56 サンライト・トロピカル・ハーヴェスト!
これは園芸ではない。
緑肥というものをご存じだろうか。緑の肥やし……字面だけでもある程度の想像がつくが、それもそのまま、草そのものを肥料にするというやりかたである。
一般的な肥料のイメージというと、やはり落ち葉などを堆積させ、腐らせてからなんやかんやと処置を施す……といったものだろうが、緑肥は栽培している植物そのものをそのまま土と一緒にすきこむことで
肥料とするものである。
『植物ごと畑を耕して肥料にしてしまいましょう。手っ取り早くていいよね!』
ありていに言ってしまえばこれだけのことだ。
もちろん、緑肥として扱える植物とそうでない植物があり、ただなんでもすきこんだからと言って効果があるわけではない。
そして当然のことながら、楠が栽培したこの大輪のひまわりは、緑肥としてはそこそこにメジャーな植物であった。
「…ひまわりはその根の吸い上げの強さにより畑の栄養を根こそぎ奪い、ほかの作物を同時に育てることを難しくてしまう。…が、その分栄養を蓄えこんでいるのか、緑肥として後に命を継いでいく」
「だから、耕しやすくなるようにひまわりを倒せって言いたかったのか」
「おまえ、もうちょっと説明してくれないとわかんないって」
ひとしきりひまわり畑と戯れ終った部長の二人が口をそろえて不満を言う。華苗は慣れたが、楠は口数が少ないせいでその言わんとしていることが酷く伝わりにくいのだ。
「でも、おかげでずいぶんさっぱりしましたよ」
「アタシにゃ、踏み荒らされているようにしか見えないけどねぇ……」
「ははは……」
映画研究、演劇部の面々が遊びながら荒らし……もとい、整理したおかげで高く聳えていた太陽の花は一つ残らず地面に倒れており、どことなく無残で可哀想な光景が広がっている。
「……はぁ」
「なんだろ、この鬱な気分……」
「子供が一生懸命作った夏休みの工作をぶっ壊した気分だ……」
花びらは散り、踏み荒らされ、残った黄色が土にまみれてみすぼらしい。写真撮影やひまわり畑にダイブするという夢を叶えた女子生徒たちも、いざ本格的にひまわりを踏み倒すとなるとかなりの尻込みをした。
そして、罪悪感に苛まされながら泣く泣く生命を謳歌する黄金の花を踏みつけたのだ。夏の日差しに似合わないどんよりとした空気が、畑には流れている。
「…とりあえずお疲れ様です。耕すのは俺たちがやるので」
「たちって、私もですか?」
「…他に誰かいるのか? それとも、この広い畑を一人で耕せと?」
当たり前のように言い切った楠の言葉に華苗は口をつぐんでしまう。日差しがじりじりと華苗の肌を焦がし、汗をつぅっと滴らせた。
この地獄のように暑い中で、かよわい女子高生に鍬を振るえとこの悪鬼羅刹のような大男は言っているのだ。あんまりである。
「…二人でやったほうが早い」
「はぁい……」
華苗は観念して鍬を肩に担いだ。軍手越しに伝わってくるがっしりとした感覚に、どこか安心感を覚える。
以前までは重くてとても振り回せなかったが、今は片手で魔法のステッキのように振り回せる。これも成長した証だろう。
「…まごころをこめ、腰を入れて振れ。草ごと耕す分、多少力がいる」
楠は鍬を大きく大きく振り上げる。鍬の刃が太陽の光を鈍色に反射し、何人かが眩しそうに手をかざした。
天をつくほど高く掲げられた鍬は、やがて地面にたたきつけるかのような勢いで振り下ろされれる。ひゅっと風を切り裂く音が聞こえ、そしてがしゅっと聞きなれた音が華苗の耳に届いた。
──緑が、茶色になった。
「「うそぉ……」」
少しの土が飛び散り、そしてあたりは豹変する。鍬を振り下ろした半径三メートルほどの土地がきれいに耕されていた。ふっかふかの茶色い土の布団が晒けだされ、ご丁寧に畝までたてられている。
「…暑さのせいで、調子が出んな」
「いやいやいや! 耕すってレベルじゃねーぞ!」
「なんで!? なんでそうなんのさ!?」
「ウワァ……暑さで頭やられちゃったかもしんない……」
初めて見たのであろう人たちはこぞって驚きの声を上げている。
たしかに、鍬の一振りで畑ができるなんて馬鹿なこと、普通はありえないだろう。だがしかし、ここは普通じゃない。華苗だってこの程度じゃもはや驚きもしない。
鍬を振ったら畑ができる。当たり前のことである。
「先輩、だれないで下さいよ。私の負担が増えるじゃないですか」
華苗も腰を入れ、鍬を高々と掲げて無残に横たわるひまわりに振り下ろす。遠心力と腕力による一撃は的確に大地に突き刺さり、そして荒れ地を畑に変えた。
「えええ……」
「華苗ちゃんもそっち側かよ……」
まごころをそれなりに込められたのか、華苗は楠とどっこいどっこいの広さを耕すことに成功する。なんだかんだいっても、やっぱり広域を一度に耕せると気分も爽快だ。
「慣れですよ、なれ」
麦わら帽子をくいっとかっこよく押し上げ、華苗は少しだけ得意げになった。鍬を振るえば振るう分、畑の緑は茶色になり、見渡しがすっきりとしてくる。大規模な陣取りゲームをしているような気分になり、知らず知らずのうちに華苗のペースも上がっていく。
案ずるよりも産むが易し……というわけじゃないが、やってみるとなかなか楽しい作業であったのだ。
とはいえ、さすがにこの広範囲を耕しきるのはなかなかきつい。ひまわりを倒すのは楽でも、鍬をふるうのは簡単じゃないのだ。
「……なぁ、鍬、もう一本ある?」
そんな華苗の様子を察したのだろうか、桂はなにやら思案しつつも手伝おうと申し出てきた。他のものは黙って見ている中、部長の鑑のような行動だ。
華苗は桂の爪の垢を楠に飲ませたいと思った。茶華道部の白樺に頼めばお茶に混ぜてくれるかもしれない。いや、わざわざそちらに頼まずとも、おじいちゃんに頼れば確実だろうか……だなんて、茹だり始めてきた頭でそんなことをぼんやりと考えた。
「どうぞ」
「ありがと」
猫の手と同じかもしれないが、あるのとないのとは大違いである。華苗はリヤカーに積まれていた鍬を手渡した。
鍬を受け取った桂はぎゅっとその柄を握りしめ、精神を集中させる。なんだかとっても厳かな雰囲気を身に纏い、呼吸もどんどん浅くなっていた。不審に思った華苗がその表情を見てみるも、桂は眉ひとつ動かさない。
「桂先輩?」
「ああ、大丈夫だよ。それ、部長の癖だから」
華苗と楠以外はどうやらこの状態に心当たりがあるらしい。
「──」
「……ん、ついでだしカメラ回しておくか」
芹口がカメラの準備に入る。ぼうっとしていた華苗と楠に気にするなと促し、そして畑を耕すようにと言葉を紡いだ。
当の本人たちが心配するなという以上、熱中症などではないのだろう。華苗は再び畑に相対し、鍬をふるう準備をする。
何をしてくれるのかはわからないが、何か面白いことをするのだけは確かだ。ならば、黙って見守るというのがいいオンナというものだろう。
「…よし、やるぞ」
「…桂先輩?」
「……ん?」
違和感。
振り向いた。
「……んん?」
桂の目が死んでいる。死んだ魚のような濁り切った目だ。しかも、無表情だというのにガンをつけたかのように眼光が鋭い。無言のプレッシャーを容赦なくあたりにふりまいている。
桂の体が膨れている。体格や骨格は変わっていないというのに、長年ジムに通い詰めたかのように引き締まった筋肉が、華苗の前に惜しげもなく晒されている。
桂の肌が焼けている。いや、さっきも少しだけ焼けてはいたのだが、今はもっと黒くなっている。長年農作業をしていたかのような、仕事をしている人間の黒さだ。海で遊んだってあんな風には黒くならない。
「…ほら、はやく」
「…演技?」
「演技ってレベルじゃないでしょう……」
声はそんなに変わらないが、桂の雰囲気そのものが楠になっていた。見た目だけでは覆しようがない、存在そのものが楠とそっくりだ。
演技でこんなこと、普通はできるわけがない。そもそも、どうやって体つきや肌の色を変えたというのか。
「…三人一緒にやれば一気に片付くかもな」
「…そうか。タイミングはそちらにまかせる」
「…鍬の振り方、まごころのこめかたはわかりますか?」
「…散々見たからな。あれだけ見ればバカでも覚える」
鍬の構え方、足の開き方、重心の落とし方、そのすべてが楠のものと全く同じだ。違うところといえば身長くらいだろう。それほどまでに、桂は楠という存在そのものを演技していた。
「…どうした?」
「いえ」
楠と全く同じイントネーションで話しかけてくる桂。
華苗はもう、そういうものだと割り切ることにした。こんなのにいちいち悩むほうがばからしいのである。それより今は、畑を耕すことのほうがはるかに大事だ。
「…せーの!」
「…そぉい!」
「……えいっ!」
振り上げられた三つの鍬が同じタイミングで地面に突き刺さる。土が飛び散り、茎が断たれ、華苗の手に心地よい感触が返ってくる。瞬きを一回した後には、きれいなきれいな畑が華苗の視界に広がっていた。
「「ふぅ……」」
二人が同じタイミングで額の汗をぬぐった。
▲▽▲▽▲▽▲▽
さて、そんなわけで今華苗たちの目の前には広大な畑が広がっている。緑肥を与えたということは、いつにもまして栄養豊富な豊かな畑だと思っていい。
”肥料使わない主義”の楠がわざわざ土づくりから始めたのだ。これから植えるであろう自然の恵みに、華苗は期待せずにいられない。
「…みんなのおかげで、ここまでこれた。礼を言う」
「なに、麦踏の時に比べりゃぁなぁ……」
「あんときは部長クラスが束でかかって打ちのめされたからな」
「束ねたとき、泣き出した奴もいたっけねぇ……」
元に戻った桂とカメラを止めた芹口がしみじみと呟いた。椿原もどこか感慨深そうに明後日のほうを見ている。
ほかの部員はまだ混乱の渦にのみこまれているが、この三人はあの麦踏とサバイバルキャンプを生き残った猛者なのである。ついでに園島西高校の部長でもあるため、順応力は非常に高い。
「て、今日は何を育てるんです?」
「…せっかく人がいるから、いくつかやろうと思う。…アナナス、マンゴー、バナナだ」
「……はい?」
その場の全員が首を傾げた。アナナスとやらは知らないが、マンゴーもバナナも南国の果物だ。この関東の田舎じみた場所で栽培できるものでない。
「バナナってあのバナナ?」
「マンゴーってあのマンゴー?」
「…そうです」
沈黙が落ちた。
そりゃ、沖縄とか九州だとかなら栽培しているかもしれないが、いずれにせよ一園芸部が育てていいものではない。そもそも、どうやったらそんなトロピカルフルーツを育てようなどと思い至るのか。華苗は真剣に楠の頭をかち割って脳みそを調べてくなってしまった。
「で、でもよ。そんなの俺たちに手伝えることなんかあるのか?」
桂が至極まっとうな意見を述べる。一応のプロである華苗でさえ、南国の果物はとても手におえるとは思えない。
「…さきほどの緑肥の効果で今の畑なら何を植えても育つことでしょう。加えて、二十人そこらのまごころが満ち溢れています」
「「……」」
きっとさっきひまわりを踏み倒した時のことを言っているのだろう。しかし、あの時に込められたのはまごころでなく寧ろ悲哀か同情に近い感情のはずだ。いったいどうして、あの残虐な行為でまごころを込めたとこの朴念仁は判断したのか、華苗は正直理解に苦しむ。
「…本来は南国のものですが、ここ最近はこの辺も異常に暑いです。これだけ条件がそろえば、やってやれないことはありません」
「それもそうで……いや、おかしいですよ」
「…そうか?」
おかしくないと思っているのは楠だけだ。
「…まぁともかく、さっさとやってしまおう。…まずはこいつ、アナナスだ」
楠はどこからか小さな苗を取り出した。
楠なら片手で覆えるが、華苗なら両手を使わないといけないくらいの大きさのものだ。五、六本の包丁葉っぱにも似たしゅっとした葉が放射状に延びており、どことなくハワイアンな何かを連想させる。華苗の目が確かなら、緑の中にわずかに赤が混じっているはずだ。なんとなく、観葉植物にありがちな見ためである。
「アナナス? 穴茄子? ナスの仲間かい?」
「いえ……ナスの仲間ならこんな葉っぱはしませんよ」
椿原の言葉を華苗は即座に否定する。
こないだ植えたナスはもっと広くて大きい葉っぱをしていたはずだ。科が同じであるならばここまで見た目が違うなんてことはあり得ない。となると、たまたま名前が似ているだけの別種の可能性のほうが強い。
「…割とメジャーなものなんだが、園芸ではアナナスと呼ばれている」
「結局なんなんですか? もったいぶらずに教えてくださいよ」
「…植えてみろ」
楠に促され、華苗はその苗を耕したばかりの畑に植える。小さなシャベルで軽く穴を掘り、そっとやさしく植え付けて土をかぶせるだけだ。仕上げにぞうさんじょうろでしゃーっと水をやると、アナナスが喜んでいるような気さえしてくる。なんだかんだで、この植え付け直後の水やりは楽しい。
そう、この小さな生命がぴょこぴょこと成長していくところなんかが特に──
「……わぁ」
水やりを終えた瞬間、ジャックの豆の木のようにその苗は成長した。しゅっとした葉がどんどん長くなり、天へと逆らうように伸びていく。葉の枚数も増え、さながら葉で花を作るかのように、チクチクの花火を作るかのように形を成していく。
やがて、その花火の真ん中に小さなイガグリのようなものができた。赤みがかった緑色……というかまさに赤と緑が混じっており、これを素手でつかんだらタダではすまないと思わせるくらいにはちくちくだ。
そのイガグリもどきは華苗たちの目の前で膨れていき、ラグビーボールほどの大きさの、手榴弾のような形を成す。なんだかよくわからない攻撃的な雫のような形をしたトゲトゲが無数についており、そのトゲトゲの集合のてっぺんには苗とそっくりなチクチクの葉がついている。
「おおっ!?」
「うそぉ……!?」
「こ、これは……!」
トゲトゲが青紫になった。
トゲトゲが花開いた。
トゲトゲ、花だった。
しかもトゲトゲ、もう散った。
花が散るとトゲトゲも幾分落ち着いたものとなってくる。このころから赤みがかったトゲトゲ手榴弾が黄色のオーラを纏い始め、そしてどことなく芳香が漂い始めてくる。
特徴的なチクチクの葉っぱ。チクチクした見た目の黄色い果実。
ここまでくれば、華苗にだってその正体はつかめた。
「…アナナスの正体はわかったか?」
「パイナップル……!」
どこからどうみてもパイナップルだ。
アナナスとはパイナップルを指す言葉である。ただ、園芸においてアナナスと言われた場合はパイナップルそのものではなく、パイナップル科の植物の総称として使われていることが多い。
パイナップル科だからと言って全部が食用になるわけではない。単純に葉っぱがきれいだということもあり、アナナスは観賞用としてもけっこう有名だったりするのだ。中にはパイナップルそっくりの鮮やかな赤い実をつけるものもあったりする。
「…ふむ、上出来だ」
楠はチクチクの鳥かごの真ん中にあるパイナップルを刈り取り、それを太陽にすかしてまじまじと観察する。まごころあふれていたからか、いつもの手順すらもすっとばしていた。
しかも──
「なんで取ったそばから生えてんだよっ!?」
「しかも……分裂しているっ!?」
刈り取った直後、切り口から新しいパイナップルが生えてきた。しかも、なぜか全く同じパイナップルの株がその隣に当たり前のように存在している。
「……」
芹口が無言でパイナップルを刈った。ぱきっと音がして見事なパイナップルが彼の手の中で産声を上げる。素手だから多少ちくちくして痛いことだろう。でも、遠目から見ても大きくて重そうな立派なパイナップルだ。
当然のように、その切り口には全く同じパイナップルが生っている。畑にはパイナップルの株が四つあった。
「えいっ♪」
椿原が刈った。立派なパイナップルを実らせた株が八つになった。
「ねぇよ! なんで収穫すると増えるんだよ!」
「…緑肥を使いましたし、まごころも込められています。何の不思議もありません」
八つが十六に。十六が三十二に。
やけくそになった人間たちがパイナップルを収穫するたびにその数を増やし、畑に黄色の手榴弾があふれていく。さすがに百を超えるころには増えなくなったが、どれだけ収穫してもその黄色が尽きることはなかった。
「…よし、次はマンゴーを」
「いや、よくねぇよ」
パイナップルを十分に収穫した一同は次へと移る。楠は無造作に苗を地面に植えた。
──苗が伸び、樹となり、そして大樹となって実をつけた。
「…上出来だ」
「まてよ! 成長過程はどうしたんだよ! おまえに誇りはねえのかよ!」
「…次はバナナを」
「聞けよ!」
話している間に、やはりこちらも雨後の筍のように果樹があちこちから生えてくる。B級映画であってももっとマシな演出をするだろう。モグラたたきであってもこれほどハイスペースで顔を出さないはずだ。
ずん、ずん、ずんとマンゴーの果樹が生い茂り、さながらどこかの果樹園のような様相を醸し出している。もはやここを畑と言い張るのは不可能に近い。
「きゃっ!」
「うわっ!?」
ぽかんと口を開けて呆然としていた人たちがそろって尻もちをついた。もちろん、めまいなどではない。いや、めまいだと疑いたくなるような光景が広がっているが、彼ら自身の体には何の問題は起きていない。
問題が起きているのは地面のほうだ。マンゴーの果樹ががさがさと葉擦れの音を奏で、少し乾いた土が砂埃を上げている。ゴゴゴゴゴ、とうなり声のような音も聞こえてきた。
「おい! なんか揺れてないか!?」
「…込められたまごころに畑が身震いしているだけです。これだけたくさんの人に可愛がってもらえて喜んでいるのでしょう」
「畑を人間みたいに言うんじゃねぇッ!」
なんか地面が揺れている。
バナナが生えてきた。
黄色の三日月がたわわに房となってハワイアンな木にぶら下がっている。ゆっさゆっさ揺れていて結構楽しそうな感じだ。
──何事かとあやめさんとひぎりさんが飛び出してきたのが華苗の視界の隅に映った。
▲▽▲▽▲▽▲▽
「……」
「果樹園ってかジャングルじゃねぇか……」
「ウワァ……すっごい沖縄のかほり……」
見渡す限りのパイナップル、マンゴー、バナナ。ハワイアンな葉っぱが生い茂り、南国特有のフルーツの香りが満ちている。海のさざめきも聞こえたのなら、誰もここが南の島だと疑わないだろう。
いや、そうでなかったとしてもこれだけ果実が実っているのだ。パラダイスであることだけは間違いない。
「……先輩、園芸をするんじゃありませんでしたっけ?」
「…したじゃないか?」
マンゴー、アナナス、バナナともに熱帯の果実である。そのため日当たりが特に重要であり、日を十分に浴びないと小さくて弱弱しい果実しか結実しない。
また、どれも十分な水やりを必要とする。目安としては表面の土が乾いた頃だが、生育途中はたくさんの水を必要とし、割と頻繁に土が乾くので毎日必ず水をやったほうが無難だろう。南国のフルーツは乾燥を嫌うのだ。
生育気温にもいくらかの注意が必要だ。およそイメージ通りというか、三つとも寒さにはあまり強くないのである。バナナはまだいくらかマシ──品種にもよるが5度程度までならなんとか耐えられるが、マンゴーは7~8度はないとうまく成長しない。
しかも、三つとも冬場に変に気温が高くなるとすこし不調を起こす。おまけに冬場であっても日光だけはきちんと浴びせないといけない。『冬の温かさ』を用意するというのはなかなかの手間だ。
「…基本的には今までと一緒だ」
「なにそのとってつけたようなお話……」
さすがの華苗もこれには呆れざるを得ない。そりゃ、究極的に言えば植えて水をやればどんな植物だって育つのだろうが、だったらこの世に農家なんて存在しない。園芸部だってないはずだ。
「…ともかく、収穫するぞ」
楠はマンゴーの樹に近寄った。赤とオレンジのグラデーションが見事な卵型のそれがたわわに実っている。色合いがちょっと鈍かったのは驚きだが、それがなんとも自然な美しい魅力を放っている。
大きさはダチョウの卵くらいだろうか。もちろん、華苗はダチョウの卵はテレビでしか見たことがない。
「…そうだ、収穫前に注意がある」
「なんぞ?」
マンゴーはウルシ科の植物である。そのため、ウルシと同じように人によっては触れただけでかぶれてしまうことがある。これはなにもマンゴーの汁に限った話ではなく、もともと肌が弱かったり相性が悪かったりすると、樹の近くを通っただけでダメな場合もあるので安心はできない。
「ウルシってあのかぶれるやつ?」
「…ええ。あまり知られていませんが、実を食べてかぶれたりだとか、触れてしまってかぶれたりだとか、そういった症状に心当たりがある人は気を付けてください」
どうやらここにはかぶれる人間はいないらしく、誰も下がらなかった。そのことを確認してから楠は収穫の手順を説明する。
「…本来ならマンゴーは実の一つ一つにネットをかけねばならない」
マンゴーはもぎ取って収穫するのではなく、自然に落ちたものを収穫して食べるのである。当然のことながら、樹から落ちたら実は傷んでしまうことがあるため、何かしらの対策を立てないとならない。
その対策の最たる例がネットだ。実にネットをかけておくことで、地面に落とさないようにするのである。収穫もネットをそのまま持っていくだけでいいので楽といえば楽……ではあるのだが、一つ一つネットをかける手間は想像に絶する。
「でも、今回はネットつけてませんよ?」
「…だから落下地点に待機する」
「はい?」
「…落下地点に待機する」
ぼとっと何かの音がした。何かが吸い込まれるように楠の手の平に落ちていった。
南国の太陽が楠の手の平に煌々と輝いている。
「…こんなふうにな」
ちなみに、落果直後のマンゴーが最も甘くておいしいとされている。普通のマンゴーは落果から売り場に出されるまでにいくらかの時間が経過してしまうため、最高品質のマンゴーを食べるためにはマンゴー農家に弟子入りするしかないだろう。
「おおっ!?」
「落ちてきたっ!?」
「いってぇ!?」
ぼとぼと、ぼとぼと。
一個が落ちると続けざまにどんどんと落ちてくる。まるでつまらないお笑い番組のような、もしくは二流の映画のようなマンゴーの雨だ。
はしっと桂が両手で落ちてくるそれを受け止め、芹口がカメラを片手に抱えながらも腕を使って器用にキャッチする。
「……おっと!」
華苗もその小さな体と小回りを生かして落下地点に先回りし、敏腕野球選手のように黄金のフライを小さなグローブに収めていく。
そう、華苗は運動は苦手だが、収穫は得意なのだ。落ちそうな実もなんとなくわかるし、垂直にしか動かないのならいくらでもやりようがある。
「おおお……!」
水分を大目に含んでいるのか、マンゴーの皮にはいくらかの弾力がある。瑞々しさという言葉をまさに体現しているようだ。すん、と匂いを嗅いでみると、甘い特徴的な香りが肺を満たした。
「そっち落ちそうだ!」
「オレ無理!」
「援護する!」
二十人余りの人間がうろちょろと動いてマンゴーを落とすことなく回収していく。スライディングで抱えたり、互いにレンジをフォローしあったり。集団行動とコンビネーションが強く要求される部活だからか、その動きには一切の無駄がなく、互いが互いの役割を意識して動いている。行動範囲が極端に被るものもいないうえ、みんながいつでもフォローできる位置を保っていた。
どこの世界に落ち続けるマンゴーを回収する高校生がいるのだろう。華苗はもはや霞んできた常識が残る頭でぼんやりと考えた。
そして一つの結論に達する。
どこにって、ここにいた。
「…さて、次はバナナだ」
マンゴーの雨が落ち着いた頃になって、ようやく楠はそんな声をあげた。みんなで汗だくになって回収したマンゴーは百は超えているだろう。というか、華苗と楠の二人では回収しきれなかったはずだ。きっと楠はこれを見越して彼らに応援を頼んだに違いない。
「…バナナは通常、青いうちに収穫する」
その言葉とは裏腹に、華苗たちの目の前にぶら下がっているバナナはそれはもう見事に鮮やかな真っ黄色だ。これが黄色じゃないのならなにが黄色なんだって言いたいくらい、バナナらしい黄色をしている。
50~60本ほどが逆巻くように連なっていて、なんだか見ているだけでわくわくしてくる。迫力というかなんというか、ひょっとしたらその木の陰からフラダンサーでもでてくるんじゃないかって思えてしまうのだ。
「黄色ですよ?」
「…うちは流通させないからな」
バナナを青いうちに収穫するのには理由がある。というのも、バナナは追熟が可能である果物なので、農家で収穫するときから黄色いと売り場に並ぶ頃には傷んでしまうのだ。
当然のことながら追熟して黄色くなったもののほうが甘味が強くておいしい。シュガースポットと呼ばれる茶黒い斑点が出始めるのも黄色くなってからだ。これは甘く熟した印でもあり、このシュガースポットが多いほど糖度が高く甘味が強いとされている。
「…黄色くなってしまったものは傷みやすくて保存がきかないが、店売りとはまた違った味わいがある」
「なんかバナナ一つでも難しいんだな」
「俺、茶色いのって悪いものだって思ってたぜ」
「ありゃ、知らなかったのかい? バナナって昔は高級品だったんだ。少しでもいいものを買えるようにって見分け方をばーちゃんが教えてくれたよ」
ぼきり、と桂と芹口がバナナを折った。椿原は二人からそのバナナを受け取る。
華苗の手には持て余しそうなくらい太くて大きなバナナだ。一番太いところなんて、下手したら華苗の手首くらいはあるんじゃないだろうか。
あきらかにでかい。でかすぎる。
その上、あまりに立派すぎて作り物だと疑ってしまいそうになるくらい出来がいい。緑肥と真夏の日差しと、そしてまごころは何よりも偉大な証拠だ。
「収穫落ち着いたし、食ってもいい?」
「…ええ。食べながら収穫してください。…房ごと一気にもげば大丈夫です」
本来ならばバナナは軸の付け根に切り込みを入れ、房ごと収穫するのが望ましい。というのも、一本一本切り取っていると切り口から雑菌が入ってしまい、傷んでしまう可能性がグンと上がってしまうからだ。
だけれども、すぐに食べてしまうこの園芸部ではあんまり関係ない。
「あっま! しかも果肉がすっげぇ柔らかい!」
「バナナの香りってこんなに強いんだ……!」
「滑らかすぎる!」
真っ黄色のバナナの皮を剥き、芹口たちが舌鼓を打つ。華苗も手近にあるのを一房もぎ取り、一本だけ手折ってその先端から皮を剥いた。
「ほぉ……」
今まで食べたものよりも皮が薄くてむきやすい。しかも、口につけていないのにすっごくいい香りがする。バナナはそんなに強い香りがするものでないと華苗は思っていたが、うっとりとする芳香がそれにはあった。
「……うん!」
あまい。すっごくあまい。
すこしとろっとした感触がまたなんともたまらない。柔らかく、適度に硬く、そしてもにゅもにゅと口の中ですりつぶすたびにふわっとバナナの香りが鼻の奥へと吹き込まれていく。こくりと喉を動かすとステキな何かがおなかの奥へと落ちていった。
しかも、これだけの大きさだ。食べ応えはバッチリだし、栄養も豊富そうである。おやつなんかには最適だろう。朝食にもふさわしいはずだ。毎朝このバナナを食べられたのならどれだけ幸せだろうか。
「…食いすぎるとこっちが食えんぞ」
大きなバナナの房──たぶん百個くらいはくっついている──をリヤカーに積み込んだ楠は誰とも顔を合わせることなくぽつりとつぶやいた。彼は一人でバナナを収穫していたのであろう。その右手にはのこぎりが握られており、そしてリヤカーの中は黄色い三日月でいっぱいになっている。
「あっ! マンゴー忘れてた!」
「どうしよ! バナナ食べ過ぎた!」
「おまえら別腹だから問題ないっていつも言ってね?」
彼の手の中にあるマンゴーを見て何人かの女子が悲鳴を上げる。ぽんぽんになったおなかを見るに、すっかりバナナだけを堪能してしまったようだ。
楠は果物ナイフをどこからか取り出し、マンゴーをそのまま三つにスライスする。平べったくなったその果実の部分に十字にいくつか切れ目を入れ、くるっとひっくり返すように皮の部分を反らす。
──サイコロ状になった果肉がぷりっと飛び出した。
「甘ぁ~い!」
「じゅーしぃー!」
「収穫したてってこんなに甘いの!?」
ぽんぽんお腹だったはずの女子がこぞって歓声を上げる。華苗も一つもらい、そして顔を近づけた。
甘くとろける、溺れそうになってしまいそうな芳醇な香り。今なら花の香りにつられる虫の気持ちがよくわかる。
「……!」
甘いってレベルじゃない。果物の中でもこれほど甘いものはそうそうないだろう。柑橘ともベリーともまた違った、南国特有の陽気な甘味。すごく当たり前だけれど、フルーティーでジューシーで、飛び跳ねたくなる気分だ。
果汁が口の中で大氾濫を起こして体の隅々まで流れ込み、マンゴーのうっとりする香りが肺腑の奥までしみわたっていく。少しだけブドウのような甘味を感じたのが意外だった。
ほんのわずかに隠れる酸味も忘れちゃならない。甘酸っぱいとはこういうことを言うのだろう。この気づくか気づかないかのようなのほのかな酸味が、マンゴーをマンゴー足らしめているものだと華苗は思う。
舌触りもとろけるような感じがしていい。瑞々しさとこの独特な感触がたまらない。ゼリーでもないし羊羹でもない、このかんじを何と表現すればいいのか。華苗の頭はショート寸前だ。
「マンゴーってそういう風に食うもんなのか」
「今までカットされたものしか見たことなかったからなぁ……」
手慣れた様子でマンゴーをカットしていく楠を見て桂と芹口がボソッつぶやく。
たしかに、大きな種があるからかマンゴーは切り方が少し変わっている。
正直なところ、マンゴーらしい切り方とはいえちょっと食べにくいのは事実だ。スプーンやフォークがあればまた変わってくるのだろうが、むしゃぶりつくようにして食べるため、口の周りがべとべとになってしまう。
「…直接食べるとなると、どうしてもこうなりますね。実が妙にやわらかいからフォークを使っても食べにくいですし」
「きれいに食べるならむしゃぶりついたほうがいいってわけか。乙女的にはちょっと複雑だねぇ……」
まぁでも、皮をくいっと引っ張れば実がぷりって飛び出るから最後まできれいに食べることはできる。むしろ、道具なしでここまで食べられるのは結構すごいことだ。華苗はこの食べ方を考案した人に惜しみない拍手を送りたくなった。
「…パイナップルもあるぞ」
お次はパイナップルだ。バナナとマンゴーの芳香に溺れる中、第三の刺客の登場である。
よもやここが南の島でなかったとしても、みんなの気分はすっかり沖縄であった。プライベートビーチとビーチベッドがあれば、今すぐにでもみんなが水着になって常夏の果実に溺れてしまうことだろう。
「あとはハイビスカスでもあれば、いい画が取れそうなんだけどな」
「ダメもとで聞いてみるけど、ハイビスカス咲かせられない?」
「……」
「さすがに植えてもいないものを咲かせるのは無理ですよ」
「…ハイビスカスは園芸品種もある。ハワイのイメージが強いが、だからと言ってそれだけしかないというわけではない」
ハイビスカスと一般に言うとどうしてもハワイアンな感じがするが、日本では熱帯で育つものを特にそう呼ぶというだけであり、真夏日が続くと株そのものが弱ってしまう──という、あまり南国のイメージにそぐわない特徴を持っていたりもする。
仏桑花という和風な名前もあり、雑種もかなり存在していたりする。きちんと栽培されている高級な商業用の花という印象もあるが、熱いところでは雑草のようにそこらに生えていたりもするのだから驚きだ。
「…とはいえ、暑いのが好きだというその認識は間違っていない。やはりこちらも、越冬させるのにいくらかの手間がかかる」
そして、ハイビスカスもまた乾燥を嫌いたっぷりの水分を好む。あとは日当たりさえよくしてやれば大きくて豪華な花を咲かせてくれるのだ。
「何が言いたいんです?」
「…こめてみろ」
「なにを?」
「…まごころを」
そう、つまりはアナナスやバナナ、マンゴーと育て方はいっしょなのだ。
「……」
「やってみるだけやってみようぜ!」
「この際だしな」
「ま、応援だけはしとくよ」
芹口と桂が鍬を持ち、華苗はぞうさんじょうろを構える。男子二人はふざけて鍬を地面に突き立て、華苗もやけくそになって水をそこらにまいた。
熱い日差しに反射してきれいな虹が果樹園を彩る。
──ぽん。
──ぽん。
──ぽぽぽん!
「「えっ」」
「なんか生えてきた!?」
薄紅色、鮮やかピンク、真夏のオレンジ。
大きく開いた5弁の花びらが太陽の光を気持ちよさそうに浴びている。ぴゅっと飛び出した黄色いおしべが風に揺れ、そして花の香りが果物の香りに混じった。
「あっちも!」
「そこも!」
「おい、足の踏み場がなくなってくぞ!」
まるで早送りの映像を見ているかのように畑からむくむくとそれが伸びあがり、ぽんぽんぽぽぽんと鮮やかな色をした大輪の花を次々に咲かせていく。果実の黄色やオレンジに混じって花のピンクや赤が目にまぶしい。
なんかもう、果樹園というよりかはパラダイスだ。華苗の目に映る光景は緑よりも華やかな色が大半を占めている。葉や土が見え隠れしていた畑はもはやその容貌を完璧に変えており、どこを見ても綺麗なハイビスカスしかない。
ハワイであったとしてもここまで咲き乱れるということはないだろう。そもそも、このハイビスカスはどうして咲いたのか。
「…やっぱりハイビスカスだろ?」
なにがやっぱりなのか、華苗は突っ込みたくなった。
もうここだけ、日本じゃない。
「ははははは……」
「わぁい……」
「へへへ……」
部長三人が乾いた笑みを浮かべている。ほかのメンツもそんな感じだ。
本当に、なんで海がないのかわからなくなってくる。むしろ、海のほうがここにきて、華苗たちに砂浜を提供するべきなんじゃないだろうかと、そう思わずにいられない。
「──!」
常夏の香りが華苗の頬を撫でた。
南国の日差しが華苗の肌を焼く。
「……もってこい」
桂のつぶやき。
「……あったはずだ」
芹口のつぶやき。
「部室と準備室にパラソルがあったはずだ! あれもってこい!」
「ビーチベッドをこないだの撮影で使っただろ! あれ用意しろ!」
指示を飛ばされた二年生が慌てて校舎へと走っていく。
「映画研究部は水泳部に行ってそれっぽいのを借りてこい! こないだ協力してやったのを盾にとって何としてでも首を縦に振らせろ!」
「演劇部は調理室にいけ! 理由は何でもいい、彼女たちをこっちへ引き込むんだ!」
華苗の目の前で、なにやら二人が激しく指示を飛ばす。その眼は笑っており、泣いており、血走っているようにも見えた。そのあまりの迫力に華苗は、ただただ見ていることしかできない。
「…なにをやるんです? このあと、卸に行かなくてはいけないんですが」
「まぁ付き合ってやりなよ。……アタシらにとっては最後の夏休みなんだ」
あひゃひゃひゃ、と桂は狂ったように笑っていた。芹口も頭のねじが外れたかのように笑っている。
足元のハイビスカスがどことなく狂気を帯びている。真夏の暑さに頭をやられてしまったのだろうか、と華苗はひどく失礼なことを考えた。
「これだけいいとこなんだ、みんなで騒ごうぜ! 沖縄よりも、ハワイよりも自慢できる!」
「さぁ──トロピカルフェスティバルの開幕だ!」
▲▽▲▽▲▽▲▽
そして始まるフェスティバル。
急遽用意されたビーチグッズやベンチに食卓。有り余るほど用意された南国の恵み。
その場でフルーツがどんどん調理され、開放的になった男子連中が服を脱ぎ捨ててはしゃぎ始める。衣装の一つなのか、桂はアロハシャツを着こんでサングラスまでつけていた。
一面のハイビスカスがみんなの気分をどこまでも陽気にさせ、騒ぎを聞きつけてくっついてきた生徒が持ち出したギターを弾いたり、踊ったりして思い思いに過ごしていた。
「わぁ! また咲いた!」
「ねぇねぇ、このマンゴーお土産に持って帰ってもいい?」
「どうぞどうぞ。好きなだけ持って行ってください」
しかも、新たに加わった生徒たちのまごころに反応してさらに畑が活性化する始末。花はどんどん咲くし、果物もどんどん実っていく。
「…ずいぶん集まったな」
「そりゃ、騒げるときには騒ぎたいでしょうよ。今この学校にいる文化部の大半が集まったんじゃないですか?」
「…運動部にはあとでまとめてもっていくか。何人かに手伝ってもらえばなんとかなるだろ」
特別席として用意されたビーチベッドにふんぞり返りながら、華苗は出来立てのトロピカルジュースを口にした。ご丁寧にハイビスカスやさくらんぼが添えられており、ハワイアン気分は120%である。顔から上だけ見れば、麦わら帽子と相まってセレブのようにも見えただろう。
まったく、気分爽快である。
隣でパイナップルをほおばる楠はヤクザであった。いつのまにやらアロハシャツを着させられ、そしてサングラスをかけられている。黒い肌と筋肉質な体が濃厚なプレッシャーを放っており、その懐から今にも拳銃を抜き出しそうな様相であった。
椿原が手をわきわきしているところを見ると、きっと彼女が制作した衣装の一つに違いない。おそらく、この場で特別な格好をしているほとんどの人間は、彼女の作った衣装か演劇部の衣装を着ているに違いなかった。
マンゴーもバナナもパイナップルも、まだまだ当分尽きそうにない。華苗は暑い日差しに目を細め、そしてちぅっとストローでジュースを飲む。
──まごころあふれるトロピカルフェスティバルはまだまだ始まったばかりであった。
20140913 誤字修正
20150313 誤字修正
20181022 文法、形式を含めた改稿
繰り返す、これは園芸ではない!
園芸に見せかけた園芸部の日常だ!
うまくまとまんねぇ……。しかも時間通りにいけなかった。反省。
緑肥すごいってことでお願いします。
さすがに育てられるとはいえ、南国は管轄外っていう。
マンゴーのすっごく甘いのってなんか後味が巨峰。
姐者しかわかってくれない。なぜだ。
あとマンゴーを初めて目の前で切ってもらった時目から鱗だった。
なんだあのハイテクな切り方は。
バナナって高級品だと思ってたけどそうでもないらしいね。
こないだダチ二人が房バナナ袋を買ってたけど、一人は四つ、もう一人は三つしかバナナ入ってなかった。なんか背中が寂しそうだった。
ハイビスカスちょうきれい。
でもハイビスカスつけておねーさんのほうがきれいでだいすきです。
あの花見ているとなんかわくわくしてくるよね! おどりたくなっちゃう!




