた。

「あの、大丈夫ですか?」

「…………ガルーダって狩れるもんなのか?」

「まず、滅多に見かけない。俺らだって冒険者になってそこそこだけど、存在は知ってても見かけたことないだろうが」

「そうだよなぁ。それに飛行系の魔物だぜ。しかもガルーダっつったら、攻撃も届かないような高度を飛んでるっつう話だ」

「もし、高度を落として飛んでいるところを狙ったとしてだ、相手はSランクの魔物だぞ。そうそう簡単に狩れるわけないだろうが」

「俺たち、とんでもないもん見ちまったな…………」

 で、なんでそこでフェニックスの面々は俺を見るの?

 獲ってきたの、俺じゃないだろうが。

「まぁ、フェルですから」

 その一言に尽きる。

 フェニックスの面々も悠然と立つフェルを見て納得顔。

『おい、そんなことよりも腹が減ったぞ。飯はできているのだろうな?』

『俺も腹減ったー』

『スイもお腹ペコペコ~』

「それじゃ、飯にしましょう」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「美味いなぁ~」

「ハグハグ、ホントだよ」

「肉に絡まったこのソースがたまんねぇな」

「ああ、肉と抜群に合うぜ!」

「こっちのは少しピリッとしてるのがまた美味いな」

 フェニックスの面々がバーベキューコンロで焼いた香ばしい肉にかぶりついている。

 フェルとドラちゃんとスイも皿に山盛りに盛って出してやった肉にがっついている。

 うん、確かにこの肉はイケるな。

 香ばしいうえにちょい甘のソースがよく合ってるわ。

「ロックバードの肉と聞いて、また高価な肉と思ったが、Sランクのギガントミミックカメレオンやらガルーダやらを見せられたらな。この肉も、ムコーダさんたちにとっちゃ何でもないんだろうと思うと、遠慮するのもバカらしくなったぜ」

「そうですよ、ラーシュさん。遠慮せずどんどん食ってください。みなさんもですよ」

「ああ、ありがとう」

「「「「ゴチになります」」」」

 フェニックスの面々、食うわ食うわ。

 野菜もすすめてみたけど、やっぱり肉の方が好きみたいだ。

 フェニックスの面々に負けじとフェルたちも何度もおかわり。

 結局野菜は俺とスイで食ったぜ。

 オリーブオイルと塩胡椒のみの味付けだけど、アスパラが美味かった。

 それと蒸し焼きにしたトウモロコシが文句なしに甘くて美味かったぞ。

 そんなこんなで……。

「あー食った食った」

 フェニックスの面々がパンパンになった腹を撫でている。

『うむ、美味かったぞ。やはり香ばしく焼いた肉はいいな』

『あー腹いっぱい』

『スイもお腹いっぱーい。お肉美味しかった~』

 あれだけ大量に漬け込んだ肉がきれいさっぱり消えた。

 いや~、みんなよく食ったもんなぁ。

 ここまできれいに食ってくれると、作ったこっちも清々しいね。

 あとは手早く後片付けをしてと。

「さて、それじゃ街に帰りますか」

「おうって、今からじゃ間に合わないんじゃないか? 何ならここで野営して明日の朝街に向かおう」

「いえ、大丈夫だと思いますよ。スイ、この5人乗せていってくれるか?」

『いいよー。ちょっと待ってて』

 そう言うと、スイがどんどんと大きくなっていった。

 フェニックスの面々から「うおっ」と驚きの声が上がる。

「じゃ、フェニックスの皆さんはスイに乗ってください」

「え? こ、このスライムにか?」

「このスライム、いきなり大きくなったぜ」

「ってか、このスライム、何?」

「フェンリルとドラゴンだけじゃねぇんだ。ムコーダさんの従魔は、スライムまでスゲェよ……」

「スライム、スゲェ~」

「ささっ、早く乗って乗って」

 驚いて躊躇しているフェニックスの面々を追い立ててスイに乗せる。

 俺はいつものとおりフェルに乗せてもらって……。

「じゃ、街へ帰りましょう」

 グングンと進んでいく。

 フェニックスの面々はスイの乗り心地と進み具合に大いにはしゃいでいた。

 街へは、門が閉まる寸前で間に合った。

「間に合ったな」

「ええ、なんとか」

「それにしても、ムコーダさんの従魔はみんなスゲェなぁ」

 ラーシュさんがフェルたちを見てしみじみとそう言った。

「ホントだぜ」

「やっぱテイマーっていいなぁ。俺も今からなれるかな?」

「バッカ。テイマーになんて、そんなホイホイなれるわけねぇだろ。才能がなきゃなれねぇよ」

「でも、強い従魔、憧れるよなぁ~」

 ラーシュさん以外のフェニックスの面々も次々とそう口にした。

『其奴らは阿呆か。我らのような強者が、そう簡単にお主らのようなものと従魔契約を結ぶはずがなかろう』

『ホントだぜ。美味い飯が出せないようじゃ、失格だな。そんな奴の従魔になるなんざ願い下げだね』

『あるじのご飯はおいしーよー』

 あーはいはい。

 フェニックスの面々にフェルたちの声が聞こえなくてよかったな……。

「今日はごちそうさん。何かあったら冒険者ギルドに伝言残しておいてくれよ。それじゃ、またな」

「「「「ごちそうさんっ。またな」」」」

「ええ、また」

 フェニックスの面々とは、門を入ったところで別れた。

「さて、家に帰るか」

 フェルたちとともに家へと帰った。

 そういや、鑑定しなかったけどギガントミミックカメレオンとガルーダって食えるのかな?






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― 新着の感想 ―
ムコーダさんの意思で知り合いに料理を振る舞うのは楽しそうで良いと思うなあ。 勝手に押しかけてくる何処ぞのエルフは最悪だけど。
[一言] フェニックスのメンバーは、そこまでストレスにならないなぁ。外伝「スイの大冒険」見てるからかな? フェニックスの人たちは、カレーリナの人達に慕われてるし、スイのお友だちのリクくんが憧れるだけあ…
[一言] 「遠慮するのもバカらしくなったぜ」 それは違うと思う。 タダで施すから調子に乗らせる。 その最たるキャラがエルランドとフェオドラ。
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