表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/20

第18話 やはり私の青春ラブコメは間違っている。

会長さんの同人誌制作を手伝い、文化祭における色々な問題が一段落した3日後。

今日は体育祭の初日、予選日だ。


「俺が1位になってインタビューされたら、雪音さんのためだと言ったらドロドロした略奪愛が出来るでしょうか」

「そもそも、1位になってもインタビューなんてされないから大丈夫です」


神永君は前に1度私の家に上がり込んできてから、朝、時々、家の前で立っていることがあった。

門から私が出て来て歩き出すと、隣に並んで歩くのでどうやら私と登校すると言うことがあった。

これも篠宮先輩や百合様に何かする作戦なのだろうか。

だが、美形残念兄妹は私よりもっと遅くに登校しているので効果はないと思うが。美形残念兄妹よりも、クラスメイトから関係を聞かれるので困っている。ただでさえ、私が篠宮先輩と付き合っているとか百合様との百合疑惑があると言うのに。最近は、桜海雪音悪女説まで流れている。勘弁して欲しい。



神永君は、体育祭の種目では100メートル走に出場するらしい。

100メートル走に予選も何もないので、今日はかなり暇なのだとか。

私の高校の体育祭の種目は豊富な方だと思うが、予選をする種目はかなり少ない。

あるのは、綱引きとか玉入れとか騎馬戦とか棒倒しとかだ。ランダムに決められた対戦相手と戦い、本戦ではそれぞれ強いチームと強いチームが戦う。だから、予選がある種目は大体の勝敗が予選でついてしまうのだ。


「雪音さんは、何の種目に出場するんですか?」

「私は、借り物競争と綱引きです」


特に運動が得意でもない私は、無難な綱引きと借り物競争になった。

私のクラスは、担任が他クラスの先生と勝敗をかけて争っているらしい。どうやら、負けた方のクラスの担任は高級焼き肉をおごらなければいけないのだとか。

なので、担任がかなり張り切っていて、本人の意思に関係なく、足が速い人はリレー、などとその人に合う種目を決めていた。足も速くなければ遅くもない私は、誰でも出来そうなその2つになったと言うわけだ。


「借り物競争のお題で“大切な異性”や“好きな異性”、“気になる異性”などと出たら俺を選んで下さい。修羅場が見られます」

「いや、それが出たら多分、父とか弟とか選びますから」


神永君が無表情ながら期待した視線を送るが、それをバッサリと切り捨てる。

ラブコメ漫画や小説だとそう言うお題がよく出るが、本当の借り物競争でそんなお題は見たことがない。小中と借り物競争をやってきたが、人間ではせいぜいあっても名前くらいだ。しかし、中学2年生の時の御手洗(みたらい)さんを探せは大変だった。そんな珍しい苗字、いるかいないか分からないのではないかと思ったが、学校に出入りしている業者の担当が御手洗さんだったらしい。結局、ビリでゴールした。


「それ以外では何かありますかね、異性が必要な競技」

「ないと思いますし、あったとしても神永君とは絶対にやりたくないですね」


そう言うと、神永君は無表情で残念ですと言った。本当に残念なのか。

だが、次の瞬間無表情ながら顔を輝かせるとこう言った。


「雪音さんの属性が分かりました、言わゆるツンデレと言うものですね。どうりで、好感度が見えないわけです」

「見えないじゃなくてないんですけどね」



____________________



当然と言うべきなのか何なのか、美形残念兄妹は大活躍だった。

表向きは容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能、性格良しな学園の王子様な兄は100メートル走や騎馬戦などの花形競技で1位を独占。表向きは、兄と同じイメージにスポーツ万能を引いて病弱儚げお嬢様を足した妹も女子の花形競技で1位、病弱なのに頑張っている百合様凄いと言われていた。

さて、そんな兄妹とは無関係でありたい私は綱引きの予選を終わらせ、暇になので校庭にある席で1人ぼぅっとしていた。

友達は皆、現在やっている玉入れの種目に出ているため話し相手もいない。

今年も白が優勢かな、などと考えながら目前で広がる競技の予選を見ていた。


「ゆぅーきぃーねー」

「………… 何ですか、会長さん」


突然後ろからどこかで聞いたことのあるうめき声が聞こえたので、恐る恐る振り返る。

そこには案の定、疲れた顔の会長さんがいた。


「どうしたんですか、結局コピー本出せたんですか」

「ええ、これで体調バッチリよ! …… でも、もう1つネタが浮かんでどうにかしてもう1つ描きたいのよね………」

「頑張って下さい」


まあ、体調が良いと聞いて安心した。

ベストカップルコンテストに出られなくなったら、そのお鉢が回ってくるのは私なわけだし。新しく出場者の代役立てるとかもう嫌だ。


「そう言えば、雪音は何の種目に出たの?」

「借り物競争と綱引きです」

「アタシは、100メートル走と60メートルハードルよ! 委員長の間に出場準備しろとか言われて困るのよね……」

「え、会長さんって何かの委員会の委員長なんですか」

「え、アタシ、体育祭実行委員会委員長なんだけど」


雪音知らないの、と若干ショックを受けている会長さん。何てこった、初めて知った。会長さん、他にも長がつく仕事をしていたのか。委員長しながら会長やって、漫画も描いてればそれは疲れる。ファンクラブ会長って具体的に何をやっているかは知らないが。


「お疲れ様です」

「ありがと、雪音。今年の体育祭コンセプトは、とにかく面白いもの、だから雪音も楽しんでね! じゃあ、アタシ、行くから!」


そう言って、片手を上げる会長さん。…… 会長さんも頑張っているのだろう。久しぶりに見るまともな会長さんに思わず心が温かくなっていると、私に背を向けて歩いていた会長さんがいきなり振り返った。


「あ、それと雪音。今年の借り物競争のお題、全部アタシが考えたの! 面白いものになってるわよ!」


………… うん、やっぱり会長さんは、ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ