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01.勇者に婚約破棄されました

『女の勘』は当たらない。でも『自分に不利になりそうな予感』は当たる。


「まったく。最後に一言くらいあっても良いじゃない……」



がらんとした自室に、声が響く。手に力を込めて、手紙をぐしゃりを丸めた。

『やっぱり聖女と婚約するわ(笑)勇者より』と書かれていた紙を。



前世でやりこんだゲームに転生したから、この結末は知っていた。

私はヒロインである聖女の恋敵。貴族の悪役令嬢、ヘレナだから。



「分かっててもムカつく。誰の金で、ここまで来たと思ってるのよ!」



豪勢な部屋を見渡す。いつもの部屋だ。

でも、壁にかけられた絵や宝石など、金目のものは全て消えている 。



「そうだ。あのパーティ、盗賊がいたんだった……」



そういえばゲームでも、婚約破棄と同時に一気に羽振りが良くなっていた。

でもそんなものより、もっと憂うべき未来が私には待っていた。



シナリオ上では、婚約破棄された後にヘレナの出番は無い。

勇者と聖女の愛の力(笑)でラスボスの魔王を倒して、エンディングだ。



「でも追加コンテンツでは処刑されてたわよね、ヘレナ



CMで見ただけだが、確かそういう設定だった。こうしてはいられない。

さっさと国から出て、ゲームシナリオが適用されない場所を探すしかない。


荷物をまとめて、家を出た。

ぽかぽか陽気で、ほとんど春の宵だった。


「よお、ヘレナ」


そこで待っていたのは、赤毛に浅黒い肌の青年。

ヘレナと婚約破棄をした、勇者だった。



「あんた、どの面下げて来たのよ?」

「俺が恋しくて泣いてるんじゃないかと思ってさ」


彼は口元に、下卑た笑いを浮かべた。

ぽかぽか陽気で、頭までやられてしまったのだろうか。


「今なら抱いてやっても良いぜ?今まで断固として抱かせてくれなかったからな」

「死んでもお断りよ」


私の答えは、彼にとって想定外だったらしい。

彼の表情は、一気に凍りついた。


「……なら、死ねよ」

「え?」


彼は剣を抜いた。禍々しい黒い光が、剣にまとわりついている。

それを見て、彼は薄く笑いながら私に近付いてきた。


「ちょうど試したかったんだ、『闇の剣』をな」

「ふーん。斬った相手を魔界に送るってやつ?」

「強がっていられるのも今のうちだぜ」


彼は剣の先を、私の首元にピタリとつけた。

黒い光が首元をぐるぐると覆い始めた。その動きは、どこか喜んでいるようだ。

チクリという痛みと共に、一筋の血が流れる感覚がした。


「言い残すことはねえのか?」

「あっても、あんたに言うことはないわ」


彼は無言で剣を空へと突き上げ、叫んだ。

宙に巨大な黒が出現した。


「『闇の剣』よ、この者を魔界に捧げる!」


次の瞬間、私は穴に吸い込まれていった。

気にしていたことは、ただ一つ。


自分の顔がニヤけていたのを、うまく隠せたかどうかだった。



落下して、私は辺りを見渡した。不毛な荒野、確かに魔界だ。

誰もいないことを確認して、叫んだ。


「やった!これで推しに会える!」


魔王には5人の息子『魔王子』たちがいて、彼らを順番に倒していく。

そして最後に魔王を倒すことになっている。


あのゲームで、私の推しは第五王子のローラン。

美しい金髪とブルーの瞳を持つ、端正な顔立ちの青年だった。


あの頃は倒すのが嫌で、魔界で魔物を倒し続けていた。

レベルアップをしすぎた挙句、一瞬で倒してしまったのだが。

でもその方が、痛みを与えずに殺せて良かったよね?


「で、魔界ってことはローランの城もあるはずよね」


私は立ち上がり、辺りを見渡した。

すると前方に忘れもしない、彼の城がそびえていた。


「あった!?さすがに都合良すぎて心配になるけど!」


でも私は悪役令嬢だ。いつ死ぬか分からない。

モラハラ勇者と一緒にいた時間を、自分の人生を取り戻したい。


ローランに会えるなら、何だって差し出しても良いわ!」


私は深紅のドレスをひるがえし、一目散に城へ駆けて行った。


―――あの時、私は知らなかった。

この声を、地中深くで聞いていた者がいたことを。


●読者の皆様へ

お読みいただき、ありがとうございました。


読者の皆様に大切なお願いがあります。

十秒程度で終わりますので、ご協力いただけますと幸いです。


・面白かった

・続きが気になる

・応援してあげてもいいかな


など、少しでも思ってくださった方は、

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