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剣を取る勇気

作者: ムネミツ

 「腰には剣、弱きを助け強きを挫く任侠の士か」


 家の裏庭で俺は呼気を整え、両手に持った木剣を寝かせて左腰溜めに構える。


 地面から井戸水を組むように気を練り上げる。


 足から上がり右手から木剣へと気が流れて行き剣が光を帯びる。


 「行くぞ、練気閃光剣(れんきせんこうけん)っ!」


 俺は踏み込みと同時に剣を突き出すっ!


 仮想敵である庭の大木は固い音を立て、俺の木剣が幹に五寸ほど埋まる。


 「よっし、けどこれは気を付けて抜かないと折れるな?」


 技が決まった喜びより、木剣が折れないかどうかを悩んだ。


 木剣で五寸なら、実剣で対人なら致命傷だ。


 「剣の技を覚えても、俺は人に振るえるんだろうか?」


 他者の命を絶つのは恐ろしい、自分の命を絶れるのはもっと恐ろしい。


 悪人を断つ英雄に憧れてるくせに、勇気は持ててなかった。


 木の剣を抜き、家に戻る。


 「チェン、お主そろそろ実剣を握って見んか?」


 家に入ると、緑の拳法着を纏い逆立った白髪の精悍な老人男性が俺に語りかけてきた。


 「祖父ちゃん、もしかして見てた?」

 「感じ取れたわい、お前の素手も剣も誰が鍛えたと思っとる?」

 「貴方です、師父」


 俺は白い稽古着姿で、祖父の前で拳を包んだ礼を取る。


 俺の名はチェン、目の前の老人は祖父であり師匠のロン。


 俺達は田舎の里山で畑を耕し武芸を磨き、獣を狩り暮らしてる。


 「うん、やってみるよ!」


 俺は勇気を出して、次の修行の段階へ進むと決めた。


 「わかった、待っておれ」


 祖父は自分の寝室へと進み、一本の黒い鞘に入った剣を持って来た。


 「これが、実剣? 重いね」


 祖父から渡された剣を受け取る、木の剣とは重さが段違いだった。


 「それがお前と敵のとお前が守りたい命の重さじゃ、忘れるな?」


 祖父の言葉も重かった。


 畑仕事や家事、拳法の稽古。


 次の日から、鉄の剣を使った素振りや型稽古が始まった。


 「重いけど、これが振るえなければ剣士に何てなれない!」


 気を錬り足を踏ん張り、素振りを行う。


 そんな中、ガサガサと言う物音と唸り声が聞こえる。


 「げっ! 狼かよ!」


 ビビったら負けだと思い、剣を構える。


 当然、狼はこっちに襲いかかって来た!


 「畜生、練気閃光剣っ!」


 俺は勇気を出して踏み込み、狼の口の中へと剣を突き立てる。


 俺の剣は狼の口の中から後頭部迄を貫き、その命を絶っていた。


 「うええええっ!」


 命を奪った感覚と狼の骸のグロさに嘔吐した。


 異変を感じ取った祖父が見た光景は、吐いて倒れた俺と剣が刺さった狼の骸。


 意識が戻った俺は、祖父と共に狼の墓を作り弔った。


 「人じゃないけれど、奪った命は無駄にしないよ」

 「狼はお前の鍛錬の糧になったんだ励め」

 「うん、俺は剣士になるそして侠客の道を目指すよ」


 狼を弔いつつ、俺は改めて立派な剣士になろうと誓った。


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