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人生破綻者

「・・・・・ご主人様」


俺は憂鬱な態度を隠さずに天窓付きのベッドで眠る主人に声を掛けた。


「・・・・・・・・」


「・・・・ご主人様」


無言だったが俺は二度、声を掛けた。


「・・・・・なんだ」


ベッドの中から聞こえてきた声は甘ったるく艶があった。


常人なら気絶するが、俺は毎日のため免疫が付いた。


「起床と朝食の時間です」


「・・・・・動くの面倒臭いから持って来い」色気のある声だが“傲慢”な態度だ。


まぁ、“傲慢”で当たり前か。


“傲慢”が主人の犯した罪だから・・・・・・・


「・・・はぁ、分かりました。持って来るので起きてて下さいよ?」


ため息を吐きながら俺は主人の部屋を出た。


やれやれ。今日も身を引き締めなければ、な。


俺は心を引き締めた。













ここは魔界にある屋敷。


俺は当屋敷の執事を勤めるメフィストフェレス。


人間界でも名は知られている。


魔界でも指折りの実力者で容姿端麗の将校。


それが人間界での噂だと飛天から聞いたが全くの嘘だ。


もし噂が本当なら誰が執事なんかやるかよっ。


俺の本当の姿はパシリだ。


簡単に説明すると、ていの良い召し使い。


それが俺の姿だ。


しかも主人は飛天に続き人生破綻者の称号を持つ七つの大罪“傲慢”のルシュファー様だ。


ルシュファー様に仕えるなど名誉な役だと言う奴もいるが、んな言葉は豚にでも食わせっちまえば良いんだ!?


ルシュファー様の部下になると必ず無理に近い命令を言われる。


例えば鯨を釣って来いとか美女を千人連れて来いとか天界に火を点けろだの無理難題だ。


こんな命令を遂行できる訳がない。


悪魔だから魔術を使えば簡単と人間は言うだろうが出来ないものは出来ない。


悪魔だって完璧じゃない。


出来ない事は出来ないんだよ。


だけど、断れる訳もなく引き受けてしまう。


嗚呼、情けないを越えて惨めだ。


ルシュファー様の無理難題をやっていく内に髪の毛が白髪になってしまった。


酒を飲んで愚痴も言いたくなる。


だが、だからと言って仕事を疎かにする訳にはいかない。


主人の無茶苦茶な命令にも従うのがパシリ。


それを信条にしている。


それを飛天に言ったら


『お前はパシリの鑑だ』


と言われた。


褒められたのか慰められたのか分からなかった。


そんな事を考えている内にリビングに着いた。


「ルシュファー様はどうした?メフィスト」


召し使いの一人が俺に尋ねてきた。


俺の方が偉いんだが、全く敬われていないのが悲しいかな。


「・・・・・朝食を持って来いだと」


憂鬱に言うと準備は出来ていたのかお盆を渡された。


「さっさと台所に行け」


明らかに命令口調で言われて俺は追い出された。


嗚呼、本当に惨めだ。


肩を落としながら台所に向かった。













「遅いぞ」


ルシュファー様の部屋に戻ると不機嫌な面と口調を向けられた。


「・・・・・すいません」


怒りたかったが、逆らっても勝てないのは解っているから我慢した。


黒いガウンを着たままルシュファー様は煙草を蒸していた。


その姿の色気のある事ある事・・・・・・


その色気を少しでも分けて貰いたい位だ。


この方が主人のせいで女っ気が無い。


彼女が出来てもすぐにルシュファー様に取られる。


全く私生活まで邪魔されちゃたまんねぇよ!?


「何をしてるんだよ。早く用意しろ」


不機嫌な顔で俺を睨むルシュファー様。


「・・・・・」


俺は込み上げる怒りを抑えながら料理をテーブルに載せた。


ルシュファー様は手掴みで料理を食べ始めた。


もう少し行儀よく食べて欲しい。


そうでないとせっかく作ってくれたシェフに悪い。


まぁ、言った所で無理だけど。


食事を済ませた後は私服に着替え仕事をする訳ではなく遊びに行く。


この方は最高裁判官という役職に就きながら職務放棄して毎日を遊んで過ごしている。


何度も仕事をするように頼んでもやってくれない。


その穴埋めは何時も俺だ。


これもパシリの宿命だと思い仕事をしている。


しかし、流石にしんどい。


しんどくなる度に、切に願う。


あの傲慢で偏屈者の給料泥棒(失礼)を尻に敷く花嫁が出て来る事を!?


結婚すれば仕事も真面目にやる筈だ。


これは確信だった。


皇帝のベルゼブル様だって妃の美夜様と結婚してから仕事をするようになった。


飛天の場合は、天使のジャンヌ様(通称:女神)が来てから屋敷に住むようになった。


お二人とも優しくて気品があり美人だ。


あんなに美人なら真面目に仕事すると納得できる。


ルシュファー様も結婚すれば真面目になる筈だ。


実際、見合い話はあるのだが全て破綻している。


理由は好みじゃないからだそうだ。


じゃあ、どんな女性が好みなんだと聞きたい。


・・・・・はぁ。誰か、あの人生破綻者の主人を尻に敷ける女性は居ないか?


そんな俺の願いは突然、叶う事になった。


それは・・・・・・次回に続く!?

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