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Side テオとヒューゴ

物心つく頃から、いつも母親と一緒に旅をしていた。母は褐色の肌に茶色の髪と赤い瞳の綺麗な人だった。行く先々でダンスを披露してお金を稼ぎ旅をしていた。母は火と水の魔法を使うことができたから、魔獣や山賊が出ても返り討ちにできるくらい強かった。そんな母が自慢だったし大好きだった。




それに比べて、俺は…。




褐色の肌に、黒い髪と瞳…。死を連想させる色…。




母がダンスを披露している時にちょっと探検しようと思い路地裏を1人で歩いたことがあった。小さい頃は自分の色が不吉だとよく分かっていなくて、いつも髪を隠していたフードを取って歩いていると気味が悪いと大人に蹴られ、子どもには石を投げられた。あまりの恐怖にガタガタ震えてしまったが、自分を奮い立たせてフードを被り直してなんとか逃げた。母の元に帰ると俺の変わり果てた姿を見て、泣きながら抱きしめ「ごめんね…」と言っていた。母が泣きながら俺の手当てをしている姿を見て、自分が他の人とは違うということに気づいた。そして、母が俺のせいで苦労していることもなんとなく分かった。



それからは人前で絶対にフードを取ることはなかった。




旅をしているうちに、ある噂を聞いた。リュミエール王国は様々な種族に寛大で、みんな仲良く暮らしているという話だ。俺たち親子はそんな国なら俺の姿でも、もしかしたら受け入れてもらえるかもしれないと考え、行くことにした。王国に入ると様々な人種の人達が仲良く暮らす姿を見ることができたが、俺の容姿が受け入れられるかは自信がなかった。しかも俺の魔法は闇属性。慎重に動かなければならない…。俺たち親子はリュミエール王国の中でもジファール公爵領は当主が名君の誉高かく、豊かだと聞きそこに向かった。


しかし、向かう途中の冬、母が倒れてしまった。今までの長旅の苦労がたたったのだろう。母は俺を1人残してしまうことを心配し涙を流していた。俺は強がって1人でもちゃんと生きていけると言った。


でも、本当は母という心の支えがなくなることに心が凍りつきそうだった…。


母が亡くなり、大きな木の下に埋めた…悲しくて哀しくて…。それでも約束だからジファール侯爵領を目指した。母が残してくれた僅かなお金と荷物をアイテムボックスにしまい、旅を続けた。途中の森でグレートウルフという大きなオオカミのような魔物に遭い、逃げる時に足を怪我したが諦めずに進んだ。

そして、ジファール侯爵領に入って数日、広場が騒がしいことに気がついて覗く。すると公爵家の人々が丁度領地に戻ってきたということだった。


公爵家の人々が挨拶をしていき、領民は皆喜んで聞いていた。公爵家の挨拶で最後に現れたのが小さな女の子だった。長い銀色の髪に金色の瞳、可愛らしい女の子だった。女の子が挨拶するとい突然、空から光が煌めき花が降ってきたのだ。その光景はまさに天使…。あまりにも神々しい姿に息を呑んだ。そして思った。



俺とは正反対だと…。



そう思うと何だか力が抜けてしまった。


なんかどうでもよくなってしまった。


どうして俺だけがこんな目に遭うのだろう…。あの子が本当の天使なら俺を助けてくれよ…。そんなことを思いながら膝を抱えていたら、気がつくと夜になっていて目の前には光に包まれたあの女の子がいた。そしてその子は俺を助けてくれた。


天使って実在するんだな…。






体調が回復した俺は侯爵様と話をする時間をいただき、公爵様の執務室を訪れた。


「体調はどうだ?少しはよくなったかい?」


「はい、お陰様でここまで動けるようになりました。本当に皆様のおかげです。ありがとうございました」


「気にしなくていい。我が領地にいる者を守るのが私の務めだ。それで私に何か話があるようだが?」


「はい、私の今後について図々しくもお願いがあって参りました」


「ふむ、具体的にはどのような?」


「私を公爵家に置いていただきたいのです!どんな雑用でも構いません!お願いします!!」


「なるほど…しかし公爵家に仕えるのならそれなりのレベルが必要になるのは分かっているかい?」


「これからしっかりと学んでいきます!旅をしてきたので異国の言語は理解できますし、計算もできます!給料だっていりません!ここに居たいんです!!お願いします!!!」

俺は深々と頭を下げ、公爵様の言葉を待った。数秒の時間が何十分にも感じられる。お願いです!セリーヌ様のそばにいたい…どんな形でもいいから…。


「頭を上げなさい、君の気持ちは分かった。しかし、今のままでは公爵家として君を使うことはできない」


頭を鈍器で殴られ、心臓を引きちぎられたような気持ちだった。こんな辛い気持ちは母が死んだ時以来だ…。


「だから、君には教師をつけるから勉強や使用人として必要な教養を身につけなさい。そしてもし君がセリーヌの隣に居たいのなら武術や魔法も使えなければいけないね。セリーヌに仕えている使用人は身の回りの世話はもちろんセリーヌを守れなくてはいけないんだよ。やれるかい?」


「…っ!!!はい!!!やれます!!!よろしくお願いいたします!!!」


「君はまだ子どもだ、ゆっくり学んでいけばいい。正式に働くようになったらきちんと給料も支払おう。子どものうちはお小遣いを渡すから好きなものを買いなさい。お金の管理をするのも大切なことだよ」


「…本当に…本当にありがとうございます!!」

嬉しくて涙が出る…嬉しくて涙が出るなんて初めて知った…。そんな俺を見て公爵様は頭を撫でてくれた。その手つきがセリーヌ様に似ていて、親子だなって思って温かい気持ちになった。




こうして、公爵家に正式に置いてもらえることになり、将来は公爵家で働くことを伝えるとセリーヌ様は飛び跳ねて喜んでくれた。


今後はジファール公爵家やセリーヌ様のためにこの身を捧げようと心に誓った。

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