処刑開始
今回はアラストールを主人公にした次回作になる必殺処刑人稼業のサンプルを書いてみました。
「はははははははっ。今日も大漁だったぜ!」
男は大量の酒を飲みながら酔った男は月の光が照らす道を歩いていた。
「・・・・・・・・」その様子を赤の和服に身を包んだアラストールは黙って見ていた。
「しかし、あの女も馬鹿な女だぜ。誰が夜鷹なんて妻にするかよ」
下駄な笑いを浮かべる男。
『・・・・・・あんたみたいに女を食い物にする男には永遠の苦痛だけの世界に行かせて上げる』
「んー?」
男が振り向く前に背後から分銅鎖を取り出し首を絞めた。
「がっあ!?」
「あんたみたいな奴の為に命を掛けた女に地獄で詫びるんだね」
「あ、あああああ」
「・・・・・死刑執行」
ぼそりと呟き鎖を一気に両側に引いた。
「うっ・・・・・・・・・」
男は事切れ地面に倒れた。
「死刑完了」
分銅鎖を懐に入れアラストールはその場を後にした。
「・・・・・・・・・・」
アリオーシュは無言でガチガチ震える男を見ていた。
「そんなに怖がる必要はありませんよ。もう直ぐ恐怖も苦痛も無い世界へと連れて行って上げますから」
「・・・・・・処刑という方法でね」
「い、いやだぁー!?」
男は悲鳴を上げたが声は誰にも気付かれずに
「それでは地獄でまたお会いしましょう」
どんっと男を押した。
男の体は無数の針を出し蓋を開けた棺桶に
「ぎぃぃぃぃやぁぁぁあああああ」
男は針に全身を串刺しにされ息絶えた。
「それでは地獄まで良い旅を・・・・・・・・・・」
アリオーシュは蓋を閉め棺桶を小船に乗せて前に押し出して進むのを見届けて背を向けた。
「はぁー良い湯じゃ」代官は湯に浸かりながら極楽極楽と言った。
「・・・・・・・・・・・」
その背後を宙に浮いた夜叉王丸は黙って見下ろしていた。
「ここで死ねるなら悔いは無いな」
「・・・・なら、今ここで死ね」
「なにっ?」
代官が背後を向いたと同時に夜叉王丸は村正で代官の額を貫いた。
「ぁっ」
「・・・・・・」
鞘に血の付いた村正を収め夜叉王丸は百目蝋燭を風で消した。
「・・・・・・怨みは晴らしたぜ」
そう言って闇の中に姿を消した。
この次の夜に男達の死体は町奉行所の前に置かれ
“哀れな女達を食い物にした過度により処刑を申し渡す”
地獄の処刑人
この出来事は直ぐに江戸中に広まった。
「さぁさぁさぁ、またまた地獄の処刑人達が又もや哀れな庶民の為に極悪非道な悪人共を処刑したよ!しかも一人は全身を串刺しで発見!全てはこの瓦版に書いてあるよ!さぁ、買った買った!?」
「・・・・・一枚下さいな」
「あいよっ」
アラストールは瓦版を一枚買うと隅で煙管を蒸かしていた浪人姿の夜叉王丸に近づいた。
「相変わらず奉行所の連中は血眼になって私達を探してるわね」
瓦版を見ながらアラストールは夜叉王丸に笑いかけた。
「・・・だろうな。俺達は悪党だからな」
さも当たり前の口調で答える夜叉王丸。
「当たり前でしょ?私達は悪魔だもの。正義の味方ではないわ」
「・・・まぁな」
紫煙を吐きながら夜叉王丸は巫女装束に身を包むアラストールを見た。
「はぁー、昨日は疲れたし家に帰って休みましょう。旦那様」
夜叉王丸に腕を絡めてくるアラストールを避けながら拒否した。
「生憎とこれから仕事でな」
「あら?仕事なんて聞いてないわよ」
「俺だけに依頼があった」
懐から朱色で文字を書かれた黒い絵馬を出してアラストールに見せた。
『怨みを晴らして』
短い文字だったが本人の怨みが深く刻まれていた。
「あら?何で貴方だけに?」
「恐らく首切り処刑された奴の親族だろう」
「なるほどね。だから血に塗られた裁断者の出番って訳ね」
「ふんっ。血に塗られた裁断者・・・か」
「俺は裁くなんて大層な奴じゃない」
「ただの姑息な悪党さ」
小さく笑うと夜叉王丸はアラストールから絵馬を奪い取り歩き去った。
「姑息な悪党、ね」
「・・・なら貴方の妻である私も姑息な悪党ね」
夜叉王丸が去った後をアラストールはポツリと呟くと自身は人界での住み家である神社へと足を運んだ。
来年の作品に期待して下さい。