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2nd fragment 「初陣」


――――――「さて」

色々巻き込まれてはいるが生憎と武術みたいな戦うスキル、そしてそれを使うだけの体力がないので、使いやすそうな(イメージ)ダガーナイフと拳銃、そして予備の弾倉をいくつか制服のポケットにしまう。

拳銃のスキルもないがエアガンくらいなら撃ったことあるし、当たらなくても牽制にはなるだろう。俺は立ち上がって教室のドアに手をかける。

ドアは、普段どおりに開いた。

「ちょ、ちょっと、何処行くのよ?」

さっきまでの威勢はどこへやら、朝姫は不安げな瞳でを見上げる。

「ここに居続けるよりもどこか隠れられる場所でも探した方が良いだろ」

要するに行く当てはない。だが、教室にいたら隠れるのも逃げるのも限定されるからな。

「待って、私も行く」

そう言って朝姫も適当な得物を持ってついてくる。


…そうは言っても本当に行く当てないんだよな。さて、どうしたものか。


とりあえず廊下に出て適当に歩く。

体育館や特別教室のある方だ。

不意に、どこかから金属音が聞こえた気がした。自慢になるようなものでもないが俺は目と耳は良い。多分、誰かさんのおかげで危機を察知する能力が長けているんだろう。

今に限っては、感謝しないことも無い。

そしてまた、今度は確実に音がした。金属同士がぶつかり合う音。音源は…。

「体育館か」

「行ってみる?」

恐らく、というか行ったらそこでは絶対殺し合いをしてる。巻き込まれれば無事ですむとは限らない。

でも、うまく決着がついて勝った奴が疲弊したところで不意打ち。格好良くないどころかむしろ卑怯だけど、上手くすれば一度に2組脱落する。

こんなゲーム、卑怯も何もあったもんじゃない。さっさと終わらせて主催者様とやらを一発ぶん殴ってやろうじゃないか。

考えは纏まった。

「そうだな、行こう」



――――――体育館に到着。できるだけ音を立てないように、細心の注意を払いつつ中を覗く。中では日本刀を持った男がナイフを持った二人組と対峙していた。

日本刀の男のパートナーが見当たらないが、どこかに隠れているのだろうか。

構えてはいるが、攻撃しようとしない日本刀男(段々適当になってるように思えるのは気のせいだ)に痺れを切らしたようにペアの一人が突っ込んでいく。当然、リーチは日本刀のほうが上である。

結果は言うまでもない。突っ込んでいった奴は一太刀で切り伏せられた。同時に、ペアのもう片方も床に崩れ落ちる。ペンダントの効力とやらだろう。

しかし、日本刀の男は、特に疲れた様子もなく、至って平然としている。

・・・今仕掛けても無駄っぽい。俺は朝姫にアイコンタクトで、逃げることにしようと伝える。

まだ奴も気づいていない。さっさと逃げよう。


しかし、俺も朝姫も完全に油断していた。パートナーが隠れていることの意味を何も考えていなかった。


―何処からか矢が三本、俺たち2人を囲むように飛来し、コンクリの地面に突き刺さる。

なんて威力だ。

ありえねえ。

しかもその破砕音で奴もこっちに気付く。

「ちっ。逃げるぞ、朝姫っ」

全力疾走。狭い所だと刀がかわせそうに無いので『遮蔽物も無く、視界を遮るものの無い校庭』に逃げる。

が、すぐにそれが失策だと気付かされる。


空から降り注ぐ大量の矢によって。


続けざまに降り注ぐ矢が校庭を抉り、土煙があがる。

「コホッ、矢って普通こんなに威力あるものなの!?」

朝姫が半ギレで文句を言いながら拳銃を取り出す。

俺はナイフを構えて、土煙の向こうからの襲撃に備える。近くに刀男がいるからか、矢もあまり飛んでこない。


…つまり、だ。

刀男の相方が隠れているのは、安全地帯から刀男の死角をカバーし、遠距離から確実に仕留めるため、というわけか。


思考の隙間、わずかに砂上を踏み込む音。

「ここだっ!」

俺がナイフで刺突を繰り出すのと刀を振り上げる音は、ほぼ同時。

いや、俺のほうが、少し早かった!

「なッ!?」

男は刀を引いてギリギリでナイフをかわし、後ろに飛んで間合いを開け、目つきを鋭くして俺を睨む。

内心ビックビクだったが虚勢を張って俺も睨み返す。

万年帰宅部で半引きこもりのくせに、よくもまあこんなことが出来たもんだ。自分を褒めてやりたい。大絶賛してやりたい。今じゃなくて良いが。


距離を開けられてしまったので、朝姫がまだ煙る校庭で砂煙にうまく身を隠しながら拳銃を連射する。いつのまにか俺のも抜き取って二丁拳銃である。

そんな連射も、全て刀で弾かれる。

「何処のマンガだよッ」

と、連射を受けた直後の隙を狙い、ツッコミ混じりにナイフで斬りつける。

「ハッ」

一閃。ナイフの刃は刀と鍔迫り合うことなく、紙切れのように根元から断たれる。

俺はギリギリで刀をかわし、今度はこっちから間合いを開けようとするが、大股で詰められ、大上段から刃が振り下ろされる。

咄嗟に、残されたナイフの柄を男の顔めがけて投げつける。

ひるんだところで隠し持っていたもう一丁の小型拳銃を、刀の柄尻に押し当ててゼロ距離で発砲。

殺せる気はしないから、まず武器を破壊する。

小型であるとはいえ、はじめて銃を撃った反動は思ったより大きく、後ろにつんのめり、腕がしびれる。

よく朝姫はこんなの連射できるよな。

しかし、刀は吹き飛び、柄は砕けて使い物にならない。

こちらには、なれないとはいえ銃がある。

そんな、絶対的に不利なのにこの余裕の表情は何だ?


そういえば砂煙はやんだが、朝姫の姿も見当たらない。どこかに隠れたようだ。

まさかこいつのパートナーを探しに行くなんて気の利いたことはしてくれまい。

なんてったって朝姫だからな。


「なかなかだな。ならばこちらも本気を出すとしようか」

男は右手を空に掲げる。

突然の奇行に思わずあっけにとられていると、そこに白い光が集まり始める。

「顕れよ、『天之尾羽張』」

光が集結、日本刀を形成し、白鞘の刀となる。

「なっ…」

待て、ちょっと待て。こんな出鱈目があってたまるか。

「まさか能力すら自覚していない者にここまでやられるとは思わなかった。筋は良いが、残念ながらこれで終わりだ」

まるで俺にも武器を呼ぶような能力があるかのような。

って言うかそんなの聞いちゃいねえよ!『武器は自由』っつったってどんだけフリーダムなんだよ!


…本気でヤバいとき、人は動けない上にどうでもいいことを考えてしまうという出来れば知りたくなかったことを身をもって知った。


「さらばだ。なかなか楽しかったぞ」






そして、刃は振り下ろされた。


「あなたを生きて帰すわけにはいかないんですけどね」

「ま、どっちにしろアンタは殺すけどね?」

「ふっ、それでいい。そのまま終わるにはもったいなさ過ぎる」

「…うわぁ」

「ふふ…あはは、あはははははははははっ!」



『その殻を破れば、あなたは全てを超越する』


次回、「氷結と業炎」

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