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軟禁

監禁の続きです

「・・・・・命が欲しいなら今すぐ消えろ」


血で濡れた刀を地面に尻餅を着く刺客に向け威圧的な声を出す夜叉王丸。


「・・・二度と俺の前に現れるな。さもないと、殺すぞ?」


刺客は何度も頷くと一目散に部屋から逃げて行った。


「・・・・・」


刀に着いた血を和紙で拭うと鞘に収め懐からセブンスターを取り出し怪我をしていない左手で持ったジッポで火を点けた。


「・・・また、怒られるか?」


また怪我をしたんですか!?


耳をつんざくような声を出して手当をする、かの女医が目に浮かぶ。


「・・・・・憂鬱だ」


誰も居ない自室で夜叉王丸はため息を漏らした。


夜叉王丸が天界の捕虜になり魔界に帰還して一月あまりになった。


皇子が捕虜になるなど恥だという貴族と味方を助ける為に捕虜になったのは賞賛に値する貴族に別れて議論された。


結果、両方とも妥協して夜叉王丸は謹慎処分と決定した。


これにはダハーカたち従者は大反対だったが、夜叉王丸は甘んじて謹慎処分を受けた。


現在はかつて使用していた自室で謹慎していたが、これを好機にとサタナエルたちが刺客を送り込んできた。


だが、夜叉王丸は全員を倒して来たが時には手傷も負った。


普通なら王族を護る近衛兵が傍に居るのだが、夜叉王丸は近衛兵を置くのを嫌った。


これにより夜叉王丸付きの近衛兵は大激怒している。













「・・・・・・はぁ」


翌朝になり夜叉王丸の寝室に向かったブレンダ・オールビー女医はため息を吐いた。


夜遅くに何やら主人の部屋が騒がしいと聞いてもしやと思ったが、予想は的中していて戦った後が残っていた。


そんな部屋のソファーでぐぅぐぅと寝息を立てている部屋の主人の元にオールビーは足を運んだ。


「・・・皇子様」


オールビーは顔に被せてあった黒のソフト帽を手で持ち上げた。


「・・・オールビーか。毎朝、御苦労だな」


夜叉王丸は帽子を取り戻すと再び顔に被せようとしたが腕を取られた。


「・・・・・・・・・・」


オールビーは赤く滲んでいる右手を凝視して眉を吊り上げた。


「皇子様あぁぁぁぁッ!?」


オールビーの大声が部屋中に響き渡った。














「・・・・まったく。本当に貴方様はッ」


ブツブツと文句を言いながらオールビーは力任せに包帯を縛った。


「痛ッ。もう少し優しく縛ってくれ」


「皇子様がいけないんです!!私たちを、近衛兵を傍に置かないから」


夜叉王丸の文句をオールビーは聞き入れなかった。


「・・・まぁ、色々と訳ありで、な」


歯切れの悪い口調で言うと夜叉王丸は懐からセブンスターを取り出して銜えた。


「・・・・・・・・」


オールビーは沈黙した。


この男主人は、いつもそうだ。


いつも自分の事を隠して有耶無耶にしている。


過去に何度か王族で近衛兵の長を務めるビレト、ザパンに尋ねても


『貴公が知る必要はない』


の一点張りで答えて貰えなかった。


サタナエルが夜叉王丸が人間出身だと言い触らしているのを聞いただけで後は分からなかった。


オールビーの父は現皇帝のベルゼブルに仕えている。


父とベルゼブルは他人には分からない信頼関係で結ばれているのに自分の主人は傍に置かず遠ざけている。


それがオールビーには気に入らないのだ。


自分だけではない。


他の夜叉王丸付きの近衛兵も主人が傍に置くのを嫌っているのを気に入らなく何度も奮起していた。


特に近衛兵指揮官のシルヴィアなどの怒りは限界まで来ていた。


「・・・・・・・・・」


そんなオールビーを気にせずに夜叉王丸は黙って煙草に火を付けた。














「・・・ただいま戻りました」


オールビーは近衛兵士官のシルヴィア侯爵の執務室に入ると書類に目を通していたシルヴィアに頭を下げた。


「・・・どうでしたか?夜叉王丸様は?」


「いつもと変わらないです」


首を横に振るオールビーにシルヴィアは頭を抱えた。


「・・・・・あの方にも困ったものですね」


ため息を吐きながらメイドが入れた紅茶を飲みながらシルヴィアはオールビーに着席を促した。


「今朝も手傷を負っているのに寝ていました」


シルヴィアに勧められ一人用のソファーに座るオールビー。


「大した傷ではありませんでしたが、毒でも塗られていたら危険です」


「皇子様には申し訳ありませんが、強硬手段に出てはどうでしょうか?」


「・・・・・仕方ありませんね」


紅茶を飲み終えるとシルヴィアは初代皇帝だったサタンから送られたクレイモアは腰に差して灰色のベレー帽を被り立ち上がった。


「貴方の言う通り、ここは強硬手段も一つの手です」


「今から皇帝陛下の元に直訴してきます。あなたはまた夜叉王丸様が刺客に襲われないように仲間を連れて警護に行って下さい」


それだけ言うとシルヴィアは部屋を出て行きメイドに出された紅茶を飲み終えてからオールビーも部屋を出た。















シルヴィアはベルゼブルの執務室を訪ねた。


「陛下。少し宜しいでしょうか?」


休憩中だったのかコーヒーを飲んでいたベルゼブルに尋ねた。


「シルヴィアか。なんだ?言ってみろ」


「・・・はっ」


直立で頭を下げていたシルヴィアは顔を上げベルゼブルを見た。


「昨夜、夜叉王丸様が刺客に襲われました」


「・・・・・・」


ベルゼブルの表情が僅かに険しくなった。


「知っていると思いますが、今回だけでなく何度も夜叉王丸様は刺客に襲われました」


「何度も私が近衛兵を付けるように言っても聞きません。どうか、陛下のお力で・・・・・・・・」


「・・・分かった」


「ありがとうございます」


ベルゼブルの返答にシルヴィアは安堵の息を吐いた。


それからベルゼブルと連れてオールビーたちが控えていた夜叉王丸の部屋に向かった。















「断る」


夜叉王丸はにべもなく放った。


「・・・まだ何も言ってないぞ?」


「どうせ、そこの侯爵令嬢に『夜叉王丸様が近衛兵を必要としてないんです』とか言われて泣き付かれたんだろ?」


ベルゼブルの傍で控えていたシルヴィアとオールビーと数人の近衛兵を見た。


「うっ・・・正解だ」


養子の指摘にベルゼブルは何も言えなかった。


「相変わらず女に弱い皇帝だな」


嘲笑うようにセブンスターに火を点ける夜叉王丸。


「う、うるさいっ。とにかく何度も刺客に襲われているなら近衛兵を付けろ!?」


逆上して怒鳴り声を上げたが夜叉王丸は冷静だった。


「だから、断ると言ったばかりだぞ?馬鹿か?」


「何だと?!」


「さっき言った事を理解できないなんて馬鹿の証拠だろ」


「くぅぅぅぅ!?とにかく近衛兵を置け!!これは皇帝命令だ!?」


良いな?!と激怒するベルゼブルに夜叉王丸はため息を吐いた。


「・・・・・・ふん」


夜叉王丸は紫煙を吐いただけだった。


その数時間後に夜叉王丸に近衛兵が付いた。


もちろん。夜叉王丸の意思は関係なく・・・・・・・・・・



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