表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勘違い系○○  作者: 流音
第四章:社会人
178/218

4-60こうなりたかった

極力表現はひかえてますが、R15です。お気を付けください。


私は吉田君と晩御飯を囲みながら、今日一日の事を思い返して顔がニヤけそうになるのを必死に堪えた。

スーパーでおばさんたちが新婚さんだと間違えてて、すごく照れ臭かった。

なんとか平静を装っていたけど、心の中はドキドキしていて胸が苦しかった。

そうなればいいのに…と淡い期待までしてしまった。


何だか自分ばっかり欲張りになってしまって恥ずかしい。

吉田君の家にいてもいいかって言いだしたのだって、離れるのが嫌だったからだ。

我ながら大胆な事を口にしたと思ってる。

でも、目の前の嬉しそうな吉田君を見てるとこれで良かったと思った。


そして食事を終えて、とうとうお風呂に入ろうという事になって、私は今までぶつかってきた事と向き合う事になった。

私は先に吉田君にお風呂に入ってもらう事にして、その間悶々と考え込んだ。


お風呂に入ったら、一緒に寝るという流れになるのは分かってる。

私は昨日誓った。

もう拒絶しない。受け入れると。

大丈夫。心の準備はできてる。

私は緊張を落ち着けようと何度も息を吸ったり吐いたりした。

でも一向に緊張は取れなくて、体は強張る一方だ。

私の意気地なし!臆病者!!

私は自分自身を罵って、床に手をついていると洗面所の開く音がしてビクッと体を揺らした。


「あ、紗英。お先~。次入っていいよ。」


いつもと変わらない口調で吉田君が声をかけてくれて、私は顔を上げて固まった。

吉田君はTシャツ短パン姿で、髪が洗われてぺちゃんこになっていて、その姿が少年のようで可愛かった。

いつもは男らしいのに、こんなギャップを見せられたら胸がキュンを通り越してギュンとした。

心臓おかしくなりそう…

私は赤面する顔を隠そうと俯くと、不審に思われないように立ち上がったのだけど、立ち上がったときに膝をテーブルに打ちつけて悶えた。

ガゴッと激しい音がしたので、吉田君が心配そうに近づいてきた。


「…紗英?大丈夫か?」

「だ…大丈夫。おっ…お風呂行ってくる!!」


私は声が裏返りながら、吉田君の顔も見ずに洗面所へ駆けこんだ。

そして脱衣所でしゃがみ込むと、大きく息を吐き出した。


「はぁ~……意識し過ぎ…。」


それから私は色々と考えては悶々として、長風呂をしてしまった。

お風呂から出てきて鏡で顔を見ると、湯あたりしたのではと思うほどに顔が真っ赤になっていて、冷やすために脱衣所にも長居してしまった。

そして、部屋に戻ると吉田君が寝る準備をしていて、思わず立ち止まった。


「あ、紗英。長かったなぁ~。」

「うん…。お風呂ありがとう…。」


吉田君がリビングに布団を敷いていて、私はここで寝るのか…とじっと見つめてしまう。

けれど吉田君は私の思った事とは逆の事を口にした。


「紗英は俺のベッドで寝てくれよな。俺、ここで寝るから。」

「………え?」


私は耳を疑って吉田君を凝視した。

吉田君はいつもと同じ笑顔を浮かべて、何を考えているのか読めなかった。


「今日、新幹線の中でも寝てたしさ。疲れてるだろ?俺も明日仕事だし。早めに寝ようぜ?」

「……あ、うん。分かった…。」


吉田君の提案に残念だと思ってしまった自分がいて、少し複雑な心境を抱えて吉田君のベッドのある部屋に向かった。

そして部屋に入るときに一度振り返って吉田君の顔を見た。

吉田君は「おやすみ。」と言って手を振ってくれていて、私は笑顔を作ると「おやすみ」と返してから扉を閉めた。


私はベッドまでまっすぐに歩いていくと、このもやもやを考えないようにしようと、布団を頭までかぶって倒れ込んだ。

布団から吉田君の匂いがして胸がギュッと苦しくなる。

本当に何もなし?それでいいの?

私は変に期待していただけに、吉田君の反応が意外過ぎて理解できなかった。

昨日はあんなに熱っぽい言葉を言ってくれたのに、今日は違うってこと?

私は自分の中に不満が溜まっていくのを感じて、ギュッと目を閉じた。


それから何時間経ったのだろうか?

私は全然眠たくならなくて、こんなに吉田君が近くにいるのに遠く感じる事が嫌で、ずっともやもやしていた。

女の私がこんな事思うのはいけないのかもしれない。

でも、今の状況が不満で仕方なかった。


私は思いきってベッドから体を起こすと、足音を立てないように扉まで近づいた。

そして音を立てないようにそっと扉を開けて、吉田君の様子を覗き込んだ。

扉を開けただけで、吉田君の規則的な寝息が聴こえてきて、私は本当に寝てることにがっかりした。

扉を開けたまま吉田君の眠っている背中を見てぼーっとしていると、吉田君が寝返りを打ってこっちを向いた。

顔が見えたことで私は自分の中の欲が顔を出した。


もっと近くに行きたい。


私はそっと部屋からでると、しゃがんだままの姿勢でゆっくり吉田君に近付いた。

吉田君は少し眉間に皺を寄せて寝ていて、どんな夢を見ているのだろうかと思った。

そして寝返りを打ったことでもう寝癖ができていて、ピョンと跳ねた髪が可愛くて手を伸ばした。

おそるおそる寝癖に触れたあと、吉田君の固くてしっかりした髪に指を絡めた。

吉田君の頭を撫でるように手を動かしていると、空いてる方の手を急に掴まれて心臓が跳ねた。


「何してんの…?」


吉田君の目がゆっくり開いて、私は思わず吉田君から手を離すと逃げようと腰を上げる。


「ごっ…ごめんっ!」


でも、手を掴まれていたので逃げられなくて吉田君に目を戻した。

吉田君は私の手を掴んだまま体を起こすと、真剣な目で私を射抜いてきた。


「…紗英。何してたか…言って?」

「そ…それは…。」


私は触りたくて触ってたなんて、恥ずかしくて口になんか出せるはずもなかった。

でも吉田君は私が言うまで離してくれそうもなくて、吉田君から目を逸らすように下を向くと何とか口に出した。


「……触りたくなって…それで…触ってた…だけ…。」

「……そっか…。触りたくなったんだ、俺のこと。」


ハッキリ言われて私は体がグワッと熱くなってきた。

今思うと自分らしくない行動だった。

私は一刻も早く逃げ帰りたくなって、掴まれている手に力を入れると、その手に吉田君の口が寄せられてきて体にゾワッと鳥肌が立った。


「やっ…!」


「―――本当に嫌?」


私が咄嗟に発した言葉に吉田君が目だけを私に向けて、食いついてきた。

私はそんな鋭い視線にどんどん鼓動が速くなっていく。

吉田君は私の手を強く引っ張って、身を寄せてくると私に顔を近づけて言った。


「嫌ならやめるよ。でもさ…紗英が望んでないと思って、我慢して別の部屋で寝てた俺のところに…、触りたいって…好きな女の子が来たら…誤解するよ。いや…誤解とかじゃないな…。」


吉田君は一度言葉を切ると、私の背に手を回してから告げた。


「もう我慢なんかできないよ?いいよな?」


いつもの遠慮してくれた吉田君と違う、確認であってそうじゃない言葉に息を飲み込んだ。

吉田君は目を閉じると激しく口付けてきて、私は体を強張らせた。

自分が招いた種だとはいえ、突然のことに頭がついていかなかった。

心の準備をする暇もなく、吉田君の手が服の中に入ってきてゾクゾクする。

私は吉田君の布団の上に押し倒されると、やっとキスから解放されて一息ついた。

薄く目を開けると、吉田君がTシャツを脱いでいてドクンと心臓が跳ねた。


「紗英…。」


熱い瞳で名前を呼ばれて昨日の事を思い出した。

そうだ…私、この目に応えたかったんだ…

私を見下ろして躊躇っている吉田君を見つめて、私は吉田君に手を伸ばした。

そして吉田君の顔に触れて自分の気持ちが溢れた。


「…大好き…。」


ずっとこうなりたかった…

怖いとか思った時もあったけど…

でも、こうなるのは自然なことだったんだと今なら分かる

好き…大好き…

ずっと吉田君の傍にいたい…

私は吉田君に伝わってほしいと願った。


すると吉田君はふっと微笑んだあと、また私に口づけてきて、私は気持ちが通じたことが心の底から嬉しくなった。

そして私は初めて感じる幸せな時間に溺れていきながら、この幸せを噛みしめたくてゆっくりと目を閉じたのだった。







やっとこうなりました。

竜聖にしては長かったと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ