第百五十六話 ダンジョンの汚れをきれいさっぱり落とそう
155話の銀行云々はバッサリ削除いたしました。その上で少し書き直してあります。
経済が~と言われるのを気にし過ぎました。正直に言いますと、こういう商業ギルドの銀行みたいなものは登場させるつもりはなかったので。あまり評判もよろしくないので、当初の思いどおりここはすっぱり削除させていただだくことにしました。また経済が~と言われるかもしれませんが、気にしないようにします。やっぱり気にし過ぎて自分の思ってたことと違うことすると失敗しますね。いい勉強になりました。
冒険者ギルドを後にして、それからフェルに頼んで街の外の人気のない場所に来ていた。
「それじゃブラッシングしてくからな」
俺たちはダンジョンに潜っててずっと入れなかった風呂に入りに来ていた。
ついでにフェルもダンジョンに潜って大分汚れていたから綺麗になってもらうことにしたんだ。
フェルを洗う準備にまずはブラッシングしているところだ。
『どうしてもか?』
絡まった毛を丁寧にブラッシングしていると、フェルがそんなことを聞いてくる。
「どうしても。だってダンジョンで沼地やら砂漠やらあったからめっちゃ汚れてるじゃん」
『ぬ、我はそんなに汚れてるとは思わんのだが……』
「いやいや、汚れてるからな。触ると埃っぽいし、足元なんかは、ほら、泥が固まってこんなに毛が絡まってる」
足元をブラッシングしながらフェルにそう言うと、フェルが嫌そうな顔をする。
洗われるのそんなに嫌なのかね。
埃っぽいんだし、綺麗になったら気持ちいいと思うんだけどねぇ。
特に毛が絡まっていた足元を中心にブラッシングして、よし、ブラッシング終了。
「スイ、お湯作るから水出してね」
『分かったー』
『ぬ、湯など必要ない。水でいいから早くしろ』
お湯で洗おうと用意しようとしたら、フェルは水でいいと言う。
「でも、水じゃ冷たいし風邪ひくんじゃないのか?」
ここは暑くもなく寒くもない気候だけど、さすがに水だとねぇ。
『馬鹿者。我を誰だと思っている。水を浴びた程度でどうにかなるわけなかろうが。それにニンリル様の加護もあるのだぞ。病気になどかからんわ。それよりもやるなら手早くやれ』
あー、水苦手なもんだからやるなら時間かけてないで早くやれってことね。
それなら水でパッパとやっちゃいますか。
『えー水で洗うのか? お湯の方が気持ちいいのに。ま、フェルが早く終わってくれた方が俺たちは早く風呂に入れるんだけどさ』
そう言うのはドラちゃんだ。
ドラちゃんはすっかり風呂が気に入ったようだ。
『そうだろう。早く終わった方がお主らもいいだろう。そういうことだから早く終わらせるのだ』
「はいはい。じゃ、水で手早く洗っちゃうわ」
『うむ』
「スイ、フェルに水かけてくれるか?」
『いいのー?』
『うむ。スイ、やれ』
『分かったよー』
スイがフェルに向かって放水する。
汚れがひどいところは水で落としつつ、全身が濡れたところでスイに放水をやめてもらった。
そして、前にフェルを洗ったときに買った獣医おすすめシャンプーが残ってたから、それをつけていく。
まずは背中をワシャワシャ。
『おい、もっと力を入れろ』
はいはい。
俺は力を入れてガシガシ洗っていく。
『そこもう少し力を入れてこすれ』
へいへい。
ここが痒いんですね。
ガシガシ、ガシガシ、力を入れて洗う。
『そこはもう少しやれ』
あーはいはい。
もう少し時間かけてってことですね。
ガシガシ、ガシガシ、ガシガシ。
手早く洗えと言う割には洗い始めたら、ここはもう少し力を入れてこすれとかここはもう少しやれとかいろいろ注文が多い。
そこは注文どおり洗ってやりながら全身くまなく洗っていく。
「よし、いいな。スイ、またフェルに水かけてー」
『はーい』
スイがまたフェルに向かって放水する。
フェルについた泡が洗い流されていった。
「フェル、顔も洗うからな」
『ぬぅ、早くやれい』
「スイ、水を少し弱めの雨みたいにフェルの顔にかけてくれるか」
『うん、分かったー』
シャーっと弱めの水のシャワーがフェルの顔に降り注ぐ。
フェルの顔の汚れを落としてと。
「よし、スイ、もういいよ」
『ふー、やっと終わったか』
「フェルッ、ちょ、ちょっと待てッ。俺たちが離れるまでブルブルってやるなよッ」
ブルブルっとやりそうなすんでのところで止める。
俺とドラちゃんとスイがフェルから離れる。
「いいぞー」
俺がそう言うと同時に盛大にブルブルブルっと体を震わすフェル。
そうやって水を切った後は、自分で温風を出して体を乾かしている。
「それじゃ、俺たちも風呂入るか」
『おうっ』
『やったー』
風呂に入る準備をしていると、体をすっかり乾かし終わったフェルが話しかけてきた。
『お主たちが風呂に入っている間に狩りに行ってくるぞ』
「ん、いいけど、洗ったばかりなんだからあんまり汚れてくるなよ」
『ぬ、分かっておるわ』
「狩りに行くなら鳥系の魔物、ロックバードとかコカトリスがいいな。鳥肉の手持ちが少ないからさ」
『分かったぞ』
「あ、それとこれ」
俺はアイテムボックスからマジックバッグ(中)を出した。
これは肩掛け鞄みたいな形だからフェルも持ちやすいだろう。
『マジックバッグか?』
「ああ。たくさん獲ったときはこれに入れた方が便利だろ?」
『うむ、そうだな。それでは借りていくぞ』
そう言ってフェルは颯爽と駆けていった。
もちろん結界は忘れずにかけてもらってあるぞ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふぃ~、気持ちいいなぁ」
『ああ、最高だぜぇ』
『気持ちーねぇ』
風呂の用意をさっさと済ませ、俺とドラちゃんとスイは湯に浸かっていた。
ドラちゃんとスイは風呂ん中でプカプカ浮いてリラックス。
俺も湯の中で足を伸ばしてリラックスしてる。
久しぶりに頭も洗って体も洗ってさっぱりしたし、やっぱり風呂はいいなぁ。
ダンジョン踏破したご褒美に炭酸ガス配合の少し高めの入浴剤を入れてみたんだけど、こっちのがなんか体がじんわり温まって体の疲れがとれる気がするね。
香りもいいし。
ドラちゃんとスイとしばらくゆったり風呂タイムを楽しんだ。
「いい加減もうそろそろ上がろうか」
『そうだな~』
『はーい』
お風呂から出て着替えを済ませ、片付けも済ませて、ドラちゃんとスイにはフルーツ牛乳を俺はコーヒー牛乳を飲みながら一息ついているところだった。
「……たす……たすけてーッ」
「キャーッ!」
子供の声が聞こえてきた。
声がどんどん近づいてくる。
声の主が見えた。
10歳前後の男の子と女の子だ。
「イーリスだけでも逃げろッ!」
「お兄ちゃんも一緒じゃなきゃヤダッ」
男の子と女の子の後ろをオークが5体追いかけてきていた。
「ドラちゃんッ、スイッ」
『おう、任せとけッ』
『スイ、やるよー』
ドラちゃんはすぐさま飛んでいき、スイはライフルのように触手を構えた。
ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ―――。
ビュッ、ビュッ―――。
火魔法をまとったドラちゃんがオーク3体を貫き、スイが酸弾をオーク2体に命中させていた。
「おーい、君たち大丈夫かー」
走って2人に近づいていくと、倒されたオークを見て呆然としていた。
「はぁはぁ、オークはもう倒したから大丈夫だよ。それより、君たちはどこから来たんだ?」
街の近場の森ならいざ知らず、ここは街からも少し離れているし、子供だけでこんな森の中をうろついてるのはおかしいんだよな。
もしかして誰か大人の連れがいるのか?
そう思っていると、オークに追いかけられたのが余程怖かったのか、男の子と女の子が泣き出してしまった。
「うっ、グスっ、うわわぁぁぁん」
「うっ、ううっ、うえぇぇぇぇぇぇん」
どうしていいのかわからずにオロオロしているところに、フェルが帰って来た。
『この小童どうしたのだ?』
フェルを見て男の子と女の子は、さらにワンワン泣き出してしまった。
「あ、ああぁ、これはね、俺の従魔だから何にもしないから大丈夫だよ」
『おいっ、これとは何だ、これとはッ』
フェルが大きめの声でそう言うと、ビクッとした2人が更に激しく泣き出した。
「あーもう、大きな声出すなよ。フェルは少し黙ってて」
俺は、なかなか泣き止まない男の子と女の子に「もう大丈夫だから」と慰め「フェルたちは従魔だから何にもしないよ」と言い聞かせていった。