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秘めたる想い

夜叉王丸と亡き剣の師匠、鈴鹿御前の話。

その日の夜は何時に増しても綺麗な曇り一つ無い満月だった。


「・・・・・・・・・・・」


そんな夜に夜叉王丸は戦死者の墓の奥深くに眠る小さな墓に一人で立ち尽くしていた。


「今日は一段と綺麗な満月ですね。御前」


「御前と初めてお会いした時もこんな綺麗な夜の満月でしたよね?その時、御前は一人で舞していて俺は見惚れていましたっけ?」


くすりと笑いを漏らす夜叉王丸。


しかし、その笑みは悲しそうな笑みだった。


「初めてだったんですよ?悪魔になってからの初恋は・・・・・・・・・・」


「大獄丸の妻だと聞いた時は儚く失恋して悲しかったですけど、それよりも悲しかったのは御前が・・・・・・・・・・御前が愛した坂上田村麻呂に斬られた時でした」


眼帯を外し深紅の瞳を露わにした。


「あんなに愛していたのに田村麻呂の奴は御前の想いを逆手に取り大獄丸の弱点を聞き出し殺し用は無くした御前までも殺した」


ギリッと唇を噛み鮮血が流れても気にしなかった。


「俺はその場に居たのに何も出来なかった。人間の頃と同じで何も出来なかった」


「大切な女を二度も護れずに指を銜えて見ていた俺は無力ですよね?」


乾いた声で夜叉王丸は力なく笑った。


「それは違うぞ。飛天」


後ろを振り返ると天竺の軍神、摩利支天が太刀を握って立っていた。


「・・・・・摩利支天」


「お前は鈴鹿に止められたから刀を抜かなかったんだ」


「しかし、結果的に俺は御前を助けられず見殺しにした」


「確かに鈴鹿は死んだ。しかし、あれは鈴鹿なりの罪の償いだ」


「・・・・・・・罪の償い?」


「大獄丸の弱点を教えた罪とお前を裏切った罪の償いだ」


静かに墓まで歩み寄ると太刀を地面に置いた。


「・・・・・鈴鹿の愛刀、大通連だ」


「・・・摩利支天」


「苦労して探し回ってやっと見つけた。残り二本は田村麻呂が戦利品として持ち帰り子孫に受け継がれているようだ」


「・・・・そうか」


夜叉王丸は墓に片膝を着くと一礼した。


「御前、貴方を傷つけるかも知れませんが今から人界に行き小通連、釼明の二本を取り戻して参ります。あれは誰の物でも無い。御前だけの物です」


「・・・・・・・飛天」


摩利支天が名を呼んだ時には夜叉王丸の姿は無く眼帯だけが地面に置かれていた。


恐らく飛天は逆らう者は容赦無く殺すだろう。


例え鈴鹿が愛した田村麻呂の子孫でも例外はない。


だが、それも悪くないだろう。


そんな事を思い摩利支天は友の鈴鹿御前の墓に大通蓮を置いた。


この後、どうなったかはご想像にお任せします。

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