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Side 父ヒューゴの葛藤と策略

私の娘は、天使である。息子達が小さい時も可愛いと思っていたが、次元が違う。生まれたセリーヌをこの手に抱いた時心が洗われるような不思議な感覚を覚えたのを今でも覚えている。


赤ちゃんの時から、何故かこちらが思っていることが分かるのではないかと思うことが多々あった。夜泣きもしないし、我儘も言ったことがない。そして相手にいつも寄り添うような子だった。家族や公爵家に使えている者達に対して、いつも愛を持って接しているのが感じられ、皆が心地よくいられるように自然と振る舞っていた。


私のみならず、家族や使用人達は娘を溺愛していた。高価なプレゼントを渡すと戸惑った表情を見せ、自分はもう充分だから他の人のために使って欲しい、領民の税金を私に使わないで欲しいと言われた時には驚いた。まだ3歳なのにそんなことまで考えているとは思わなかった。私が私財で購入していると説明するとホッとした様子を見せた。


賢い子だとは思っていたが、まだ3歳だ。税金のことなど普通の子どもは分かる訳がない。誰が教えたのか家族と使用人達に確認したが、誰1人教えていないと言う…。




そして今日、改めて娘が規格外にすごいと言う事が判明した。


執務室で仕事をしているとフィツマンが慌てた様子で、面会を申し込んできた。只事ではないと思い部屋の中に入るように声をかけた。


「お父様、お仕事中に申し訳ございません!」


「かまわない、どうかしたのか?」


「じっ、実はセリーヌなのですが…」

様子を見ていつもとは違うとすぐに分かった。いつもは元気いっぱいでハツラツとした表情が無く、フィルマンの顔には戸惑いと心配の表情が見てとれた。言い淀む姿に、只事ではないと感じた。


「どうした?!怪我でもしたのか?!」


「いえ、そうではありません!あの…実はセリーヌが魔法を使って見たいと言ったので、シドについてもらって魔法を練習しようと思ったのです。そしてシドの真似をして行ったところ、…一発で4属性の魔法に成功しました。」


「何?!そんな馬鹿な!?最低でも3年はかかるはずだぞ?!」


「お父様、…それだけではありません。無詠唱で成功したのです」


「っ…?!なんだって!!!???」

これはただ成らぬことだった。こんな例は未だかつて聞いたことがない…!!!異例中の異例だ。だからフィルマンが言い淀んだのだと分かった。


「………今すぐミラと共にセリーヌの所に行こう…」


私とフィルマンは2人で妻のミラの元に行き、事情を説明した。たちまち不安と驚愕の色が見られたが、すぐに持ち直し一緒に行くと言った。3人でセリーヌの所に向かうと状況がわからずキョトンとしながらも少し不安そうなセリーヌと異例なことに深刻そうな表情のアレクシとシドがいた。


アレクシがセリーヌに優しく声をかけ4属性の魔法を見せるように促し、セリーヌは少しホッとしながら無詠唱で魔法を使った。


魔法を使う姿を見ていて気づいたが、魔法を使っているときにセリーヌの髪が虹色に輝いていたのだ。普通魔法を使って髪が光り輝くことはない。通常とは違う光景にある仮説が浮かんだ。


残りの2つの属性を持っているのではないかと言うことだ。


文献によると闇属性は影を動かし、光属性はケガや病を治すことができるという。しかしそれは3000年以上前のことだ。本当に存在するのかどうかも分からない神話で語られているような話だった。しかもこの属性については分からない事が多すぎる。文献の内容を思い出し、セリーヌにやってみるように促すとなんとできてしまった。あまりのことで言葉を失う。


セリーヌは全員が押し黙ってしまったことで、何かあるのだと感じ取り不安な表情を浮かべた。


まずいと思った時にはミラがセリーヌを抱き上げ、声をかけ落ち着かせた。その行動で我にかえり、私はミラに光と闇の属性を使う人が3000年以上居ないことを伝えた。あまりの事に、驚愕と不安を示したセリーヌだが我々全員で守るというとホッと安心した表情を見せ、ミラに抱かれながら眠ってしまった。



それからの、我々の行動は速かった。執事のセバスと護衛のランスを呼び、今後の動きについて確認した。2人共あまりのことに驚いたがすぐに冷静に話を聞いていた。


「これから話すことは決して他の者に話してはならない。私はアントワーヌ(実父)とアルチュール(義父)に連絡をとり、セリーヌを守るために協力を仰ぐ。そして今後どのように動くかを相談し、セリーヌを守るための算段をつけた後に、陛下に話そうと思う。…悪い人ではないが、リュミエール王国のことを考え王族に抱き込もうとするかもしれない。しかしそんなことはさせるつもりはないが、いずれは力のことについて隠し通せなくなるだろう…そうなった際に王家に助けを求めることも出てくるはずだ…。セバス、誰の目にも触れないように2人に速達を出してくれ。ランスは公爵家の騎士団長と副団長にこのことを伝えてくれ。」


「「御意」」

2人は返事と共に部屋を出て行き、部屋に残ったのは家族のみとなった。


「お前達、分かっていると思うがこのことは誰にも言ってはいけないよ。お前達のお爺様としっかり相談して、セリーヌを守れるようにしなくてはいけないからね…そうしないと王家や教会、他国がセリーヌを奪おうとやってきてしまうかもしれないからね…」


「分かっております!!」


「絶対誰にも言いません!!」


2人に息子の頼もしい返事を聞き、頷きを返した。そして最後に妻に抱かれているセリーヌを見る。

優しいこの子を守るためには準備が必要だ。一丸となって守っていかなければならない。


「ミラ、私は今後の動きについて考えなくてはいけない。セリーヌが目覚めたら光魔法と闇魔法はいいと言うまで使ってはいけないとセリーヌに伝えてくれ」


「分かりました。この子は聡い子ですから分かってくれると思います。」


「あぁ、そうだな…。ではよろしく頼むぞ」


私を部屋を出て、今後の動きについて考えた。父達には状況をセバスが伝えてればすぐに返信が来るだろう。実際に会って対応を考える必要がある。私の誕生日がもうすぐだから、それに合わせて皆で集まって相談すれば不自然ではないだろう。


……絶対に私の娘を他の者に奪わせない!!

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