5歳になりました 1
公爵領では穏やかな時間を過ごすことができた。テオは勉強や使用人としての教育を受け、今では従僕として私のそばにいてくれている。テオは国王様から正式に闇魔法の使い手として認められ、王国中に知られる存在となり有力貴族から養子にならないかと言う誘いや、成人したら王宮の騎士団に入らないかとお誘いもあったけど公爵家に居たいという本人の希望を尊重することになった。
テオは元々頭が良かったから教えられたことはすぐに覚えて実践できていたし、武術もお婆様に教えてもらいメキメキ実力をつけている。テオは剣術も同年代の子どもよりできているけど、それよりすごいのは闇魔法を使った魔法だった。元々、魔獣との戦いの中で魔法を使っていたこともあるけど、より正確性が増して弓矢や動いている動物を捉えることもできるようになった。すごいね〜!!でも、一生懸命頑張っている姿を見ると時々心配になるので、無理矢理私と一緒の遊んだり読書やお茶をしたりする時間を設けて無理しすぎないようにした。
テオはご飯をしっかり食べて栄養を摂ったことで、背も伸びて同年代の子よりも大きくなりイケメン力が増している気がする。
ちなみに、私も剣術の練習をお婆様と一緒にやりました。これもチートでできたと思うでしょう?
残念でした〜!できませんでした!!体が本当、非力!!オス○ルみたいにかっこよく剣を振るって見たかったのに〜!!ぐすん…。剣が持ち上がらないので、お婆様が弓矢を用意してくれたけど、その弓を引くことが出来ないっ!小型なナイフは持てたけど30㎝ぐらいしか前に行かない…。なので、風魔法と組み合わせて投げることになりました。それならすごい速さで投げられたから良かった!これなら冒険もできるかもしれない!
そうそう、身体強化すると威力は増せたけど戦闘センスがないみたい…練習を頑張ったんだけどな〜…。一発で仕留めるのはできるけど素早い動きへの対応がなかなか難しいんだよね〜。今後も練習頑張るぞ!!
楽しい日々を過ごしているうちに、あっという間に5歳になりました!!そしていよいよ教会に行って洗礼を受ける日になりました!!この日の為に久々に王都に帰ってきました!!もう、王都のお屋敷のみんなが大号泣して歓迎してくれました。ちょっとあまりの圧に固まっちゃったよ。でも、みんな元気そうで良かった!
洗礼は春に行われるんだけど、王族と上位貴族、下位貴族、平民に分けてやるそうです。なので、今日は王族と上位貴族の子どもだけです。付き添いは保護者2名までとなっているので、お兄様達はお留守番。私は今日の日のために白いふわりと広がり、裾にはバラとリボンの飾りがついた可愛らしいドレスを着せられています。洗礼の時は白い服を着ることになっているそうで、この日のためにお母様は張り切ってドレスを用意していました。ドレス合わせは私が寒さでくしゃみをするまで続きましたよ…。今日のドレス姿をみんなに見せると、もう可愛い可愛いの大合唱!!まぁ、私も先生時代にお遊戯会で衣装着せた時、可愛いって連発してたから気持ちは分かるよ。
こうして王都にある教会に馬車でやってきました。教会には同い年の子ども達が両親に手を引かれて中に入っていきます。まず、お父様が降りてお母様をエスコート、そして私をエスコートして馬車から下ろしてくれます。
ん?あれ…なんかすっごく見られている気がする…。あ、病弱設定で王都にいなかったから珍しがっているのかな?お父様をちらりと見ると眉間に皺を寄せて周囲を睨んでいます。お母様は…扇で口元を覆いながら微笑んでいるけど、なんだが黒いオーラと圧が…。
うん、私は5年この世界で生きてきて知っている。下手に突っ込むとめんどくさいことになることを…。私はスルーすることにして両親に手を引かれて中へと入っていく。アーチ型になった大理石でできた廊下を進んでいく。何だか、イタリアにあるヴァチ○ン市国の教会みたいに大きくて綺麗。すごいな〜って観光のように周りを見ているとお父様が声をかけてきた。
「セリーヌ、もう少し行ったら中庭があって、そこには神樹があるんだよ」
「今の時期なら花を咲かせているんじゃないかしら?」
「わぁ〜!楽しみ〜!どんな花なのかな〜!」
ファンタジー世界の神樹かぁ〜!!すっごく大きいのかな?それとも黄金に輝いているとか?
「神樹は建国以来ずっと幹の大きさは変わらないのだが、毎年花を咲かせたり葉を茂らせたりと季節に合わせて表情を変えるんだ」
「神樹は神の力がなければ咲かないと言われているの。だからこの世界でも限られたところにしか無いのが残念よね」
「そうなんだぁ〜…不思議だね〜!」
私はワクワクしながら進んでいくと中庭が見えてきて神樹が見えた。そして思わず立ち止まってしまう…。
神樹は確かに大きく、立派だ。そして綺麗に満開の花を咲かせている。でも、神樹という割にはとてつもない巨木という訳ではなく樹齢は500年ぐらいで15メートルぐらいの高さだと思う。500年でも十分すごいと思うがそんなことは重要じゃない…。
「!!セリーヌどうしたんだ?!」
「セリーヌ、どうしたの?なぜ泣いているの?」
そう、私に瞳からはポロポロ涙が溢れていく…。私がなぜ樹齢と高さが分かったと思う?
だって、私は知っているから…。
それこそ前世では毎日見ていた…。この木の下でみんなで写真を撮ったし、お花見もした。かくれんぼや木についたロープでブランコもして遊んだ。
思い出がたくさん詰まった私にとって特別な木…。
神樹…それは、私が前世務めていた幼稚園にあった桜の木だった。幹の形や色、毎日見ていたから見間違うはずがない。
私の大切な木…。