8.『クリプトクロム奇譚』part 4.
号外!! 天使あらわる! 西の森での一大イベント開催!!
「号外、久々に見ましたねぇ……」
「きょういくがかりどの、てんしというのはいったいてきなのか、それともみかたなのか?」
「あ、王女様もしかして天使にご興味がおありですか? 結構イケメン揃いでしたから、良ければご紹介しますよ?」
「そういったきょうみはないが……」
私の部屋で朝活をしているのは、妖精王女のアイテールちゃんと仲良しのケット・シー、そしてなぜか朝食を運んできてそのまま居座っているベアトゥス様だ。
いつもいるはずのフワフワちゃんは、今日は騎士団と朝練の日で、以前混ざってきてた公爵様はとっくにフェードアウトしている。
クリーム色のケット・シーはアイテールちゃんにかなり懐いており、ホリーブレから帰って以降、いつでも一緒にいるらしい。
本当は天使討伐隊にもついて来ようとしてたんだけど、ベリル様に追い返された。
まあ、最初の感じよりも結構命がけな討伐任務になってたから、かわい子ちゃんはお留守番で結果的に良かったんじゃないかな。ケット・シーがメカ天使に怪我でもさせられちゃったら大変なことになってたかもしれない。
「ゆうしゃどのは……てんしをどうみる?」
「さあな、怪しい奴らだ」
「またそういうこと言う〜! 戦う前にまず話し合うって大事なことなんですよ?!」
まったく、そんなんだから国に必要な地竜を殺しちゃうってミスを犯すんじゃないのかな?!
私は、なぜか機嫌の悪い筋肉勇者をわざと明るく嗜めておいた。そもそも何でここに居るのかな? いや、仲間外れにしたいわけじゃないけど……朝活に混ざりたいなら、自分のご飯とか持ってきたらよかったじゃん。腕組んで壁んとこに立たれてると、すごく気になっちゃうんですが……
まあ厨房の朝は早いらしいし、すでに朝ごはんは済ませた後なのかもしれない。
かといって変に私のご飯を分けてあげて、アイテールちゃんの前でイチャ付きハラスメントになっちゃったら嫌なので、あえて気にしないフリをしている。でも、何か言いたいことがあるんなら、早く言ってほしい。
「ところで、ベア……」
「ちょっと聞いていいか?」
「……なんだ? 言ってみろ」
「あ、いえ、ベアトゥス様からどうぞ」
「……お前、あの天使と何をしていた?」
「へ?」
あの天使……というのは、昨日地上にやって来たサリー船長御一行のことだろう。何をしていたかと言われれば、天使の上層部さん達の歓迎会を丸投げされた身として、力の限り頑張っていた……としか言いようがないわけだが。
天使さん御一行様は、護衛役のメカ天使は一切連れず、強化人間である上層部の5人だけでやって来た。
本当はまだ後5人くらい宇宙船に残ってるらしいんだけど、その人達まで来ちゃうと船長代理とか船を管理する人がいなくなってしまうから、泣く泣く残して来たんだとかサリー船長は言っていた。
とりあえず歓迎の花飾りをした西の森ホテルにお連れして、しばらくゆっくりしてもらってから午後は王様に謁見。そんでもってコロッセオで歓迎式典やって、今日は王都の視察を兼ねたタックスフリーのお買い物タイムだ。
結構忙しいので、婚約者として勇者様を最優先にできないかもしれないけど、王命なので許してほしい。
というか、なぜか詰められる予感しかしないんだけど、私なんかしましたっけ?
「酒……」
「?!」
サリー船長とお酒飲んで悪酔いしたのは確かに失敗だったけど、別に何もなかったし問題ないよね? というよりも、内緒にしてもらう約束だったのにどこから漏れた?! ベアトゥス様はどこまで知ってるというのか?!
思わず冷や汗が流れ出すけど、あえて強気で知らないフリをするしかない。
「お酒が何か……?」
「酒を飲む姿を見ていれば、大体の関係性はわかる」
「えぇ?! そ、それはどういった点で判断するんです……?」
「ばぁか、教えるわけねぇだろ」
や、ヤバいですぞ?! 勇者様にどう思われているのか……歓迎式典の後のパーティーでなんかやっちゃった?!
確かにお酒は少し飲んだけど、羽目を外すほど酔っちゃいないはず……あ! サリー船長が軽く絡んできた件?! でもあれは「ニッコリ45度!」っていう、天使さん達の間で流行ってるギャグを見せられてただけなんだが。
まさか、ベアトゥス様の居たところから見たら、キスでもしてるように見えちゃったとか?!
うわ、ヤバいヤバいヤバいよそれは! 今すぐ訂正しないと、また勇者が暴走するかもしんないよ!!
焦りに焦る私を面白そうに見ていたアイテールちゃんが、呆れたように呟いた。
「きょういくがかりどのよ……ゆうしゃどのは、かまをかけてそなたをためしただけだぞ。して、そのてんしとはなにがあったのじゃ?」
「えぇ?! ひどーい! ちょっとお酒飲み過ぎて、一緒にトイレで吐いた仲ってだけですよぉ」
「酷いのはどっちだよ……ったく油断も隙もありゃしねぇな」
「あ、ヤバ……聞かれてた!?」
「はぁ……よし、わかった。今日の視察に俺も同行させろ、な?」
勇者様がいい笑顔で圧をかけて来たので、私はシブシブ文官さんに同行者の追加を申し出たのだった。
☆・・・☆・(★)・☆・・・☆
「ミドヴェルト、良かった。あなたにまた会えて嬉しい。今日は何を見せてくれるのですか?」
西の森ホテルに向かうと、エントランスの花を愛でる天使御一行様が絵画のような配置で佇んでいた。これは眼福。……じゃなくて! すんません、巻き込んで。
「サリフェンリーザ様、本日は王都の市場などをご見学いただく予定になっております」
「あれ、どうしました? 私のことはサリーと……」
「ゴホン!」
「し、失礼しました! こちら、私の婚約者で、勇者ベアトゥス様です」
「え、勇者……ですか?」
「婚約者、だ。よろしくな!」
ベアトゥス様は気まずい空気をモノともせず、サリー船長の手を取って力一杯握手した。
笑顔が怖いよ、勇者様……
サリー船長はといえば、なんだか元気がない。
すみません、仕事場に家族連れて来るみたいなことになってしまい、反省しております……
「まさかあなたに婚約者がいらしたとは……知らないとはいえ失礼いたしました」
「あ、いえ、こちらも何だか無理矢理ですみません」
「いえいえ、早くも失恋してしまいましたよ」
「ははは、お世辞がお上手でビックリです」
ベアトゥス様のおかげで話が切り出しやすくなったとばかりに、サリー船長は地上に来た本当のワケを語り出した。
曰く、人間のお嫁さんを探しているんだってさ。私に聞きたかった本音ってそれだったのか……?
ベアトゥス様は「そらみろ」とばかりに視線を送ってくる。すいませんねぇ、ガードが緩くて。でもあんときはそんなこと考えてる余裕なかったし、天使は全員メカ概念だと思ってたし、しょうがないじゃん!
しかし、強化人間と人間って結婚できんのかな?
だって、天使の形では生まれてこないよね……? なんか最先端の遺伝子操作とか特殊技術があるのか? だとしたら、青髪大先生が喜んで食い付きそうな話題だ。
というか、もし結婚したら宇宙船で一生暮らさなきゃいけないのかな?
これは話をしっかり詰める必要がある。
お見合いパーティー……開いてみるか!




