初めての出会い
妻の一人、竜星姫と夜叉王丸の初めて出会った話です。
白明天、キャラが壊れています!?
私が彼と初めて出会ったのは天、竜、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩羅伽、そして夜叉の八部衆の間で開かれた会議の広場でした。
八部衆とは仏教を守護する悪鬼、戦神、獣神が集まって出来た戦闘集団で二十八部衆の傘下に入っていました。
私は竜の棟梁の娘、竜星姫です。今日は父の手伝いをしに会議に参加しまして彼と出会いました。
彼の統べる一族は八部衆の中でも勇敢さは八部衆一を誇る夜叉の一族でした。
夜叉族は戦場で一番の功名を立てて有名だったが、歴代の棟梁の殆どは自ら戦場に出る事はありませんでした。
それは他の一族も同じ事でしたが・・・・・・・・・・・
しかし、彼は歴代の棟梁や他の一族とは違いました。
彼は自ら率先して戦場で部下の指揮を取り戦いました。
この行為に観音様を始め大勢の仏様は驚愕しました。
誰よりも驚愕し絶賛したのは戦神の一族で夜叉族の棟梁は度々宮殿に呼ばれて宴会をしているそうです。
そして今回の会議の内容も彼を全ての八部衆を統べる、八部長にするかしないかの会議でした。
結果は賛成七の反対一でした。
残り一個の否定は何と夜叉族の棟梁、つまり彼でした。
皆が呆気に取られる中でそれまで一言も言葉を発しなかった彼が初めて口を開きました。
その理由とは
『俺みたいな者よりも八部長には相応しい方がいる筈です』
そう言うと彼は一礼して立ち去ってしまいました。
『私も私用があるので失礼します』
八部衆の筆頭で天族の長の白明天様も一礼して立ち去って行き後に残された私は呆然としていた。
私は呆然としていたが、他の種族の方達は予想していたようで
『やれやれ。相変わらず自分を過小評価する奴だ』
『まぁ奴らしいと言えば奴らしいがな』
『これは毘沙門天様や帝釈天様も頭を悩ますであろうな』
『お二人も夜叉王丸様の前では形無しですからね』
『あの様子では奥方の白明天様に怒られるであろうな』
そんな話をしながら各種族の棟梁は席を立ち後に残った私は父に呼ばれ慌てて席を立ちました。
この出会いで私は彼に少し興味を抱きました。
後で物知りの奥女中に尋ねると彼の名は地獄帝国男爵飛天夜叉王丸である悪魔だと分かりました。
その他に知った事は
各界のトップの方々(主に女性)と親密な中である事。
奥方が大勢いて皆を大切にしている事。
馬鹿馬鹿しい位に強く情に熱く民衆から養父の皇帝陛下にも頼りにされている事。
かなりの苦労人である事。
女子供には優しく男にはかなり厳しい事。
女性にかなり人気があり結婚しても人気が劣る所か上昇している事。
自由奔放で掴み所がなく気紛れだが面倒見が良い事。
普段は怠慢だが決める時は決める事。(かなりギャプが凄く人気の源らしい)
剣術はかなりの腕前で天竺一と言われる摩利支天様と互角もしくは上だと言われている。
あだ名が多くある事。(仏では朧の中将、大夜叉、武の鑑)
そして元人間である事。
以上が女中から聞かされた内容でした。
途中あまり関係ない話もありましたが、持っていて損はないから聞く事にしました。
この話を聞き私は彼にますます興味を惹かれました。
しかし、花も恥らう乙女が好きでもない殿方の事を単に興味があるから調べるなど下品だし相手にも下手な気持ちを与えるから慎重に調べないといけませんね。
それから私は奥女中と下男を使い色々と夜叉王丸様の事を調べました。
『竜星姫様は夜叉王丸様を慕っているのですか?』
ある時に女中に言われたが答えは否です。
正直言ってあの殿方は私の理想の殿方には全然違います。
これには少し驚愕した様子の奥女中。
『では、姫様はどのような殿方が好みで?』
『・・・そうですね。まず夜叉王丸様のように貧相ではない方が第一条件です』
私の言葉に女中達は驚いた。
『夜叉王丸様が貧相ですか?』
『後、女人にも怠しないのもいけませんね』
『それからあだ名がたくさんあるのも嫌ですわ。あだ名が沢山あるという事はそれだけ嫌われてる訳ですわよね?』
『・・・・姫様』
呆れ果てた様子の女中達。
私、何か変な事を言いました?
『私そのような殿方の妻になどなりなくありません』
『何よりも由緒ある家柄ではなく成り上がりの殿方は嫌いですわ』
『・・・・くっ、これはこれは随分と手酷い言いようですね』
『え?』
声の方向を見ると紺色の狩衣を着た黒の長髪が似合う殿方が苦笑しながら立っていた。
『や、夜叉王丸様っ』
奥女中達が跪いた。
え?
夜叉王丸様?
この方が飛天夜叉王丸様?
会議の時に会ったあの貧相な方?
『俺の周りをうろつき回る輩がいたので少し尋ねたら直ぐに答えてくれました』
くすりと笑いながら夜叉王丸様は私の前に座った。
『お初にお目に掛かります。龍の姫。地獄帝国男爵、飛天夜叉王丸です』
深々と頭を下げる仕草一つ一つに品があり絵になっていた。
『や、夜叉王丸様っ。今日はどういった用件でこちらに?』
女中が瞳を輝かせながら尋ねた。
『摩利支天に呼ばれたので妻を連れて会いに来たのです』
女中の問いにニッコリと笑い答える夜叉王丸様に女中達は黄色い悲鳴を上げた。
『そのついでに私の愛しい夫の周りを嗅ぎ回る不逞な輩を懲らしめに参ったのですが、来てみれば私の夫の悪口を言う竜の姫と会った所存です』
夜叉王丸様の後ろから白と黄色を主にした天の棟梁である白明天様が不機嫌そうに私を見下ろしてきた。
『私の夫の悪口をよくも散々に言ってくれましたわね?』
ギロリと眉を顰めながら私を睨む瞳には夫を悪く言われた怒りが浮き出ていた。
『そ、それは・・・・・・・・』
何も言えずに口篭る私。
『白明天。あまり竜の姫を責めるな』
何も言えない私にあろう事か夜叉王丸様が助け舟を出して来たのです。
『しかし、飛天様。この娘は・・・・・・・・』
『端から見れば以下の言う通りだ。それに俺の本当の姿は妻であるお前が知っているではないか?』
立ち上がって白明天様の月の髪を一房つまみ口付けながら笑いかける夜叉王丸様の姿は美しく気高かった。
『・・・そ、それは、そうですが・・・・・・・・・・』
髪に口付けされ片方しかない黒真珠で見つめられ白明天様は口篭った。
『ならば良いではないか。妻であるお前が知っていれば文句はない』
慣れた手つきで白明天様の腰に手を回すと
『それでは失礼します』
私達に優雅に一礼して夜叉王丸様は立ち去って行った。
この機会を気に私が彼に益々興味を抱いたのは言うまでもない。
この二人は妻達の中でも自己中心的で少しナルシストですが、夫を想う気持ちは他の妻達と同じです。




