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第15話

それから僕たちは街にある食事処で食事をしていた。

注文を済まし、料理を待ってる間に自己紹介をする。

「私はりっか、立夏 橘。君は?」

「僕はコハルです」

「そっか、よろしくねコハルちゃん」

そう言って笑う彼女はとても可愛らしい人だった。

所でだ、この人の見た目は。黒髪のストレート、身長は僕より少し高い位か。そして服装も軽装、動き易そうな服だ。

顔つきは日本人のような、そう表現して良いのか分からないけど。

「どうしたの?コハルちゃん、そんなに私を見て」

「え?あぁすいません!」

つい見過ぎていたみたいだ。僕が慌てて謝ると彼女は笑う。



この名前にこの顔つき、直接聞いてみるのが速いか。

そんな事を考えてるとき、注文した料理が運ばれて来た。

「まあ、取り敢えず食べよっか」

彼女はそう言ってフォークを持つ。

そして料理を食べる前に話を切り出す。

「もしかしてなんですけど、リッカさん。その違ったら失礼かもなんですけど」

「ん?」

「日本人……だったりしますか?」

僕がそう言うと彼女は固まりその手からフォークを落とした。

「もしかして、コハルちゃんも!」

彼女も同じ転生者だ。その事に僕は歓喜していた。

「はい!良かったぁ、同じ転生者がいたなんて」

「……転生?私?死んでないけど?」

「え?」

僕たちはお互いに首を傾げる。

そしてりっかは続けて言った。

「私は転生者じゃないよ?」

「じゃあ立夏さんはどうしてこの世界に?」

「いや~なんかね。普通に生活してたらね、急にこの世界に来ちゃったんだよね」

「はあ」

僕は立夏さんの話を聞いて少し困惑していた。

「ん?どうしたのコハルちゃん」



そんな僕を見て立夏さんは不思議そうに言った。

「……元の世界に帰りたいとは思わないんですか?」

僕は死んでるからあれだけど。立夏さんは生きている、戻れるのなら戻りたい物だろう。

立夏さんは少し考えた後言った。

「最初は私もそうだったよ、帰れないって沢山泣いたし。でもね、この世界で生きてるうちに色々抱えちゃって、帰るって選択肢が無くなったんだよね」



「何かあったんですか?」

「ちょっとね、二十人くらい食べさせないといけなくて」

「この世界に来てから色々あったんだよね~、本当に色んな事があってさ」

立夏さんはそう言いながら遠くを見るように目を細めた。

「詳しく聞いても……」

「……食べてからでもいい?冷めちゃうし」

立夏さんがそう笑顔で言うと、僕は頷いた。





「ごちそうさまでした」

「あ~美味しかった~」

僕たちは食事を終えると店を出た。

そして歩きながら話を再開する。

「さっきの話の続きだけど、二十人の子供をね養ってる……いや、『養ってた』か」

「……どういう」

「別の国でね、孤児院が無くなって里親に行けなかった子供を引き取ったの」

「なるほど」

「で、暫く頑張ってたんだけど、限界が来ちゃって」

「そんな時この街に大量の孤児を受け入れれる程の孤児院が建てられるって聞いて無理してこの国までやってきたんだ」

「とにかく大変だった、私もだけど。子供たちも……」

思い返す様に立夏さんは言った。

「その子供たちは、もうの孤児院に?」

僕がそう聞くと立夏さんは首を縦に振る。

「うん、それでも。まだまだ返さなきゃいけないものがある。お金とかもそうだけど恩も」

「帰れるのなら帰りたい。でも子供たちを放っておけない」

「だからこの世界で生きていくって決めたの」

立夏さんはそう言って話を締めくくった。



(……この人は強いな)

僕は思わずそう思った。この人の様に強くあれたらどれだけ良かっただろうかと少し羨ましく思った。

そんな僕の心情など知る由もない彼女は言う。

「あ~ごめんね変な話しちゃって!」

「いえいえ!良かったら僕もその子供たちに会いに行っていいですか?」

僕がそう言うと、立夏さんは少し困った顔をして言う。

「別にいいけど……長くなるよ、予定は?」

「何にも無いです?ド暇です」

僕がそう言うと、立夏さんは笑う。



「はは!そっか!」

そして彼女は僕の目を見て言う。

「ならじゃあ行こっか」

「折角ですし、何か買っていきましょうか」

「えー、そんな悪いよ」

「いえいえ、これもお礼です。それに今日の僕の財布は無敵モードなんで」

僕がそう言って笑うと、彼女は諦めたように呟いた。

「コハルちゃん……強いね」





それから僕らは街の商店に行き、子供たちが喜びそうなお菓子やおもちゃを買って立夏さんの案内もと孤児院まで向かった。

「リッカお姉ちゃんが来たぞーー!!」

扉を開け孤児院に入ると同時に腕を上げ、子供たちに向けてそう言った。

「お姉ちゃんだー!!」

すると立夏さんの声に気づいた子供の一人が声を上げこちらへと向かって来た。

そしてそのまま立夏さんの足に抱き着いた。

「リッカお姉ちゃんだ!」

「元気してたか~ガキどもぉ!」

立夏さんはその子供の頭を撫でながら言う。



「うん、リッカお姉ちゃんも元気してた?」

「おうよ!私はいつだって絶好調だぜ!」

そう言うとその子供と笑い合う。

そんなやり取りをしていると、他の子供たちもやって来た。

「ね~そこのお姉ちゃんだれ~?」

「ふっふっそこのお姉ちゃんは、私のお友達だ~」

「リッカお姉ちゃんのお友達!こんにちは!」

「はい、こんにちは~」

挨拶をされて僕は笑顔で答える。

そんな時奥の扉から一人、大人がやって来た。



「騒がしいと思ったらリッカちゃん、よく来たね。それに連れの子も」

「先生、こんにち!」

その人を見て立夏さんはそう言った。

「コハルです、よろしくお願いします」

僕はそう言って頭を下げた。

「礼儀正しい子だね、私はここの院長をしている者だ」

「それとこれを」

そう言って僕はさっき買った物を渡す。

「ああ、わざわざありがとね」

院長先生はそれを受け取りながら言う。

「じゃ~みんな行くよ!」

そう言って立夏さんは子供達の手を引く。

その後僕も交じって立夏さんと日が暮れるまで子供たちの世話をした。



「はぁ~すっかり暗くなっちゃったね」

空もすっかり暗くなり、僕達は孤児院から帰っている所だ。

「ねっコハルちゃん」

「はい?」

「また会えるかな?」

「はい、勿論です」

それからこれからも定期的に会う約束をして僕はリッカさんと別れた。





孤児院の前でコハルちゃんを見送る。

「ふ~今日は楽しかったな~。コハルちゃん見たいな可愛い友達もできたし」

体を伸ばし、私は独り言を言う。

「本当に……楽しい時間だけだったらいいのに」


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