3歳になりました ②
みんなでお茶をして疲れてしまったのか、そのまま寝てしまったようだ。やっぱり精神年齢は大人でも体は子どもなので、引きづられるところはあるみたい。しかし、今はそんなことはどうでもいい。目の前に2人の天使がいて、硬直してしまった。
「セリーヌ、起きたんだね」
「庭仕事してたって言ってたから疲れたんだろ?」
「………」
そう、天使の正体はアレクシお兄様とフィルマンお兄様。本当ビックリした…また召されてしまったと本気で思った。いつの間にか私は自分の部屋のソファーに座っているアレクシお兄様にお膝抱っこされており、お兄様達はニコニコと私を見て笑っていた。しばし私は目をパチパチさせて2人を見つめた。
「アレクシお兄様とフィルマンお兄様…」
「どうしたの?」
「まだ寝ぼけてるのか?」
「いいえ、…目の前に2人の天使がいると思って、ちょっとビックリしちゃて…」
私がニコッと微笑むと「「うぐっ!!!」」と唸って2人は胸を押さえてしまった。たまに家族や公爵家の人々は私を見て蹲ることが多々ある。子どもって存在しているだけで可愛いもんね〜。分かる分かる、私も先生時代にキュン死させられそうになったことがあったもんなぁ〜。
「セリーヌ…。セリーヌこそが正真正銘の天使だよっ!!!」
「兄さん、抱っこ代わってください!!!次は俺の順番です!!!」
私の抱っこ争奪戦が始まったので、「喧嘩したら、めっ!!」って言ったら今度ば蹲って赤くなってぷるぷるしていた。も〜順番っこって毎回言ってるのに〜。ま、子どもって可愛いから抱っこしたくなる気持ちは分かる。なので抱っこしたそうにしているときは抱っこさせてあげている。
「兄様、お勉強終わったのですか?」
永遠にやり取りが続いてしまうので、やり取りをぶった切る。
「あぁ、今日は魔法の授業だったんだけど予定より早く終わったから、セリーヌに会いにきたんだよ」
「魔法…魔法ってどうやったら使えるんですか?」
呪文とか魔法陣とか使うのかな??前世は魔法がなかったから自分の使えるならやってみたいな〜。
「そうだね、魔法を使うには自分の魔力とイメージが必要になる。イメージを確実なものにするために呪文を綱える人もいるよ。あ、でも自分の属性の魔法しか使えないんだけどね。僕の場合は火、水、土、風が使えるよ。フィルマンは土と風の魔法か使える」
「兄さんとお父様は4属性使えるんだ!4つ使える人はほとんどいないんだよ!!」
「わぁ〜!!!すごいんですね!!!では4つの中からどれか使えるんですね!!」
「いや、厳密に言うと光と闇を入れて全部で6属性あるんだ。でもこの2つの属性を持っているものはほとんどいない。」
「…闇属性だと虐められたりします?」
よく、闇属性が悪ってイメージあるけどどうなんだろう…。闇属性って分かったら迫害ってなったら嫌だな…。
「そんなことはないよ、寧ろ喜ばしいことなんだよ」
「そうなんですね!何か1つでもいいから私も魔法を使ってみたいなぁ〜」
「はははっ、セリーヌはまだ魔法使ったこと無かったもんな!んじゃ、ちょっとやってみるか?」
「えぇ?!子どもでも魔法使っていいんですか?!」
思わず、フィルマンお兄様に詰め寄ってしまう。
「あぁ、魔塔の魔法士の資格があるやつが見ていれば子どもでも魔法を練習はできるんだよ。そんで魔法士がきちんと制御できていると認定すれば子どもでも魔法を使って大丈夫だ。大体の子は5歳の洗礼の時に属性や加護の有無を教えてもらえるよ。…そうだ、シドは魔法士の資格持ってるはずだから呼んできてやるよ」
おぉ!そんな決まり事があるとは知らなかった。こっそり練習しようかと思ったけど、やらなくてよかったなって考えているうちにフィルマンお兄様はスタスタとドアまで行き、シドさんを呼んできてくれた。というか、シドさんハイスペックだな〜さすが公爵家の護衛騎士!!
「では、防御壁を張りますので練習してみましょう。お嬢様、水を思い浮かべて手のひらに出してみましょう。私がやって見せますので見ていてください。こんな感じですね…これを言葉と…」
シドは手のひらに10センチぐらいの水の球を出した。ヘぇ〜結構簡単そう!よし、やってみよう!私はシドさんの説明を待たずに手のひらに水の球を出すイメージをする。やってみると見る見るうちに水の球が表れた。
「わぁ〜!!できた〜!!」
「「「っ!!!」」」
私がキャッキャと喜んでいるのとは、対照的に3人は見つめ合って黙ってしまった。
「…あの、私間違ってる??」
やり方がおかしかったのかなと思い首を傾げる。
「…いえ、そんなことありませんよ。お上手ですよお嬢様。では他の属性もやってみましょうか…」
そう言って、火、土、風もやってみたらなんとできたのだ!!すごい!!お兄様と同じ4属性だ〜!!!って1人でニコニコと喜んでいると、私の周りの3人の空気が重い。えっ…どうしたの??何か間違ってるのかな…。ちなみにシドさんは3属性で火、水、土の魔法が使えるんだって。
「…フィルマン、お父様とお母様を至急呼んで来てくれ」
「分かった!!」
そう言ってお兄様は部屋を猛スピードで出ていき、お父様とお母様を連れて戻ってきた。お父様とお母様も真面目な深刻そうな表情をしている。そんな顔されると不安になる。
「アレクシお兄様…、私いけないことした??」
よく分からないけど、何かまずいことがあるのだとみんなの表情から読み取れた。不安でアレクシお兄様の手を握る。
「そんなことしてないよ。セリーヌの魔法がとても上手だからお父様達に見てもらおうと思って呼んだだけだよ」
「ほっ…、そうなんだ。じゃあ、さっきのをやって見せればいいの?」
「うん、お父様達に見せてあげて」
「分かった!!」
私は得意になって、先ほとやった魔法を両親にも披露した。ポンポンと次から次へと見せたのだが、それを見たお父様は眉をきつく寄せて考え込み、お母様は不安そうに口を押さえていた。
なんだろう…いつもだったら「すご〜い!!天才だね!!」なんて褒めてくれるのに…。
私は思わず俯いて落ち込んでしまった。何だか、目にも涙が溜まっていく…。泣きたくないのに体に引っ張られるのか、すっかり涙脆くなってしまった。
「セリーヌ、上手にできたね。すごいぞ」
私の様子にハッとしたお父様が慌てて声をかけてくれたので、顔をあげてお父様を見つめる。
「セリーヌ、今度は闇属性もやってみよう。私はできないが、自分の影を動かすイメージでやってみておくれ」
「ぐすっ…はい…」
私は自分の影を動かすイメージでやってみる。すると私の形をした黒い影が起き上がってきた。
「おぉ!!できた!!」
「「「「「…っ!!!!!」」」」」
「…上手だね、では今度は光魔法をやってみようか。」
そういうとお父様は水魔法で小さなナイフを作り、少し自分の指を切った。
「セリーヌ、この傷を治すイメージで魔法を使ってごらん」
「…うん、やってみる」
私はお父様の指に手をかざして傷がなくなるようにイメージした。痛いの痛いの飛んでいけ〜!!
「「「「「………」」」」」
できてしまった…私って6属性あるんだ!!っていうかこれって珍しいのかな??4つですごいって言ってたし、何かまずい事にならないといいんだけど…。ラノベとかではよく光属性使えると聖女に認定されて祀りあげられるってことになってたけど…。そんなめんどくさいことになるのかな??そうなったら嫌だな〜…。部屋全体の空気も張り詰めて重いし…。思わず自分の両手を胸の前で握りしめて俯く。悪いことをしてしまったような気がして、心臓がドッドッドと音が耳のそばで鳴っている気がする。怖い…。
ふわっと、体が持ち上がって抱っこされる。驚いて顔を上げるとお母様がふんわりと笑っていた。
「セリーヌちゃん、6属性の魔法が使えるなんてすごいわ!さすがは私の娘ね!!」そういってウインクしてくれた。不安が少し和らぎ、ほっとしてお母様を見る。
「…セリーヌ、今から大事な話をするからよく聞くんだよ」
お父様は私の頭を撫でながら話し出した。
「魔法を使うにはほとんどの人が言葉と共に魔法を使うのが多い。それはイメージだけでなく言葉にすることで言葉の力が加わるから魔法を使いやすくするんだ。一般的には、言葉を使った魔法を使えるようになるには早くて3年はかかるし、無詠唱の…あぁ言葉を使わない魔法のことだが、それをできるのは才能のあるものに限られ、大体5年は最低でもかかるんだよ。だからセリーヌが無詠唱ですぐに魔法を使えたから私達は驚いてしまったんだ。不安にさせてすまなかったな…」
どうやら私は知らずにチートなことをやってしまっていたようだ!!それならお父様達が驚くのも無理もない…知らなかったとはいえ、申し訳ないことをしたな〜。
「…それから、これから話すことが一番大事なのだが、光属性と闇属性のものが表れたことは記録がある限り存在しない。ゆうに3000年以上は現れていないのだよ」
「…えっ」
えぇ〜〜〜〜!!!???それってちょっとチートどころじゃないんじゃないの?!まずいまずいまずい〜!!!教会に幽閉とかされちゃうのかな??!!ブワッと冷や汗が流れる。
「…私、みんなのそばを離れたくない…」
「「「「「そんなことさせないっ!!!」」」」」
みんなが声をそろえて叫んだので、驚いて目を見開く。
「安心しなさいっ!!!そんなこと絶対にさせはしないっ!!!」
「もちろんですわっ!!私の可愛い娘を取られてたまるもんですかっ!!!」
「セリーヌ、兄様がちゃんと守ってあげるからね」
「あぁ!!もちろんだ!!セリーヌをどこかに連れて行こうとする奴がいれば俺がぶっ飛ばしてやるっ!!!」
「私も、全力でお嬢様をお守りしますっ!!」
「…みんなっ、ありがとうっ…」
みんなが全力で否定し、守ってくれるという言葉をもらって嬉しくなる。嬉しくて涙が出る。
「本当にありがとう…みんな大好きだよっ!!」
私の涙をお母様がハンカチで拭き、チュッと額にキスしてくれた。そして、お母様の胸の中に身を委ねているうちにまた眠ってしまったのであった。