魔法学園へ遊びに行ってみた
私はお茶を楽しんだ後、私は異世界の魔法学校に案内されていた。
そこまでの道のりは、ゲームなどで見るようなファンタジーな西洋風のレンガ造りの建物が並んでいた。
「ほら、このままだと道に迷うから、手を繋ごう」
「う、うん」
私は素直に、リオンの手を握った。
それにリオンは何処か嬉しそうだったが、そこでネココが飛んできて、
「飛ぶのが面倒だから、美咲の方に僕は座っているね―」
「……リオンがご主人様なんだからリオンの肩でもいいんじゃない?」
「野郎よりも可愛い女の子の方がいいです!」
言い切ったネココを私は半眼で見ながらも、ネココは堂々と私の方に座った。
そうして人通りの多い道を手をひかれながら歩いて行く。
この世界の花を売るお店、アクセサリーのお店、本のお店などが立ち並んでいる。
そこで私はふと気づいた。
「そういえば何で言葉が通じるんだろう」
「言葉以外にも本も読めるよ。この世界のどんな文字でもね。それが上位世界なんだよ。正確にはそれら全てが美咲の世界の似たようなもののイメージとして美咲の頭に現れる、いわば自動翻訳機能が備わっているんだ」
ネココがそう説明してくれたが、そうなってくると、
「私の世界にはなくて、この世界にあるものだと分からないんじゃない?」
「美咲は自分の世界にあるもの全てを見て、理解しているのかい?」
ネココのその言葉に納得する。
たしかに私は自分の世界の事でも全てを知らない。
つまりこの世界にしか無いよくわからないものも、ただ単によく分からないものと認識して終わるのだろうと思う。
全部理解していくなんて大変だしね。
そこで目の前が唐突に開ける。
黒く、私の身長の数倍はあるような柵に囲まれたその大きな建物。
中には様々な木々が植えられて緑豊かな場所だ。
その入口のあたりには、“アクアウィル魔法学園”と記載されている。
その門番の人にリオンが何かを言って、そして、
「美咲、ここに名前を書いて」
どうやら訪問者として扱われるらしい。
そう思いながら、この世界の言語じゃなくていいのかなと思いペンを握ると、なぜか勝手に手が動いて奇妙な絵柄を私は書き連ねた。
それが、私の名前と音が同じ、サクラミサキと書かれていると私には分かる。
しかもそれで許可が降りて私は学園内に入っていく。
どうやら上位世界の住人の能力はこういったものであるらしい。
そんなちょっとしたお得感を味わいながら学園の門をくぐりぬけて中に入っていくが、学園内は人の気配が少ない……というか今まで歩いていても人がいなかった。
道には人があふれているのにこの学園は寂れているようだ。
何でだろうと私は思い、リオンに聞くと、
「今は春休みなんだ。でも、課題があるから先生達はこの学園にいるし、生徒もたまに通うんだ」
「へー、課題……もしかして私みたいな?」
「うん、異世界のものを……交流が今度ありそうな美咲達の国のものを、召喚して様子を見てみようってなったんだ。ただ、生徒個人での召喚には限界があるからその前に、悪魔、天使、精霊と契約してその力を借りて召喚をしたほうが成功しやすいみたいで、俺もネココの力を借りたんだ。その成功理由はまだよく分かっていないのだけれどね」
どうやら魔法も完全に何かが分かっているわけではなく、やり方は知られているけれどまだ未知の部分もあるようだ。
そういう魔法も何だかわくわくするなと私は思いながら、リオンに手を握られて校舎の中に入っていく。
外観は壮麗だが、中は古いためか少し薄暗い印象を受ける。
ところどころに白い漆喰が塗られた壁が剥がれ落ち、レンガが見えている。
そんな廊下は誰ともすれ違わず、私とリオンの足音だけが響く。
やがて職員室といった部屋に私達はやってきて、ノックをして入る。
その職員室にいたのは一人の少女だった。
長く青い髪に金色の瞳をして、黒い服を着ている。
楽しそうに笑う彼女だが、私は何となく悪意を感じてしまう。どろりとした気持ちの悪い物が肌に着くような、そんな薄気味悪さを感じるのだ。
そんな彼女にリオンが、
「マーサ先生、召喚の課題についてなのですが……」
「ごめんなさいね、今、みんな忙しいの。私もすぐに行かないといけないし」
「? 何かあったのですか?」
「実は、ユリちゃんが、召喚のために封印を解いたのだけれど、それが誰かに成り代わる精霊で、しかもとても悪戯好きだから捕まえようと総出で頑張っているの」
「その精霊の名はまさか、“レーシィ”ですか?」
「ええそう、確かその悪戯で以前は北校舎の半分が焼け落ちたのよね」
「……それは悪戯とはいえませんし危険じゃないですか。どうして彼女はそんなものを……」
「彼女は貴方と同じように封印された状態でも、そこにどんな存在が封印されているか分かる特殊な力がありますから……語りかけられて、惑わされたのかもしれませんね」
「なるほど……では、僕達もその精霊を探すのを手伝ったほうがよろしいでしょうか」
「ええ、他の先生方には私から伝えておきますね」
そう笑うマーサ先生に、リオンは深刻そうに頷く。
そしてマーサ先生がこの職員室からいなくなって、そこで私はリオンに聞いてみる。
「さっきのマーサ先生は随分と若い先生なんだね」
見かけからすると私と同じくらいだが、この異世界ではもしかしたなら事情が違うのかもしれない、そう思いながらリオンに問いかけると、彼はちょっと驚いた顔をして、次に苦笑して、
「それをマーサ先生に言うと喜ばれると思うよ。今度言ってみるといい」
リオンがそう私に言う。
何がおかしいのか私にはよく分からない。
同時に私の中で先ほどのマーサ先生のあの笑みが妙に引っかかる。
スキキライは良くないけれど、校舎が半分焼けるという精霊の悪戯に不安を覚える。
だってそれは人間にとっては脅威以外の何物でもないはずだ。
なのに、あのマーサ先生は終始楽しそうに笑っていた。
そこで私はリオンに手を引っ張られて、
「こんな事になってごめん。でも美咲は守るし、その精霊は俺が捕まえるから」
「そうそう、リオンは美咲に良い所が見せたいんだよね……ふぎゃっ」
ネココは黙っていろというかのように口を手で塞ぐリオン。
それにネココはもごもご言っているが、そこで私はリオンに問いかける。
「リオンは、もしかしてこの学園でも強い魔法使いなの?」
「……一応、魔法学関係は主席ではある」
「凄い! そんなに強い魔法使いだったんだ。あ、だから私みたいな人間も呼び出せたりするのかな?」
その言葉にネココがさらに震えていて、リオンもどこか頬を赤くして、
「そう、だな」
短く私に答えたのだった。




