表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/144

9.『秘密の恋』part 28.

 謎の島に上陸すると、台の上に椅子が乗ったみたいな輿(こし)に乗せられた。一応屋根がついてて、6人のファレリ民さんが肩に担いで運んでくれる。揺れてかなり怖いけど、必死で耐えるしかない。


 私を乗せた輿(こし)は、砂浜から鬱蒼(うっそう)としたジャングルへと、ひたすら上に登っていく。


 いやぁ……何でしょうね……よからぬことを思っていた脳内が読まれてしまったのでしょうか……?


 足首と手首とウエスト部分が、完全に魔法みたいな光る紐で固定されております。


 死んだ顔で輿(こし)に揺られている私に向かって、同じような輿に乗ったヘス卿が興奮したように大声を上げた。



「ミドヴェルトよ、着いたぞ! ここが()()()()だ」


「はあ……そうスか……」



 クソダーレンが私を拘束してるのは、私を脅威と認めているからだろう。……ということにしておく。


 ポヴェーリアさんは見当たらないけど、勇者ベアトゥス様はヘス卿の輿(こし)の斜め後ろについて歩いている。


 一応、内通がバレるとアレだから目線も合わせてないけど、私はこのあと自由にさせてもらえるのかな?


 最悪、トイレ行きたい場合どうすりゃいいんだ……


 ヘス卿の別荘とやらは、急拵(きゅうごしら)えの薄い塀に囲まれた紛争地帯の拠点みたいなヤベー作りで、10mごとに警備兵っぽい人が立っている。なんという軍事施設感。ちょっと両端が見えないけど、おそらくだいぶ広い。家というよりは街をまるまる囲っているような規模で、2mくらいの高さまで、椰子かバナナの葉っぱみたいなやつで目隠し的に編み込みっぽい工夫がされている。


 小さめの門をくぐると、塀の中には家がいっぱい立っていて、ファレリ島よりもたくさんの人が生活しているようだった。KK園区かよ! そうはいっても、家はほとんど南国の村みたいな高床式の葉っぱ屋根で、魔国の王都の建物とは全然違う。中央にヘス卿の別荘らしき大きめの建物があったけど、それもやっぱり高床式だった。


 もしかしてここ、雨とか結構ヤバいのかな……?


 それか……ネズミちゃんがいっぱい出る……?


 拘束されて逃げるに逃げられないので、私は諦めて周囲を観察した。警備兵といっても一般人だし、強そうなのは居ない。外壁もペラいし、強化魔法とか結界とか(ほどこ)されてる雰囲気はなさそう。


 最悪の場合、1人で帰還魔法を使うことも視野に入れるしかないだろう。


 クソダーレンがどこまでクソ野郎なのかによるけど、命の危機を感じない限りは粘るつもり。ポヴェーリアさんも心配だけど、勇者とはいえベアトゥス様は人間だ。魔物に囲まれて変な契約させられている状態では、とてもじゃないが最強だからと楽観視できないよ……


 

「疲れただろう? しばらく部屋で休むといい。ポヴェーリアよ、彼女を任せたぞ」


「仰せのままに、陛下」


「よし、ベアトゥスよ、来い」


「これからどうするつもりだ?」


「婚約者が心配か? 案ずるな、ポヴェーリアを付けておけば大丈夫だ」



 あえて私のほうを見ながら、ヘス卿は薄く微笑んだ。っていうか、今、()()って言ったような……?


 嫌な予感がしてポヴェーリアさんを見ると、地面に置かれた輿(こし)の上に座った状態のままの私に近づき、背後から首の周りに手を伸ばしてくるのがわかった。私をいつでも殺せるってことを、勇者様にアピールしているつもりだろう。


 本気で襲われたら私に勝ち目はない。ポヴェーリアさんは、ヘス卿の指導を受け、相手の結界を破って攻撃をする技術を身につけている。私はダメ元で首周りに物理防御結界を2重に張ってみたが、麗人の指はいとも簡単に2重の結界を突き抜けて私の喉元を圧迫してきた。


 え……マジ……?


 私が少し苦しげな顔をしてしまったせいで、勇者様が心配しないといいけれど……実際にはそれ以上首を絞められることはなく、ポヴェーリアさんはするりと私の肩先へ指を滑らせた。そのまま、手首とウエストと足首の拘束を解く。


 この光の紐は、()()()()()()だったんかい!!


 ポヴェーリアさんは、ヘス卿と一体どんな契約をしたというのだろう?


 無事に輿(こし)から解放されると、私は手首の跡を確認しながら、勇者様に自分が大丈夫であることを伝えた。



「ベアトゥス様、()()()()()()()()()()()ので、お仕事をして来てください」


「おう、待ってろ」



 勇者様は、すんでのところで殺気を放ちそうになったみたいだけど、理性を総動員して何とか我慢してくれたようだ。まだ契約の力が働いているから、考えなしにヘス卿を攻撃しても操られてしまうだけだろう。


 何よりポヴェーリアさんがどんな動きをするのか全然読めない。


 二人ともかなり強いだけに、寝返られてしまうと私ではどうにも対処できないのだ。まったく、困ったもんよ……


 しかも、私の頼みの綱の結界魔法は、ヘス卿含め3人とも破れると来たもんだ。死にたくなければ、防御じゃなくて回避をしなければいけない。私の弱さは折り紙付きなのである。


 昔、現実世界でゲームしてたときは、ほぼ回避コマンドなんか押せませんでしたからね……回避能力ゼロで回復薬でゴリ押しプレイとかだった気がする……運動神経も悪いし、安全地帯を探すしか活路はないかもしれない。


 あんのか……? 安全地帯……


 ヘス卿たちが部屋の外に去ると、私はダメ元でポヴェーリアさんに話しかけてみる。この麗人さんは、結局レベルアップしたのかダウンしたのか、さっぱりよくわからない。(つら)いならつらいとアピールしてほしいんですけど、何でもないようなクール(づら)で、いつの間にか負けているんだよな……何か弱みを見せてはいけないルールでもあるのか?



「暑いですね、私たちはここでくつろいでいればいいのでしょうか?」


「そのように命令されております」


「お水いただけますか?」


「どうぞ」



 ……とりあえず、普通の会話ならできるみたいだな。お水を運んでくれたポヴェーリアさんを見ながら、私はどこまで話をするべきか悩んでいた。



「あの、ポヴェーリアさん……ちょっといいですか?」


「何でしょうか?」


「アイテール妖精王女様のこと、どう思ってます?」


「心からお慕い申し上げております」


「じゃあ……賢王ヘスダーレン様のことは、どう思ってます?」


「心からお慕い申し上げております」



 あ……うん。大体把握した。新規登録されたってわけね……


 この麗人の王は、どこまでもAIキャラで行くつもりなのか。アイテールちゃんは、ポヴェーリアさんに、人間らしくなって欲しかったのかもしれない。でもそれって演算処理がとっても大変で、本物の人間ですら四苦八苦しながら毎日模索しなきゃいけないくらいなのだ。割り切って、機械的に行動するほうが確かに合理的で楽ではある。けど……


 本来、(しもべ)に意志は必要ないのだろう。


 主人の命令を、とにかく最速で実行することが求められている。


 でもアイテールちゃんは、ポヴェーリアさんにそんなことは求めていなかった。


 (しもべ)契約しちゃったことを、一番後悔しているのは妖精王女様なんじゃないかな……たぶん、一緒に居られるならいいかと、軽い気持ちで受けてしまったのだろう。まさかポヴェーリアさんがこんなに無機質になってしまうとは思わなかったはずだ。


 でもまだアイテールちゃんへの気持ちはあるみたいに感じる。AIだって自我が生まれることはあるって! 現実世界では、そんな科学的予測もあったし、それ系の作品もあったし!!



「じつは……ヘスダーレン様は悪魔ではないかと思うのです」


「何をおっしゃっているのですか?」


「以前のヘスダーレン様とは、何か雰囲気が違うと思いませんか? 以前のヘスダーレン様は、もっと達観していたというか……お優しい方だったと思うのですが。少なくとも私を拘束させたりはしなかったと思うのです」


「ミドヴェルト様、それ以上は……」


「私の推測ですが、ヘスダーレン様は、悪魔に乗っ取られてしまったのではないでしょうか? ポヴェーリアさんなら何かお気づきになっているのでは? 本物のヘスダーレン様をお助けしなくてはいけないと思いませんか?」



 悪魔疑惑は本当だけど、どういう事情かまではわかってない。契約でヘス卿の味方しかできないポヴェーリアさんには、あくまでヘス卿のために、ヘス卿を心配している(てい)で話を進めれば響くかもしれない。そう思った。


 案の定、ポヴェーリアさんは顔色を変え、私に向き直る。



「もう少し……詳しいお話をお伺いしてもよろしいでしょうか」



 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ