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切り裂きジャック

暗闇と霧が漂うイギリスの首都ロンドン。


この街は昔から陰謀と裏切りが支配していた。


そんな街の一角で一つの真新しい遺体が出た。


男は首の頸動脈を一筋で斬られ絶命しているのを通行人に発見された。


犯人を見た者は出ずに捜査は難航した。


そんな事件が起こったロンドン市内から離れた町の酒場で二人の男が密会していた。


「・・・・・成功報酬の五千ユーロだ」


男が封筒を隣で赤ワインを飲む金髪碧眼の青年に渡した。


「・・・・・・・」


青年は無言で封筒を受け取った。


「・・・また頼むぜ。“ジャック・ザ・リッパー”」


ぽんっと青年の肩を叩きバーテンに金を払い席を立った。


後に残った青年はジタン・カボラルを取り出してジッポで火を点けた。


「・・・・・・」


青年の吐いた紫煙がバーを漂った。


「・・・・・・」


ジタンを吸い終えるとバーテンに金を払い店を後にした。


青年の名はスコロピオン・ラモン・ベガ・ウィザード。


元フランス外人部隊の第二落下傘連隊の第四中隊に所属した軍人で現在は暗殺者として暗黒街で活動している。


しかし、本当の姿は地獄帝国、飛天夜叉王丸伯爵の愛弟子で現在は社会勉強兼武者修業で人間界を旅している。


今回はイギリスのさる会社の社長を秘密裏に殺すように依頼されて遂行した。


殺人方法はナイフで頸動脈を斬り殺した。


彼はそのナイフ使いからロンドンを震撼させた伝説のサイコ・キラー、切り裂きジャックの異名を持っている。


「今回の仕事も、骨が無い仕事だったな」


帰り道でポツリと漏らした。


最近、簡単な仕事ばかりにスコロピオンは苛々していた。


この所、舞い込んで来る仕事は浮気相手を殺せだの、ライバル会社の社長を殺せなどの下らない仕事ばかりだった。


「はぁ・・・・・師匠みたいな仕事をしたいな」


ここには居ない恩師を思い浮かべた。


夜叉王丸の仕事は大統領を殺せや殺人鬼を殺せなどの依頼ばかりでスコロピオンは羨ましがった。


厳重警備の中で誰も巻き込まずに標的だけを殺し証拠を残さない夜叉王丸。


スコロピオンにとっては夜叉王丸は正に暗殺者の鑑だった。


「俺も師匠みたいになりたい」


どれだけ努力した事か。


しかし、ゼオンたちからは


『旦那を超える前に俺らを超えてみろ』


と怒られている。


事実、師匠である夜叉王丸を倒すより先に兄弟子的な存在であるゼオンたちに勝たなくては夜叉王丸に勝つなど夢物語だ。


「はぁ・・・・・憂鬱だ」


重い身体を動かしながら霧深い街を後にした。


フランス外人部隊、第二落下傘連隊とはアメリカ海兵隊や世界の特殊部隊にも一目置かれている部隊で第四部隊は狙撃と破壊活動を任務としている。

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