第二百五十一話 うちはみんな強いんです
朝飯後の休憩を挟んで、俺たちはセーフエリアを出発した。
俺がアイテムボックスからミスリルの槍を取り出すと、槍士のギディオンさんが凝視した。
「総ミスリルの槍とはな……」
ああ、俺の槍ってスイに作ってもらった特注品だから柄も含めて全部ミスリルで出来ているからね。
でもさ、ギディオンさんの槍もミスリル製だと思うんだけど。
「ギディオンさんの槍もミスリルじゃないですか」
「そうだが、俺のは槍先だけだからな。俺もいつかは総ミスリルの槍を手に入れたいもんだ」
俺の場合はいろいろズルして手に入れたものだからね……。
なんか、すまん。
「さすがSランク。豪勢じゃな」
俺の槍を見てシーグヴァルドさんまでそんなこと言う。
「何を言ってるんですか、あなたのウォーハンマーも魔鉄製じゃないですか。魔鉄は精製が難しいと聞きます。ウォーハンマーのような大きさとなると、かなりの一品でしょう」
エルランドさんがシーグヴァルドさんにそう突っ込んだ。
ほー、魔鉄か。
そんなものもあるんだな。
「フハハハハ、見ただけで見抜くとはさすがじゃな。これは儂がAランクになった祝いに、兄者が丹精込めて作ってくれたんじゃ。人間やエルフほどではないが、儂はドワーフの中じゃ魔力が多い方でな。火魔法が使える儂のために魔鉄製にしてくれたんじゃ。これなら重さもあるしのう。これに火魔法をまとわせて思いっきりぶっ叩く儂の攻撃は、自分で言うのも何じゃがなかなかのもんじゃぞ」
そう言ってウォーハンマーを自慢げに持ち上げるシーグヴァルドさん。
あのゴツくて重そうなウォーハンマーに火魔法をまとわせてぶっ叩く……。
めちゃくちゃ凶悪な攻撃だな、それ。
「おいおい、武器談義はそこまでにしとけ。お出ましだぞ」
そう言ったガウディーノさんが見ている方向に目を向けると……。
おおぅ。
昨日より数を増したヴェノムタランチュラとポイズンスパイダーの大群が通路一面を占拠しながらこちらに向かってきていた。
「なんか、昨日より多いですよね」
「そうみたいですね」
元Sランクでベテランのエルランドさんもこれには顔を顰めている。
ホント、この数はキモイぞ。
『お、昨日より多くなってるじゃねぇか。これは倒し甲斐があるってもんだ。そんじゃ行くぜ!』
そう言ってドラちゃんがヴェノムタランチュラとポイズンスパイダーの大群に突っ込んでいく。
『あっ、ズルい! スイも倒すんだからー!』
ドラちゃんを追ってスイもヴェノムタランチュラとポイズンスパイダーの大群に向かっていった。
「お、おいっ、大丈夫なのか?!」
ヴェノムタランチュラとポイズンスパイダーの大群に向かっていくドラちゃんとスイを見て、ガウディーノさんが焦ってそう声をあげた。
ドラちゃんもスイも小さいから心配したんだろう。
「全然大丈夫ですよ。ドラちゃんもスイも強いですから」
この階は、ドラちゃんとスイに任せておけば問題ないと思うぞ。
「そうですよ。私たちより余程強いですからね。特にドラちゃんのあの雄姿……颯爽と飛行して攻撃する姿には見惚れてしまいます」
ドラちゃんに見惚れるって、それエルランドさんだけですからね。
ゴォォォォォ―――ッ。
ドラちゃんの攻撃が始まった。
口から火を噴いてヴェノムタランチュラとポイズンスパイダーの大群を焼いていく。
さながら小型で高性能な火炎放射器だ。
ビュッ、ビュッ、ビュッ―――。
スイはドラちゃんの火魔法をかいくぐって出てきたヴェノムタランチュラとポイズンスパイダーを酸弾で始末していく。
『あるじー、また1匹は残した方がいいのー?』
『ああ、そうしてくれ』
レベルアップのためには1匹だけとはいえ馬鹿に出来ないからな。
『分かったー』
スイが残してくれたポイズンスパイダーがこちらに向かってくる。
「せいっ」
俺のミスリルの槍が、ポイズンスパイダーの背中にスッと吸い込まれていった。
うん、今回はドロップ品なしか。
でも、ドラちゃんとスイが倒した分ではかなりの量が散らばっていた。
「さて、拾っちゃいましょうか」
エルランドさんにそう声をかけると、その隣にいたアークの面々がポカンと口を開けて呆然と立ちつくしていた。
「あの、みなさん?」
「ああ、ドラちゃんとスイの攻撃を見て驚いているんですよ。初めて見たら普通はこうなりますって」
反応のないアークの面々を見てエルランドさんがそう言った。
やっぱそうなるか。
でも、うちとしちゃいつものことなんだけどな。
「ま、彼らもすぐに元に戻るでしょう。とりあえず私たちはドロップ品の回収ですね」
エルランドさんにそう言われて、とりあえず俺たちはドロップ品の回収に勤しんだ。
ドロップ品の回収が終わったころに、ようやくアークの面々も元に戻った。
「な、何なんだ、あの強さは……」
ガウディーノさんが少し顔を引きつらせてそう言った。
他のメンバーも全員その言葉に頷いている。
「いや、昨日言いましたよね。フェルはもちろん強いけど、ドラちゃんもスイも強いんですよって」
「それは聞いてはいたが、まさかこんなに強いとはな……」
「こんなに強い従魔なんて聞いたことがないぜ」
「儂もじゃ。儂はドワーフじゃし冒険者として長くやっとるが、ここまで強い従魔は聞いたことも見たこともないぞ。フェンリルならば伝説の魔獣じゃ、その強さも伝わっているから納得できるが、小さなドラゴンとスライムがこのように強いとはのう」
エルフのフェオドラさんもシーグヴァルドさんの言葉にうんうん頷いている。
ドワーフのシーグヴァルドさんもエルフのフェオドラさんも寿命が長いから冒険者歴も他の2人よりも長いんだろう。
まぁ、フェルは真打ちというかうちの大ボスだからね。
この階では満足できないらしいから、ドラちゃんとスイに任せているくらいだし。
ドラちゃんとスイが、何で強いのかなんて聞かれてもわからん。
ドラちゃんは会った時からそこそこ強かったし、スイはベビースライムから何故かみるみるうちに強くなってきちゃったしさ。
そもそもがみんな強いからって従魔にしたわけじゃないし。
それこそいつの間にか従魔になってて、それが強かったというかさ。
「何で強いのか聞かれてもわかりませんけど、そもそもフェルもドラちゃんもスイも従魔にしようと思ってしたわけじゃないというかですね……」
「ま、まぁ、これだけ強い従魔を従えているんだ、いろいろ秘密もあるだろう」
ガウディーノさんがそう言うと、アークの面々は何か勝手に納得していた。
別に秘密ってほどのこともないんだけど。
あ、みんなと念話ができることは秘密か。
「ドラちゃんは可愛さと強さを兼ね備えた稀有なドラゴンなんです。ドラちゃんに任せておけば大丈夫ですよ」
エルランドさん、何であなたが自慢げに言ってるんですか。
それにドラちゃんだけじゃなくスイもいるからね。
「エルランドさんの話じゃないですけど、ドラちゃんとスイに任せておけば大丈夫ですんで、進みましょう。あ、魔物が1匹だけ抜けてきますけど、それは俺のレベルアップのためなので俺が倒しますから」
そうアークの面々に伝えると、俺たちはボス部屋を目指して進んで行った。
途中、ドロップ品を拾うのを手伝ってくれたアークの面々にはドロップ品の1割程度を渡しておいた。
最初は固辞していたけど、押しに押してもらってもらった。
だって同じようなドロップ品が多過ぎるんだよ。
そんな感じで途中にあった部屋も攻略しながらしばらく進み、ボス部屋に到着した。
「こんなに早く進むとはな……」
「俺たちほぼ出番なしだった」
「ドロップ品拾いの仕事だけじゃったな」
「……(コクコク)」
アークの面々の言いたいことも分かるけど、俺たちの場合はいつもこんな感じだぞ。
「私もムコーダさんに同行して驚きましたよ。でも、これならドランのダンジョンを踏破できたのも分かります。おそらくここも踏破することになるでしょう」
「やはりテイマーは強いな。ムコーダさんのように強い従魔を従えているなら最強と言っても過言ではない。短い間だったがこうして同行してみると、短期間でSランクに上り詰めたのも頷ける」
そこは運が良かったというか、ネットスーパースキルのおかげというかね。
「それじゃさっさと中をキレイにしちゃいますか」
『どれ、我がやろう』
フェルが声に出してそう言った。
「何だ、フェルが行くのか?」
『えー、最後の最後でいい所持ってくのかよ?』
『フェルおじちゃんズルーい』
『フン、お主らは今まで暴れていたではないか。こういうのは年長者に譲るものだ』
『チェッ』
『むー』
フェル、こういう時だけ年長者っていうのはズルいぞ。
まぁ、倒してくれるならいいんだけどさ。
「フェンリルの戦いを見れるのか」
「こりゃ滅多に見れるもんじゃないのう。しっかり見せてもらうぞい」
アークの面々はフェルの戦いに興味津々のようだ。
ゆっくりとした歩みでフェルがボス部屋の中へと入っていった。
そして……。
ドゴンッ―――。
稲妻が走ると、ボス部屋にあふれんばかりにいたヴェノムタランチュラとポイズンスパイダーに電撃が伝わり次々と感電死していった。
『終わったぞ』
そう言ってフェルがドヤァという感じで振り返った。
ああ、そうゆうことね。
ドラちゃんやスイと同じく、自分の力もガウディーノさんたちに示しておきたかったってことかよ。
「ああ。こりゃあまた大量のドロップ品があるな……。申し訳ないんですが、ガウディーノさんたちまた手伝ってもらっていいですか?」
あ、ダメだこりゃ。
みんな顎が外れそうなくらい大口開けて固まっちゃってるよ。
ある意味フェルの思惑は大成功したな。
「エルランドさん、手伝ってもらっていいですか?」
「はいはい。彼ら今はちょっと使い物になりそうもないですもんね」
俺とエルランドさんは黙々と大量のドロップ品を回収していった。




