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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連
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第二百十一話 朝市

「らっしゃいらっしゃい安いよ~」
 威勢のいい声が響き渡った。
 俺たちは港に近い場所にある朝市に来ていた。
「ほー、けっこういろんな種類あるなー」
 異世界だからどうなんだろうと思っていたが、思ってたより様々な種類の魚介が売られていた。
 魚も大小様々なものが並べられて、中には”これ食えるの?”という見てくれのものまであった。
 貝も大小様々なものがあり、見ためアサリにそっくりなものやホタテににたものもあった。
 こりゃいろいろ仕入れてくっきゃないだろ。
 俺は朝市の中を歩き回った。
 フェルたちを見て最初はギョッとするものの、従魔だと分かると案外みんな平気だった。
 ここで魚を売っているおっさんは漁師あがりが多いみたいで度胸もあるようだ。
 おばちゃんたちは……、うん、おばちゃんはどこの世界でも最強だからね。
 細かいことには気にしないんだよ。
 俺はフェルたちを引き連れて、朝市の中を歩き回っていろいろと大量に仕入れていった。
 まず購入したのは、見た目がサバにそっくりなサバンという魚で、この辺ではポピュラーでよく食われている魚だという。
 焼くと美味いって店のおっちゃんが言ってたな。
 これはサバ味噌とかいけそうだから、店にあるだけ全部購入したよ。
 一応全部購入しても大丈夫なのか聞いてみらさ……。
「見てのとおりここは魚だらけだ。どっかの店の魚が売り切れたって、他の店に同じ魚が並んでらぁ。そんなことは気にせんで、どんどん買ってってくれや」
 おっちゃんはそう言った。
 なるほどおっちゃんの言うとおり、朝市ではズラリと魚屋が並んでいる。
 もちろん1つの店で1種類の魚だけを売っているわけではないし、当然他の店と同じ魚を売っている場合も多々ありそうだ。
 おっちゃんの言うとおり1つの店で売り切れたって、他の店にはあるんだろうからあまり気にする必要はないのかもしれないな。
 それから、サケにそっくりなサーケンという魚だ。
 サケよりは少し大きいけど、身もピンク色で見た目はサケそのまんまって感じだ。
 この魚もこの辺ではよく食われているそう。
 店にいたおばちゃんが言うには、これも焼くと美味いということだった。
 サケはいろんな料理に使えるから、これも店にあるだけ購入させてもらった。
 その後に目をつけたのはアジにそっくりな魚だ。
 アジロと言って雑魚扱いで、何でも干物にするくらいしか用途がないと言っていた。
 見た目はまんまアジなんだけどね。
 これはフライにしたら絶対に美味いと俺の本能が言っている。
 バケツ1杯で銅貨3枚と破格の安さだったから、これもあるだけ全部購入した。
 そうやって朝市の中を歩きながら買い物ををしていると……。
「らっしゃいらっしゃい、ベルレアン名物のタイラントフィッシュだよ! 今朝揚がったばっかりの新鮮なやつだ! ほら買った買った!」
 タイラントフィッシュか。
 影の戦士(シャドウウォーリア)の面々が絶賛してた魚だな。
 これは是非とも入手せねば。
 タイラントフィッシュを売っている店に行くと、タイラントフィッシュらしき魚がデンっと置いてあった。
 2メートル近い大きさのタイラントフィッシュは、アマゾン川に生息する世界最大の淡水魚のピラルクーにそっくりだった。
 違うところと言えば、鋭い歯の生えた口と海に住んでいるというところくらいか。
「すんません、タイラントフィッシュください」
「おうっ、毎度あり! タイラントフィッシュは焼いてもスープにしても美味いよー」
 焼いてもスープにしてもか。
 やっぱり生では食わないみたいだね。
 でも、一応聞いてみるか……。
「あの、生では食えないんですか?」
「生だとぅ? バカ言っちゃいけないよ、生で食えるわけないだろうが! 生でなんて食ったら死ぬぞっ!」
 店のおっちゃんにものすごい勢いでそう言われた。
「って、兄さん、もしや外国の人かい?」
 この国はアングロサクソン系の顔の多いし、黒髪もいなくはないが珍しいから、店のおっちゃんはそう思ったみたいだ。
 ここはその流れに乗った。
「ええ、まぁ」
「そうか。海がない国もあるようだし、知らないってこともあるか。なら、死なないように教えてやる……」
 店のおっちゃんの話を聞いていくと、やっぱりいたよ寄生虫。
 ヴォルバラスフィッシュワームと言って、海の生物には何にでも寄生する寄生虫がいるということだった。
 この寄生虫は、魚の身と皮の間に寄生して卵を生むのだそうだ。
 特に珍しい寄生虫でもなく、海の生物が寄生される分には何の影響もないし、この寄生虫が寄生した魚が市場で売られていることもままあることなんだそう。
 だがこの寄生虫、人間が寄生されるとかなりヤバイ。
 臓器を食い荒らして、最後には宿主を死に至らしめるそうだ。
 その間わずか1週間から10日というんだからヤバ過ぎる。
 しかし、このヴォルバラスフィッシュワームには決定的な弱点があって、熱にものすごく弱いということだ。
「ヴォルバラスフィッシュワームは身と皮の間にいやがるからな。時間は短くてもいいから、とにかく熱することが大事だ」
 店のおっちゃんが言うには、ヴォルバラスフィッシュワームはとにかく熱に弱いから、短時間でもいいから焼くか煮るか炙るかすれば大丈夫とのことだった。
 やっぱ生で食わなくて正解だったわ。
 というか、前にジャイアントタレポのタタキを食ったときさ、後になってから日本基準に考えて失敗したなと思ってたんだよな。
 あれはあれで美味かったけど、口には出さなかったけど”寄生虫、大丈夫だよな?”とかけっこう心配だったんだよ。
 しばらく経ってもなんともなかったから、ああ大丈夫だったんだなってホッとしたけどさ。
 でも、きっと陸の魔物や動物にも寄生虫いるんだろうなぁ。
 肉を生に近い状態で食うことはもうないと思うけど、話の流れでさりげなく聞いてみると、やっぱり陸の魔物や動物にも寄生虫はいるとのこと。
 ヴォルバラスフィッシュワームと似た寄生虫で、これも熱に弱いということだった。
 ジャイアントタレポも一応表面は焼いたからセーフだったってことみたいだ。
 よ、良かったぜ。
「何にしても熱をとおすってことが大事ってことさな」
 店のおっちゃんがうんうん頷きながらそう言った。
 肝に銘じておくよ。
 完全生はダメでタタキみたいに短時間でも熱に晒せばセーフってことだな。
 とは言っても、ヴォルバラスフィッシュワームの話聞くとねぇ。
 すぐにタタキを食う勇気はないわ。
 生以外でも美味しく食う方法はいくらでもあるし、とりあえず煮たり焼いたり揚げたり蒸したりを駆使して魚介を楽しむことにしよう。
「んで、兄ちゃん、タイラントフィッシュどんだけ買うんだ?」
「あ、そこにある切り身全部と、あとこれも捌いてもらっっていいですか? そしたら全部買いますんで」
「兄ちゃん、金の方は大丈夫なんだろうな?」
 大量購入におっちゃんも困惑気味なのかそう聞いてくる。
 そらそうだわな。
 切り身を含めると、タイラントフィッシュ3匹分くらいになるし。
 それに、タイラントフィッシュは一応魔物枠だから他の普通の魚よりも高いみたいだし。
「大丈夫ですよ。こう見えて上の方のランクの冒険者なんです」
「おお、そうなのか。んじゃ、ちょっと待ててくれ」
 そう言うと、おっちゃんがタイラントフィッシュを捌いていく。
 さすがにこれだけの大物になると、俺では捌けないからな。
 こういうのはプロに任せるに限る。
 時間もかからずに捌いてくれて、並んでいた切り身と一緒に受け取った。
 全部で金貨2枚だ。
 他と比べて高めのタイラントフィッシュをこれだけ買っても金貨2枚とは安い。
 さすがは港町だ。
 アイテムボックスに保管すればいいんだから、じゃんじゃん買っていくぞ。
 次に目を付けたのがエビとカニだ。
 車エビに似たバーミリオンシュリンプ。
 これは車エビに似ているがそれよりも大分大きく綺麗な朱色のエビだ。
 タラバガニに似たブロンズキングクラブ。
 これもタラバガニに似ているけどそれより大きくて赤銅色をしたカニだ。
 エビとカニが不味いわけがない。
 地元の人もけっこう買っていくのを見て間違いないと思って、これも店にあるだけ買っちゃったよ。
 あとアサリに似た貝も買った。
 見た目も大きさもアサリそのまんまのミニクラムという貝だ。
 これもバケツに大量に入ってて小さいのを理由に、タダ同然の値段で売ってたよ。
 もちろんあるだけ購入させてもらった。
 味噌汁にもいいし酒蒸しにしていいし、洋風にクラムチャウダーもいい。
 それから影の戦士(シャドウウォーリア)の面々から聞いていたビッグハードクラム。
 聞いていたとおり、俺の手のひら大のデカいハマグリだった。
 これもあるだけ購入して、ビッグハードクラムの小さいので俺のこぶし大のスモールハードクラムっていうのがあったからそれもあるだけ購入した。
 スモールハードクラムは普通のハマグリより少し大きいくらいだから、BBQにピッタリだと思うんだよね。
 あとはホタテに似たイエロースカラップだ。
 普通のホタテの倍くらいの大きさで殻が黄色い。
 でも中は普通のホタテと同じだった。
 これも焼くと美味いということで、屋台でも人気だとのことだった。
 もちろんこれもあるだけ購入。
 もうちょっと見たい気もするけど、腹が減ったようでフェルたちもソワソワしだしたから今日はここまでにした。
 しかし、安い。
 種類も豊富だし、さすが海の街だ。
 これだけ大量に買っても金貨5枚もいかなかった。
 とは言っても、フェルたちにとっちゃほんの数食分にしかならない。
 俺はこの街にいる間にとにかく魚介を仕入れまくろうと誓った。
「さて、屋台で飯にするか」
『待ちくたびれたぞ』
『ホントだぜ』
『スイ、お腹空いた~』
「ごめんごめん。屋台もたくさん出てるみたいだし、いろいろ食っていいから機嫌直してよ」
『ぬ、何でもいいのか?』
「いいよ」
『そうか。よし、片っ端から食っていくぞ。ドラ、スイ行くぞ』
『おうっ』
『スイ、いっぱい食べる~』
 俺は屋台に向かってズンズン進むみんなの後に付いて行った。




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