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私色の決意
ずっと忘れられない夢がある。
病室で過ごし、音楽なんて触れなかった私が唯一分かる楽器。
「ヴァイオリン」
本物の音がどんなに綺麗なのか。言葉でしか聞いた事がないはずだった。
小学五年生の時に音楽の授業を受けて、音色の綺麗さに驚いた。
でも、それよりも。
「何であの音、知ってたんだろう?」
不思議としか言いようがない奇跡だった。
「ねぇ、ママ。 私……中学校で、オーケストラ部入る。」
これまで周りに縋って願って、託して。
そうやって生きた私の、『最初で、多分最後』の選択。
後悔なんて、きっと無い。
「私の、青春……。」
数年前は夢だった青春が今、ここにある。
かつての親友から借りたままのムードリングを握りしめ、空に掲げる。
青から紫に変わった事を確認し、天国にいる親友にも聞こえるように呟く。
「……夢色に輝いてくれるよね。」