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8.『クリプトクロム奇譚』part 21.

「おい……ババア……今までどこに消えてた……?」



 ベリル様は赤い髪を振り乱したまま、押しくら饅頭しているイザイザ様達を詰問した。知らない立場から見たら、完全なる弱い者いじめである。勇者様が変に介入してこなきゃいいな……と思って様子を見ると、バッチリ目が合ってしまった。



「そうね、久しぶりよねぇ!」

「私たちも会いたかったわぁ!」


「はぁ? ふっざけんな! よくも俺を良いように使ってくれたなぁ……この落とし前はきっちりつけさせてやる!」



 精霊女王様と双子神が何やら揉めている横で、勇者様が「あいつら何なんだ?」みたいな目をしてきたため、私は「とりあえずそのままで!」と手のひらを見せて合図を送ってみる。伝わったかなぁ……?


 一応、ベアトゥス様は、眉を(ひそ)めながらも大人しく様子を(うかが)っている。待ってくれているってことは、意図は伝わったようだ。



「あなた達が仲良さそうで良かったわぁ」

「そうね、そう」


「あのさ……あんたら、ミドちゃんを俺に殺させて、精霊女王の宝も横取りするつもりだった? 



 えぇ? そういえば、ベリル様って最初に会ったとき以来、全然生命力吸おうとしなかったような気がする……もしかして、私がダメージ受けてたことに気づいてたのかな??


 となると、やっぱイザイザ様達は敵ってことになるのか……ベリル様をけしかけて、さりげなく私を殺そうとしたらしいけど……何故?


 急に殺気が感じられて、慌ててベアトゥス様を見ると、()()()()()()()()()()というイザイザ様達のほうを見て動かない勇者様がいた。あんまり怒らせないでくれぇ……おばあちゃん達、どうなっちゃうかわかんないんだからさ!!



「あ、あの子は死なないわよ、ねぇ?!」

「死なないわよ?! ただほかの世界に()()()()()()だから!!」


「はぁ? おいババア……適当なこと言ってんじゃねぇだろうなぁ?」


「まさか! あなたならわかるでしょ? 『()()()()()()()』なんですから!」

「そうよそうよ! あの子は、ほかの世界から来て、また別の世界へ行ける子なのよ!」



 そ、そうなの……? もしかして、私、現実世界に帰ることもできるのかな……? イザイザ様達にもっと詳しい話を聞きたいと思うけど、どうもそんな雰囲気ではない。ベリル様は、これっぽっちも私を抱える腕の力を緩めてくれないし、あの双子のおばあちゃん達もこれ以上詳しく説明してくれるかわからない。だいたい、本当かどうかも怪しいもんね。ベリル様の怒りを(やわ)らげるために、口から出まかせを言ってるだけかもしれないし……



「行きたいのか……? 別の世界に……」


「ひっ! ベ、ベアトゥス様……? 私はひと言も帰りたいとは申しておりませんので、誤解しないでくださいね?!」


「えぇ? ミドちゃん帰りたいのぉ? やだよー! もっと俺と遊ぼうよぉ! ね?」



 ベリル様もベアトゥス様も()がヤバいんですよ……! イザイザ様は、ご自分達が何を言っているのかわかっているのか?! 



「その子がいると、この世界が予定表に沿って成長しないのよ……」

「そうなの、データが使えなくなってしまうのよぉ」


「はぁ? 何言ってんだよババア! データって何のことだ?!」



 ベリル様は、言い訳するおばあちゃん達をどんどん詰めて行く。イザイザ様達が神様的な存在ってのは、たぶん確かなんだろう。私は偶然この世界に転移してしまった異分子みたいなものなのだ。中世設定の異世界に、ブラックライトとかカラオケとかスマホとか、偶然使えるようになった魔法とはいえ、我ながらちょっとやり過ぎだとは思っていた。でも、だからって問答無用で消されたくはない。せめてイエローカードの警告ぐらい、ワンクッションほしいものだ。


 イザイザ様達は何故ここにいたのか? やっぱり、精霊女王の宝が手に入りそうだからなのかな? だとしたら、精霊女王の宝で私を別の世界に送るとかもできるんだろうか?



「ベリル様! 精霊女王の宝は精霊女王様以外でも使えるものなのでしょうか……?」


「んあぁ……まあ、願いを言うだけだしね。基本的にこのホリーブレに入れるものは精霊ぐらいだし、過去の技術で暗号化はされていないはずだ」


「じゃあ、やっぱり……イザイザ様達は何かお願いをしに来たんでしょうか……?」


「……?! あんのババア……!」



 ベリル様は、一気にパワー全開で攻撃魔法を(はな)つ。


 それが直撃して、イザイザ様達は大爆発に巻き込まれた。


 えぇ……私が軽く引いていると、瞬間移動したのかイザイザ様達は焦りながらも元気に走り回っていた。



「ちょ、ちょっとベリルったら急過ぎない?!」

「急すぎるわ! 今のはギリギリだったわ!!」


「うるせえ! これ以上、俺を愚弄するつもりなら容赦しない!」



 精霊女王のベリル様としては、イザイザ神のお二人を信じちゃった分、なんか許せないものがあるんだろう。完全に心を許していないつもりでも、あの家でリラックスしていたベリル様の姿は、わりと素の状態っぽかった。裏切られたと思っているのかもしれない。私自身も、可愛い双子のおばあちゃんの見た目に騙されて損した……と、少しだけ思う。



「私達はね、この世界を管理運営する責任があるのよ!」

「そう! そうなの! この世界をコンセプトに近づけるための調整が使命なのよ」



 ベリル様は無言で攻撃魔法を連打する。ベアトゥス様は静観しているみたいだけど、イザイザ様達にはロックオンしているようだ。双子のおばあちゃん神は素早さが相当高いのか、精霊女王様の連撃を間一髪で避けながら、なんだかんだいって無事だ。そんな中、ベリル様の攻撃魔法が洞窟の天井に流れていったと思うと、何かキラッとして小さい破片が落ちてきた。イザイザ様達が、その光に向かって素早く飛びかかる。アレってもしかして……


 

「おい勇者!」



 ベリル様がベアトゥス様に声をかけると、勇者様はサクッとイザイザ様達を素手で捕まえた。



「いやぁあぁぁ! 膝は駄目! 膝には爆弾があるのよぉ!」

「肩がぁ! 肩がハズれちゃうわぁ!!」


「こいつらをどうするんだ?」


「さあてね……そうだ、ミドちゃんが決めてよ」


「ええ?! わ、私ですか……?」



 勇者様に逆さ吊り状態で持ち上げられたイザイザ様が、涙目で私にキュルンとした視線を送ってくる。


 ナチュラルに媚びられてもなぁ……



「この世界の管理は、天使さん……ソードフィル・フォース・ガーディアンズ所属の強化人間さん達が(にな)っていると聞いたんですけど……イザイザ様達とは何かご関係があるのでしょうか……?」



 漠然とした勘だけど、天使さん達が各惑星の管理代行業務をしているってのが本当だとすれば、イザイザ様達はイレギュラーな存在のような気がする。もしかしてだけど、天使さん達に見つかるとマズいから、精霊女王様に結界を張らせて天使さん達が監査できないようにした? だとすると、私を消したかったのも、天使さん達との繋がりを作ったから……?



「かかか関係なんて、まったくないに決まっているわぁ!」

「知らないわ、()()()()()()()()になんて会ったこともないわよ?!」



 あるね。これは。イザイザ様達は、明らかに何か隠しているし、サリー船長にも会ったことがあるか、もしくは一方的に知っている。これは引き渡したほうがいいような気がするけど、この二人が居ないと困ることって何かあるかな?



「ベリル様、イザイザ様達が居なくなったら、何か支障が出ることはありますか?」


「ん? 別にないんじゃん?」


「酷いわ、ベリルちゃん!」

「美味しいパンは?! あなた大好きでしょ?!」



 イザイザ様のパンがどういう美味しさかはわからないけど、たぶんベアトゥス様のほうが美味しいパンを作れるはずだ。っていうか、精霊女王様ってパン食べるんだ……やっぱり概念さん達の食事事情って()()()()()()()()なんじゃないかな? 後は好奇心……?


 そんなことをしていると、上空から降ってきた光が、とうとう私の目の前にやってきた。ものすごくゆっくり……私が伸ばした手のひらに収まって、光が消えると、ビー玉みたいな丸い石だった。



「こ、これが()()()()()()……なんですか?」


「状況的にはそうだろうな。今回はミドちゃんに悪いことしたから、キミの願いを叶えていいよ」


「え?! じゃあ、ホリーブレ洞窟を元に戻してってお願いしてもいいですか?」


「ふふ……」



 ベリル様は、私を抱えていた腕をやっと(ほど)いてくれたかと思うと、今度は真正面から抱きついてきた。



「ミドちゃんやっぱ最高だわ! ねー、あんな奴やめて俺の嫁になってよ!」


「あっ! 貴様!!」


「んまぁ、それは良いことよ?」

「そうね、それには賛成だわ」



 精霊の宝は、まばゆい光を放つと、またひとりでに洞窟の天井へ上昇していった。


 レーザーみたいな青い光が一筋の線になって、土が掘り返されて赤い火が燃えている地獄みたいな場所が、どんどん元の青白い草むらになっていく。



「イザイザ様達は、サリー船長に引き渡しましょう。ちょうど魔国の王城にいらっしゃるので、連絡しておきますね」



 私がスマホ魔法でサリー船長に電話すると、イザイザ様達が騒ぎ出す。



「それ、それが嫌なのよ!」

「何で中世の文化で通信機器なんか作っちゃうのよぉ!」


「すみません、今電話してるので、お静かに」



 私だってちょっと雰囲気ぶち壊しだなとは思ってるんですけど……やっぱり利便性が良いので使ってしまいますよね。


 イザイザ様達は、見た目もおばあちゃんだし、懐古主義派なのだろうか。


 急に雰囲気が変わったことに気づいたのか、フワフワちゃんと執事さんが駆けつけてきたので、私は手を振った。







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