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第38話

交代で馬車を操縦しながら王都を目指している途中ゼラが話しかけてきた。

『コハル様……申し訳ございません。私の力不足です』

何でゼラが謝るのさ、あの時あの作戦を思いついたおかげで僕達は今生きてる。

『ですが、私の提案でコハル様へ多大なる負担をかけることになりました』

それは気にしなくていいよ、知ってる?

日本にはこんな言葉があるんだよ〖生きているだけ丸儲け〗ってね。


『……なるほど、それは素晴らしい考えですね』


でしょ、それに今回は運が良い方だよ。あれだけの人と戦って生きてるからね。

『……はい、そうですね。それともう一つ、40年分のマナの返却方法の話です』

『私が考えた方法なのですが、いくつかの選択肢があります』


『一つ目の方法は、"高密度マナ結晶"の利用です。王都でも売られている所は有るでしょう。これを用いれば、コハル様のマナを一気に回復させることができます』


『ですがこれは高額で、数をあまり集められるものでは無いでしょう。そして結局焼け石に水かもしれません』

なるほど。


『二つ目に、自身のマナ回復速度の強化です。スキルや自身のマナ容量の拡大などで行えます』

『これはコハル様次第ですが、コハル様なら可能かもしれません。時間はかかりますが、確実な方法です』


なるほど、まあやれるだけやってみようかな。それと一つ聞いていいかな?

『はい、なんでしょう?』

僕ってその……淫魔だよね、寿命とかってどうなるのかなって。


『淫魔、サキュバスの寿命は有りますが延ばせます。基本的に外見は変わりませんが、寿命は精気を吸えば延びます、所謂性行為を行っても精気は吸えますが』

絶対!嫌!無理無理無理、それだけは嫌!

『外には夢を喰らう事で精気を吸い取る事ができます』

……嫌な事聞いてしまった……でもそれって夢なら何でも大丈夫って事?。

『いえ、性に関する夢では無くてはなりません。性的興奮をするような夢です』

なるほど、そういう……やだなあ。


『ですが、コハル様の寿命はあと200年程ございます、あまり急いで寿命を延ばす必要も無いと思いますが』

確かにそうだね……200年かあ、長いような短いような。


「コハル、ちょっと変わってくれない?」

「はい、分かりました」

ソフィア様に言われて僕は馬車の操作を変わった。御者台から見る景色はなんだか新鮮で、少し気持ちが落ち着いた。


「ごめん、少し寝るわね」

「はい、お休みになってください」

そして暫くして馬車の揺れに身を任せるようにして眠りに落ちたようだ。その横顔を見ながら僕は静かに微笑んだ。



街道を走ってしばらくすると、見覚えのある城壁が見えてきた。王都だ……もうひと踏ん張りで着くだろう。

「ソフィア様、そろそろ着きますよ」

窓を開け眠っているソフィアを起こす。

「ん……ああ、ごめん長い事。コハルお疲れ様、かわろうか?」

「大丈夫ですよ、もうすぐ着きますから」

僕はまた御者台に戻った。そして馬車は王都へと入っていった。

「コハル、ストバードに行く前に一度衛兵に御者さんを見てもらいましょう」

「はい、了解です」


そのまま王都の中を進んでいき、衛兵の詰所を目指す。馬車はギルドのある大通りを抜けて、城壁の傍にある詰所に止まった。

衛兵詰所に馬車を止めると、すぐに衛兵たちがこちらに気付き、数人が近づいてきた。制服に身を包んだ彼らの中でも、一人の年配の衛兵が目立つ。穏やかながらも鋭い眼差しが印象的で、彼がこの詰所の責任者であることは一目で分かった。


「どうされましたか?」

責任者らしき衛兵が声をかけてきた。

「この馬車の御者さんが、魔女の呪いで人形にされてしまいました。何とか助けていただけないかと思いまして。」

僕が説明しながら、人形となった御者さんを差し出すと、衛兵たちは驚きの声を上げる。


「人形にされた……? そんなことがあるのか……」

責任者は表情を曇らせつつも人形を慎重に受け取り、細かく観察し始めた。

「これは……ただの呪いではなさそうだ。何か強い魔力が絡んでいるな。」

彼は人形を見つめながら、すぐに詰所内の奥へと視線を向けた。

「アラン、急いで魔術師を呼んできてくれ。」

若い衛兵が頷き、詰所の奥へ駆け込んでいく。僕とソフィア様は少し安堵しながらも、進展を静かに待つことにした。





しばらくして、詰所の奥からローブを纏った初老の魔術師が現れた。彼は落ち着いた雰囲気で、杖を片手に持ちながら近づいてくる。

「これが例の人形か。」

衛兵から受け取った人形をじっと見つめると、魔術師は低い声で呟く。

「……これは深刻だ。術者は高い魔力を持っている。単純な魔法では解けない可能性が高い」


「術者は死にました、でも治らなくて。もう戻すことは出来ないんでしょうか?」

僕が不安げに尋ねると、魔術師は一瞬考え込んだあとで答えた。

「いや、不可能ではない。ただし、専門の施設で時間をかける必要がある。王都内にある『精霊の祠』へ運ぶのが最善だろう」


「分かりました。それなら、そちらへ運ぶ準備をお願いできますか?」

ソフィア様が真剣な表情で魔術師にそう頼むと、彼は深く頷いた。

「我々にお任せください。この人を必ず元に戻す方法を見つけてみせます」


その言葉を聞き、僕たちは少しだけ肩の力を抜くことができた。御者さんのことは彼らに託し、次の目的地へ進む準備を始める。

「ありがとう、コハル。これで少し安心したわね」

「はい。ソフィア様もお疲れ様です。次はストバードですね」

「ええ、行きましょう」

馬車は再びゆっくりと動き出し、僕たちは次の目的地を目指して進み始めた。

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