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軟禁二

「・・・・・・」


夜叉王丸は自室のソファーに座りながら生前から愛用しているモーゼル・ミリタリーの掃除をしていた。


そんな夜叉王丸の部屋にはシルヴィア近衛兵指揮官とオールビー女医と四名の近衛兵がいた。


『・・・嫌な空気だ』


一人毒づきながらマガジンに特製貫通弾を入れる夜叉王丸。


「・・・・・」


そんな夜叉王丸をシルヴィアとオールビーは黙って見ていた。


弾を入れモーゼルを腰のホルスターに入れた。


「・・・・・はぁ」


夜叉王丸は落ち着きなくセブンスターを取り出した。


しかし、セブンスターは無くなっていた。


「・・・・ちっ」


舌打ちして懐からパリ・ジェンヌを出す。


「・・・・・・」


ジッポで火を点けようとしたがオイル切れ。


『・・・・・何処まで運がないんだよ』


くわえていたパリ・ジェンヌを捨てようとした。


その時だった。


「飛天!元気だった・・・・・・か?!」


勢いよく扉を開けたのは相棒のダハーカだった。


しかし、シルヴィアがクレイモアをダハーカに向けた事でダハーカは制止した。


「止めろ。シルヴィア」


夜叉王丸が止めた為、首筋のすんで止まった。


「・・・貴様、誰だ?」


シルヴィアが殺気の出た声でダハーカに尋ねた。


もちろん。クレイモアは構えたままである。


「・・・・・誰って?そこのソファーで嬢ちゃんに命令した野郎の相棒だが?」


両手を上げて答えるダハーカ。


「その手に持っているのは?」


「酒と煙草」


他の近衛兵が近づいてきたのを見て


「おい。飛天。この嬢ちゃんに物騒な物をしまわせてくれ」


泣き言を漏らし助けを求めるダハーカ。


「シルヴィア。剣をしまってくれ」


「まだこの男を信用できません」


「こいつは暗殺者みたいに器用じゃねぇよ。殺すなら大砲でも使ってる」


苦笑する夜叉王丸。


「・・・・・・」


シルヴィアは渋々ながら剣を引き近衛兵も元の場所に戻った。


「サンキュー。飛天っ」


ダハーカは安堵の息を漏らした。


「礼より火をくれ」


口にくわえたパリ・ジェンヌを見せる夜叉王丸。


「あいよ。相棒」


トレンチコートの中から黒のジッポを出すダハーカ。


「・・・・・ふー」


「その分だと、かなり参っているようだな」


夜叉王丸の様子を見ながら自分もジョーカーに火を付けるダハーカ。


「まぁなー」


ぐったりとする夜叉王丸。


「何となく解るぜ。お前が疲れているのが」


ちらりとシルヴィアを見た。


「・・・私に何か用か?」


ギロリと睨むシルヴィア。


「お前も大変だな。あんなハリセンボンみたいな嬢ちゃんが護衛で」


シルヴィアの睨みを無視して相棒に笑いかけるダハーカ。


「まぁ、ベルゼブルの命令だからな」


肩を竦ませる夜叉王丸。


「なるほど。蠅王の命令じゃなければ断っていたか」


「俺の性格を知っているだろ?」


「あぁ。堅苦しいのが苦手だからな。お前は」


紫煙を吐きながら笑い合う二人にシルヴィアが割って入ってきた。


「貴様っ!!誰がハリセンボンだと?!」


「ん?嬢ちゃんの事だが?」


きょとんとした表情で答えるダハーカ。


「ここに来る前から感じていたが、嬢ちゃんたちの気が張り過ぎて気分が悪かったぞ」


「当たり前だっ。私たちは護衛しているのだぞ」


シルヴィアの言葉に他の近衛兵も頷く。


「だからって、気を張り過ぎだ。護衛する者に気を遣わせるなんて半人前の証拠だ」


「貴様っ」


シルヴィアが腰の剣に手を伸ばした。


「・・・・・・・」


それと同時にダハーカが夜叉王丸にデザートイーグルを向け夜叉王丸はシルヴィアにモーゼルを向けた。


そして、引き金を引いた。


バッンバッン


二回、部屋に銃声が響いた。


夜叉王丸が撃った弾丸はシルヴィアの影に隠れていた刺客。


もう一人は夜叉王丸の背後に剣を立てようとした刺客をダハーカが撃った。


二人の刺客は銃声を聞き駆け付けた兵士が死体袋に入れて持ち去り血の跡も綺麗に拭き取られた。


部屋にいたシルヴィアを始めとする近衛兵は唖然としていた。


自分たちがいたのに、刺客が潜り込んでいたのをまったく知らなかった。


「・・・近衛兵がこの様じゃ、飛天が嫌がる訳だ」


ダハーカの皮肉めいた言葉がシルヴィアの胸に深く突き刺さった。















「・・・・・・・」


久し振りに屋敷に戻ったシルヴィアは自室で一人、酒を飲んでいた。


酒は嗜む程度しか飲まないが、今日は飲まずには入られなかった。


自分があまりにも情けなかった。


近衛兵なのに主人に気を遣わせ、刺客の浸入にも気付けなかった。


悔しかった。


だけど、それよりも悔しくて情けなかったのは


主人である夜叉王丸が自分たち近衛兵を庇った事だ。


上司であるビレト、ザパンに叱咤されそうになった時に


『こいつらは悪くない。俺が無事だから良いだろ』


と庇われたのだ。


そして極め付けに


『失敗は誰にでもあるもんだ』


慰めの言葉を掛けられた。


悔しかった。


何だか馬鹿にされたように感じた。


失敗は誰にでもある。


それは本当だ。


しかし、自分の仕事で失敗は許されない。


本当なら首を斬られても可笑しくないのに。


それが、悔しかった。


グラスに注いだ赤ワインを一気に飲む。


『・・・・もう二度とあんな失敗はしない』


夜空に昇る赤い月を見ながらシルヴィアは新たに決意を固めた。


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