赤色?エンドロール
思い出したとはいえ、何をするべきか。
家に帰ってぼんやりと考え込むも、何も考えつかない。
実力を付けて、部長とタイマンする?
「……無理。そうこうしてる内に先輩卒業しちゃう。」
廃部にまで追い込む?
「それはなんか違うよね……。」
暗い部屋の隅で独り呟く私を不安に感じたのか分からないが、玄関のチャイムが鳴った。
「あ……えっと、何ですか?」
困惑気味に語る私に対して、画面の向こうの彼女は笑顔で笑った。
「音那……リコちゃんだよね!?」
「あ、あの……!」
警察を呼ぼうか迷い、ケータイに手を伸ばす。
「アタシだよアタシ!久しぶり!ミツキです!」
懐かしい響きにハッとする。
「ミツキ……?もしかして、日波ミツキさん!?」
「なつかしいなぁ……リコの家来るの。」
「いえいえ……お菓子なくてすみません……。」
「急に来たのアタシだし、へーきへーき!」
私が病室にいた頃からずっと変わらない笑顔。
会うのは久しぶりなのに、なんだか懐かしい。
「ヴァイオリン!?もしかして……リコ!」
「はい!遊波学院、受かりまして……。」
「リコが後輩、かぁ……。すっごい嬉しい!」
この空間が、すごく楽しい。
ポケットに入れたままのスマホが震えていた。
「スマホ鳴ってんじゃん。出な?」
部長直々の電話なんて珍しい。ちょっと気分が下がりつつも応対する。
「部長さん……?え、嘘だっ……!」
息が切れるほど走った。心臓が痛い。
でも、それよりも。
「ユイ先輩……どうして自殺なんて図ったんですか……っ!」
私の手から落ちたムードリングは黒く濁っていた__。