1/13
プロローグ
世界は何事もなかったかのように動き続ける。
昨日と同じように、今日が始まり、明日へと続いていく。
誰も知らない。
昨夜、ある巨大な影が消えたことを。
誰も気づかない。
この世界を狂わせていた"何か"が、静かに断たれたことを。
しかし、"彼ら"は知っている。
ZEROが動いたことを。
そして、また次の裁きが訪れることを。
「人々はZEROを知らない。
だが、ZEROは人々を見続けている。」
どこかの国の首都。
誰もが行き交う大通り。
その雑踏の中、ひとりの男が足を止める。
彼の手元には、何の変哲もない紙片があった。
そこに刻まれていたのは、ただ一つの文字。
「0」
男の表情が凍りつく。
震える指先で、もう一度紙を見つめる。
——その瞬間、彼は悟った。
自分の時間は、ここで終わるのだと。
やがて、喧騒の中に紛れ、彼の姿は消えた。
誰もそれに気づかない。
誰もそれを語らない。
ただ、ZEROは確かにそこにいた。
そしてまた、世界は静かに均衡を取り戻す。
ZEROは終わらない。
それは、人類が続く限り存在し続ける"絶対"の意志だから。
——影は消え、世界は続く。
それが、ZEROの"正義"。