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悲しみのトロイメライ

久し振りの更新です。

初めて、あの曲を聞いたのは何時だったかの?


人間界に降りて一人で東京都道412号霞ヶ関渋谷線、通称を青山骨董通りを歩いている時に聞き慣れぬ音楽が耳に入って、その綺麗な音色に思わず足を止めて聞き入ってしまった。


古い店から聞こえて来て中に入り店内で耳を澄ませた。


「・・・・この曲が気に入ったのですか?」


店の主人と思われる初老の男が人懐こい笑みを浮かべて童を見てきた。


「何という曲です?」


どうしても気になって尋ねた。


「トロイメライという曲です」


「トロイメライ?」


「ドイツ語で夢や幻想と言うんです」


「良い曲ですね」


西洋音楽はジャズしか聴かないが、こんな曲があったとは・・・・・・・・・・


「どれから出ているのです?」


周りにある骨董品に目をやりながら主人に尋ねると


「このオルゴールじゃよ」


皺だらけの手で童に差し出す様に見せたのは古ぼけた木箱のオルゴールじゃった。


箱の内側に鏡が付いていて二人の人形が仲慎ましい様子で立っていた。


「・・・良い品物ですね」


見た目は古ぼけているが、品格が漂っていて何処か詫寂わびさびが感じられた。


素朴ながら何処か美しい二人の人形がオルゴールの品格を更に高めているように見えて目を細めた。


「・・・・この曲は死んだ家内が好きだった曲で私がプロポーズをした時に送った曲でもあるんです」


主人が何を思ったのか自分の過去を話し始めた。


「何処か夜を連想させる曲であり大人が子供の頃を思い出す夢の曲だと妻は言っていましてね」


笑うと顔が皺で隠れてしまった。


「その家内も二十年も前に死んで形見は、このオルゴールだけ」


初老の男から潤んだのを童は見逃さなかった。


「貴方は、何処か家内に似ています」


「え?」


「よくは言えませんが、家内に似ているんです」


男は皺だらけの手で持ったオルゴールを童に差し出した。


「これを貰ってください」


「でも、これは奥さんの・・・・・・」


「もう私も長くありません。そうなったら、この店の物も人手に渡ります。このオルゴールも誰かに渡ってしまうのなら、家内に似ている貴方に差し上げたいのです」


「・・・・分かりました」


男の真剣な頼みを童は断れなかった。


「・・・・ありがとうございます」


オルゴールを受け取ると男は涙を流しながら感謝していた。


店を出ると急に飛天が恋しくなって魔界に帰る事にした。


後日、店に行くと男は亡くなっていた。


童が帰ってから直ぐに倒れたと近くに店を構えていた者から聞いた。


男の遺体は奥さんの墓に一緒に埋葬されたらしい。


墓の場所を聞いて行くと線香も花もなく寂しく立つ墓があった。


どこか空しくなって花と線香を買って墓に戻り綺麗に掃除をして花と線香を供えた。


「・・・・最後の思い出に」


童は持ってきたオルゴールの箱を墓前で開けた。


誰も居ない墓地でオルゴールから流れるトロイメライが奏でられた。


墓地に流れるトロイメライは何処か悲しい音色に聞こえてきた。


童は曲が止むまでずっと墓前に起ち続けた。


トロイメライ、ドイツ語で夢や幻想などと言われています。

この曲を作ったのはドイツの作曲家であるロベルト・シューマンが子供の情景と呼ばれる15作品の一つで七つ目の曲で15作の中で一番有名である。

子供向けの曲と言われているがシューマンは後に

『子供の情景』はそれらの作品とは異なる『子供心を描いた、大人のための作品』であると語っている。


作者としても大人のための作品と思えて本作品に載せる事にした。


ちなみに作者の好きな音楽ジャンルはジャズとクラシックとオルゴール曲である。(笑)


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