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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連
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第二百八十話 焼き鳥はタレそれとも塩?

『とんでもスキルで異世界放浪メシ』本日発売です。
早売りで手にされた方も今日手にされた方も書籍を購入していただいた皆様、本当にありがとうございます!
ありがたいことに好調とのことで、少しホッとしております。
発売記念キャンペーン開催しております。詳しくはオーバーラップさんのブログにて。
それから、何とCMも放送されます。まさかの実写です(笑)
TOKYO MX他で放送中のテレビアニメ「Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-」の11月26日放送回からCM放送開始です。
よろしかったらチェックしてみてください。
『まだか?』
「まだだよ」
 フェルとドラちゃんとスイが、俺が焼き鳥を焼いている目の前に陣取って今か今かと焼けるのを待っている。
 ついでにエルランドさんも俺の後ろで待機していた。
 宿に帰ってきた俺たち、というか俺はすぐさま夕飯の用意を始めた。
 もちろん今日の夕飯はコカトリスの焼き鳥だ。
 部屋付きの庭に設置した土魔法で作った石の焼き台。
 串の長さに合わせて作成し、大量に焼くことも考えて、座りながら焼けるように高さも調節した。
 土魔法で作ったイスに座って、焼き鳥をじっくり炭火で焼いている途中だった。
 目の前の焼き台にズラリと並ぶネギマとモモの串。
「よし、もうそろそろいいかな」
『なぬ、やっと食えるのか』
「違うよ。焼き鳥のタレをつけてまた焼くの」
 半分はタレ、半分は塩で焼いている。
 塩の方は焼く前に塩胡椒を振りかけてある。
 この塩胡椒もこだわってみた。
 塩は沖縄の天然塩で、胡椒はミル付きの容器に入った有機黒胡椒だ。
 塩も胡椒も少し味見してみたけど、塩は塩辛いだけじゃないマイルドな塩味と旨味を感じたし、胡椒も挽きたてだから風味抜群だ。
 これで味付けした焼き鳥はさぞかし美味いだろうと思わせる。
『ぐぬぬ、腹が減った……』
 もうちょい待てっての。
 余分な脂が程よく落ちてこんがり焼けた焼き鳥を、バイトしていた焼き鳥屋のタレのレシピを再現した醤油・みりん・酒・ザラメ・水を煮詰めたタレにくぐらせて……。
 ジューッ。
 少し焦げ目が付くくらいまで再び炭火で焼いていく。
 香ばしい香りが辺りに立ち込める。
 焼き鳥はこの匂いがたまらんな。
「うん、これくらいかな」
 塩の方を先に皿に移し、タレの方もサッと焦げ目がついたところで皿に移していく。
『やっとか。この匂いがたまらん。早くくれ』
『そうだそうだ、早くしろー』
『スイお腹減ったよー。早く食べたい!』
 フェルとドラちゃんとスイが早く早くとせがんでくる。
「ちょっと待ってて。串から外さないとダメだろ」
 フェルたちが食いやすいように焼き鳥を串から外していく。
「はい、こっちが塩でこっちがタレね」
 フェルとドラちゃんとスイの前に焼き鳥がこんもり山になった皿を2つずつ差し出すと、みんながいっせいに飛び付いた。
『うむ、これは美味い、美味いぞ。塩もタレもいい。この料理は気に入った』
『これ焼き加減がいいな。香ばしい匂いがさらに食欲をそそる。どっちも美味いけど、俺は塩の方が好みだな』
『おいしー! これスイ大好きー!』
 みんなそんなことを念話で伝えてきながらガツガツ食っている。
 焼き鳥のタレも塩も概ね好評で作った甲斐があるってもんだ。
 さっきから待っているこの人にもやらないとね。
「はい、エルランドさんもどうぞ」
「待ってました! このタレのかかった方が実に美味しそうだと思っていたんです。いただきます!」
 エルランドさんも串に刺さった焼き鳥のにかぶりついた。
「おおっ、これは待ったかいがある美味しさですね! 甘辛い味と香ばしく焼けた肉が絶妙の味わいですね~」
 うんうん、そうだろうそうだろう。
 俺がバイトしていた焼き鳥屋の大将のようにはいかないまでも、タレも同じ配合で再現したし、焼きの方も素人なりになかなか上手く焼けたと自負している。
 次の焼き鳥を焼き台に並べたら、俺も食うぞ。
 まずはこれだな。
 ネイホフで買った俺専用の自動冷却コップにネットスーパーで買った冷え冷えのビールを注ぐ。
 これなら焼き台の近くでもビールがぬるくなる心配はない。
 ゴクゴクゴク。
「クーッ、美味いッ!」
 焼き台の近くにいるからか、冷えたビールが一段と美味い。
 そしてまずは、ネギマから。
 もちろんタレの方で。
 昔から馴染みのあるのはやっぱタレだからね。
 うん、これぞ焼き鳥。
 甘辛いタレと炭火で香ばしく焼けたコカトリスの肉がたまらんな。
 間のネギも熱したことで甘味が出ているし、コカトリスの脂が染みて美味いぞ。
 1本食い終わったところで、またビール。
 ゴクゴクゴク、プハーッ。
「やっぱり焼き鳥とビールは鉄板だわ」
 そう思いつつ、次はモモの塩を。
 モモも美味いねぇ。
 このシンプルな味付けが、コカトリスの滋味あふれる旨味をさらに引き立てている。
 って、焼き鳥を堪能してばかりもいられない。
 焦がさないように、焼き台の焼き鳥をひっくり返していく。
 焼いている焼き鳥の半分はタレにくぐらせて、再び焼いて……。
「よし、次のが焼けたぞ」
 フェルとドラちゃんとスイの皿に追加で盛ってやると、再びガツガツ食い始める。
 エルランドさんにも渡してやると、嬉しそうにかぶり付いている。
「そういや、エルランドさんは酒飲まないんですか? この前も飲んでなかったですけど」
 この間の祝勝会でも飲んでなかったよな、確か。
「ええ。エルフはあまり酒は好まないのですよ。その代わり、こうして美味しい食べ物には目がないですけどね、ハハッ」
 そう言ってネギマの串にかぶり付いている。
 俺もつられてモモの串にかぶり付いた。
 そして、キューッとビールを飲み干した。
「あ~、美味い」
 よし、今度は皮やら内臓も焼いてくぞ。
 ネギマ、モモ、皮、サエズリ、ハツ、レバー、砂肝、セギモ、キンカン、ボンジリ。
 ネギマとモモは前と同じくタレと塩半々で、皮は塩、内臓類はレバーとキンカン、焼き鳥だからちょうちんか、はタレにして他は塩にした。
 ジューッ、ジューッ。
 香ばしい香り、肉から滴り落ちる脂。
 これぞ焼き鳥、たまらんな。
「よし、いいな」
 焼きあがったネギマとモモを、フェルとドラちゃんとスイに出してやる。
 そしていよいよ……。
「これが内臓ですね」
「そうです」
 内臓類は1羽分で2串ずつできたから、俺とエルランドさんで1本ずつにした。
「これは、どこの部分なんですか?」
「それはハツだから心臓ですね。プリプリとした弾力のある食感で美味いですよ」
 エルランドさんが心臓と聞いてちょっと戸惑っていたので、俺が先に食べて見せた。
 うん、美味い。
 弾力のあるプリッとした食感で内臓だけどクセがなくて実に美味い。
 バイト先の焼き鳥屋で食ったことがあるけど、コカトリスの方が旨味が強い分こっちの方が断然美味い。
 俺が美味そうに食っているのを見て、エルランドさんもハツにかぶりついた。
「おお、本当だプリッとしてますね。でもクセがなくて思ったより食べやすいです」
 エルランドさんは内臓と聞いて、もっとクセがあって初めての人には食べ難いものだと思っていたようだ。
「そうでしょう。新鮮だから余計クセがなく美味いんですよ。こっちのレバーも食ってみてください。肝臓なんですけど、これは栄養も豊富だしねっとりした食感でコクのある味で美味いですよ」
 そう言ってレバーもパクリ。
 うんうん、これも美味い。
 新鮮だからクセもないし、これなら内臓嫌いな人でもイケそうだ。
「ムコーダさんの言うとおり、コクのある旨味で実に美味しいですね」
 エルランドさんもレバーをパクつきながらそう言った。
 内臓食に恐々という感じだったエルランドさんも、食ってみたら美味いってことで、どんどんと内臓の刺さった串に手を出している。
 次の焼き鳥を炭火で焼きながら、砂肝を堪能していると、かすかにドアをノックする音が聞こえたような気がした。
「ん? 誰か来たかのかな? エルランドさん、ノックの音聞こえませんか?」
「はて、聞こえませんけど」
 ……トン…………トントン。
「あ、叩いてますね」
 ……ドンドンドンッ。
 焦れてきたのか、どんどんノックの音が大きくなってきた。
「ちょっと焼き台から目が放せないんで、エルランドさん見てきてもらってもいいですか?」
「分かりました」
 ドンドンドンドン。
「はいはい、今行きますから待ってくださいよ~」
 エルランドさんがそうボヤきながらドアの方へ向かっていった。
「ムコーダさん、お客様というか、何というか……」
 何ともはっきりしないエルランドさんの物言いにそちらを見ると……。
「え? フェオドラさん??」
 何故か、目を輝かせたフェオドラさんがいた。
「ご飯、ください」
 フェオドラさんがキラキラした目で俺を見つめながらそう言った。
 うっ…………何、その目力。
 ちょっと残念なところはあるもののなまじキレイだから、そんな目で見つめられるとちょっとというか、かなりドキドキするんだけども。
「ご飯を、ください」
 フェオドラさんがキラキラウルウルの目で再び……。
「はいっ、喜んでー!」




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