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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連
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第二百二十三話 レッドドラゴン

『大声を出すな』
『うるせーなぁ』
『あるじー、どうして大きい声出すのー?』
 みんなからツッコミが入った。
 イヤイヤイヤ、ここは俺悪くないからな。
 大声出るぞ、これ見せられたら。
 目の前に出された赤黒い巨体を凝視する。
 これって、どう見ても……。
「これってさ……」
『うむ。赤竜(レッドドラゴン)だ』
 …………やっぱり、そうだと思ったよ。
 というか赤竜(レッドドラゴン)にしか見えない。
『スゲェだろう。俺たちで狩ったんだぜ!』
 そう言ってドヤ顔をするドラちゃん。
『スイもビュッビュッってして当てたの~』
 獲物を吐き出して元の大きさに戻ったスイがそう言って嬉しそうにポンポン飛び跳ねた。
赤竜(レッドドラゴン)…………こんなもん獲ってきてどうしろっていうんだよ……」
 地竜(アースドラゴン)のときだって大変だったのにさ。
『この赤竜(レッドドラゴン)はまだ若い成体だから少し小さめだったのが残念だがな。まぁ、だからこそこのマジックバッグでもなんとか入れることができた』
 これで小さめなのか……。
 頭の先から尾の先まで12、3メートルはあるぞ。
赤竜(レッドドラゴン)の肉も美味いのだぞ』
 フェルさんや、これも食うのか?
 って、まぁ地竜(アースドラゴン)が食えるうえにあんだけ美味いんだから、赤竜(レッドドラゴン)も美味いのか?
 どっちにしろ、おそらくだけど赤竜(レッドドラゴン)の解体となるとベルレアンの冒険者ギルドでは無理っぽい。
 やっぱ、あの人に頼むしかないか……。
 ドランの冒険者ギルドのギルドマスター、ドラゴン狂いのエルランドさんに。
「これ解体するならドランに行かないとダメだろう」
『あの変わったエルフか?』
「ドラゴンの解体となると設備と技術がいるみたいだからね。それに、エルランドさんにはドラゴンを獲ったら必ず持ってくるって一応約束しちゃったしさ。他のところに解体頼んだら、あの人ギルドマスター辞めて一緒に付いてくるとか実際にやりそうだし……」
 ストーカーだよストーカー。
『あの様子を見るとあのエルフならやりそうだな……』
 エルランドさんのことを思い出してフェルも嫌そうな顔をする。
 あの人、地竜(アースドラゴン)に頬ずりしそうな勢いだったもんな……。
 ドラゴン狂いなとこさえなきゃいい人ではあるんだけど、うちにはドラちゃんもいるし、そんなことになったら面倒なことこの上ない。
「ここであれこれ考えてても埒が明かないし、この後は冒険者ギルドにも行かなきゃならないしな……とにかく街にも戻るぞ」
『うむ』
 俺はみんなが狩ってきた獲物をアイテムボックスにしまった。
「あ、何で赤竜(レッドドラゴン)なんてものを獲ってきたのか家に帰ったら詳しく聞かせてもらうからな」
『当然だぜ。俺たちの雄姿をとくと聞かせてやるぜ』
 なぜか得意げにドラちゃんがそう宣言する。
 まぁ、とにかく今は街に戻るのが先決だ。
 俺たちは急ぎ街に向かった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 何とか門が閉まる前に街に戻ってくることができた。
 そして今は冒険者ギルドの中にいる。
 なんかザワついているな。
 窓口に行くと、受付嬢がすぐにマルクスさんを呼んでくれた。
「何かあったんですか?」
「いや、実はな……」
 この街から少し離れた山の近くで赤竜(レッドドラゴン)が目撃されたのだという。
 目撃されたのも飛行中の赤竜(レッドドラゴン)であったことから、この辺を住処にしているわけではないだろうが警戒はしておかねばならないということらしい。
 赤竜(レッドドラゴン)か……。
 タイムリーなネタだな。
 もしかして、フェルたちが獲ってきたやつなのか?
 フェルに念話で聞いてみる。
『なぁフェル、マルクスさんが言ってる赤竜(レッドドラゴン)って……』
『うむ。気配から察するに十中八九その目撃された赤竜(レッドドラゴン)だろうな。此奴以外にはそれほど大きな気配はあの辺りはなかったからな』
 そ、そうなんだ。
 これって黙ってるわけには……いかないか。
 あれこれと指示を飛ばすマルクスさんを見たら、黙ったままというのはマズい気がした。
「あの、マルクスさん、ちょっと倉庫まで付き合ってもらえませんか?」
「ん、すまんが今は忙しい」
「その忙しさにも関係していることなので、是非とも」
 俺がそう食い下がると、何かを感じ取ったのかマルクスさんが倉庫までついてきてくれた。
「それで、何事だ?」
「倉庫の扉を閉めてもらっていいですかね」
 俺がそう言うと、マルクスさんが近くの解体担当の職員に指示を出して倉庫の扉が閉じられた。
「えーと、この辺なら大丈夫そうかな。あの、みなさん驚かないでくださいね」
 マルクスさんとその場にいた解体担当の職員の人たちにそう言い聞かせて、俺は赤黒い巨体をアイテムボックスから取り出した。
赤竜(レッドドラゴン)です」
 ………………
 …………
 ……
「あの、マルクスさん?」
 マルクスさんと解体担当の職員の人たちは赤竜(レッドドラゴン)を凝視しながら無言のまま立ちつくしていた。
 赤竜(レッドドラゴン)を見せられたらこうなるか。
 落ち着くまで少し待っていたけど、マルクスさんをはじめみんな一向に一言も発しない。
「あ、あのー、大丈夫ですか?」
 そう声を掛けたところでようやくマルクスさんがハッと我に返った。
「あ、あー、すまん。あまりのことに一瞬我を忘れたぜ」
 一瞬じゃなかったけど、まぁそこはいい。
「で、この赤竜(レッドドラゴン)は……」
「はい。目撃された赤竜(レッドドラゴン)に間違いなさそうです」
「そ、そうか……。いっきに問題解決だな。それにしても、赤竜(レッドドラゴン)を討伐したとは恐れ入るな」
「討伐というか、成り行きで……」
 そう言って俺はフェルたちを見た。
 狩りに行きたいっていうから連れてったらこの有様よ。
 別にドラゴン狩って来いなんて一言も言ってないんだけどね。
「そうだったな。お前の横について大人しくしてるから忘れちまうが、お前の従魔は伝説の魔獣フェンリルだったんだよな。フェンリルなら赤竜(レッドドラゴン)を相手にするなど造作もないか」
『うむ。我だけでも赤竜(レッドドラゴン)を狩るのに問題はないが、今日はドラとスイもいたからな。簡単な狩りだったぞ』
 フェルが声を出してしゃべるとマルクスさんが一瞬ギョッとしたような顔をしたが「そういやフェンリルは人語を理解してしゃべるんだったな」と言って1人納得している。
赤竜(レッドドラゴン)を簡単な狩りか……」
 フェルの簡単な狩り発言にマルクスさんはちょっと呆れていた。
 そりゃそうだろうな。
 ドラゴン相手に簡単だなんて。
 そんなこと言えるのはフェルくらいなもんだろう。
「そういやお前、冒険者ランクはAランクだったよな?」
 マルクスさんがそう言っていきなり俺に話を振ってきた。
「え? そうですけど」
「お前、もうSランクでいいんじゃないか?」
「え? いやいやいや、俺は関係ないでしょ。赤竜(レッドドラゴン)を獲ってきたのフェルたちなんですから」
赤竜(レッドドラゴン)を簡単に狩ってくるようなとんでもない魔獣を従魔にしてるんだから、Sランクで問題ないだろう。とういうかな、お前がSランクじゃなかったら今いる数少ないSランクのヤツらは何だって話になるだろうが」
 そんなこと言われてもさ、どうしろっていうんだよ。
「まぁいい。こんなもん見せられたんじゃお前をAランクのままにしとくわけにはいかないからな。問答無用でSランクに昇格だ」
「えーッ! 赤竜(レッドドラゴン)のことは、ここで問題になってたからもう大丈夫ですよって意味で証拠として見せただけであって、これが俺の手元にあることはできるだけ内密にお願いしたいんですけど……」
「バカモンが。赤竜(レッドドラゴン)を討伐しておいて秘密というわけにはいかんだろうが。地竜(アースドラゴン)ならいざしらず……」
 マルクスさんが言うには、行動範囲が限られている地竜(アースドラゴン)なら何とかなったかもしれないが、羽があり飛べるドラゴンについては行動範囲がそれこそ大陸全土と言っても過言ではないそうで、そういう脅威が現れた場合の対処法を冒険者ギルドで共有するのは当然な話だという。
 対処法というのは、赤竜(レッドドラゴン)をいとも簡単に狩ってきた俺たちというかフェルたちのことだけど。
「いざというときのための情報の共有は基本の基本だぞ」
 そう言われちゃうとなぁ……。
「そういうことならしょうがないとしても、一般の職員さんとか冒険者には知られないようにお願いできますか。あんまり騒がれるのも嫌なんで」
「そういうことなら、情報の共有は副ギルドマスター以上の者だけということにしておくぞ」
 それくらいだったらいいかな。
「それでよろしくお願いします」
「おうっ、お前ら呆けてないでシャキッとしろ!」
 未だ呆然と突っ立ったままの解体担当職員たちにマルクスさんが激を飛ばす。
「いいか、ここで見たことは他言無用だ。分かったな」
 マルクスさんがそう言うと、解体担当の職員の人たちはコクコクと無言のまま頷いた。
「それでだが、これはどうするんだ? うちで解体すんのは無理だぞ」
 マルクスさんにそう言われてしまった。
 やっぱりここでは無理か。
 でも、大丈夫。
 あの人なら喜んでやってくれるだろうからね。
「大丈夫です。ドランのギルドマスターのエルランドさんにお願いしますから」
「ああ、あの人な。あの人ならドラゴンの解体もできるか」
「ええ。実を言うと、地竜(アースドラゴン)もエルランドさんに頼みましたから。非常に喜んでやってくれましたよ」
「ハハッ、だろうな」
 マルクスさんも苦笑いだ。
 エルランドさんのドラゴン好きはハンパないからな。
「んで、このあとはドランに行くのか?」
「いえ。ダンジョン都市エイヴリングに行ってからドランに行こうと思ってます」
「ダンジョンか?」
「はい。フェルたちが行きたいって言ってるんで」
「こりゃドランに続いてエイヴリングのダンジョンも攻略されちまうな」
 わからんけど、フェルたちは攻略する気満々なんだろうね。
「とりあえずエイヴリングの冒険者ギルドには知らせておくぞ。んで、いつこの街を出るんだ?」
「3日後を予定してます。それまではたくさんこの街の魚介を仕入れさせてもらいますよ」
「ガハハハ、この街の魚は美味いからな」
 その後は、朝預けてあったオークの肉を引き取り、オークの肉以外の買取代金とサーベルタイガーの依頼報酬をもらった。
 買取代金と依頼報酬で金貨74枚だった。
 オークの睾丸は現状俺が提供した効果が高いダンジョン産のものがたくさんあるから、天然ものというか普通のものは値段が下がってるってことだった。
 俺は肉が手に入ればどうでもいいんだけどね。
 それで、今日フェルたちが狩ってきたコカトリスとロックバード、ジャイアントホーンラビットとゴールデンバックブルの解体も追加でお願いした。
 ジャイアントホーンラビットとゴールデンバックブルを出したら、マルクスさんに「また珍しいものを」って言われちゃったよ。
 この2つはBランクだけど森の奥深くまでいかないと見かけない珍しい魔物らしい。
 肉も極上で、珍しいから高値で売れるらしい。
 肉も売ればかなりの金額になるらしくマルクスさんに「本当に買取じゃなくていいのか?」って聞かれたけど、もちろん戻してもらうことにしたよ。
 金には困ってないし、ここで買取してもらうことにしたら肉好きのみんなに恨まれるぜ。
「明日取りに来いよ」
「はい。明日は朝市に行く予定なんで、その後によらせてもらいます」
 俺たちは冒険者ギルドを後にして、ようやく帰路についた。




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