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3歳になりました ⑩

私は広場で見つけた子と一緒に公爵家に戻りました。魔法で手当てをして顔色が良くなったのを見てホッとする。辺りを見ると、家族がお父様の執務室に集まり心配そうに私達を見ていました。私はこの子をベットに寝かせてあげてほしいと伝え、客室に寝かせてもらった。そして、少し落ち着いてからジェット様を交えて話をした。


ジェット様の話によるとあの子はこの国からは遠い異国の出身で、自国で髪と目が黒いために不吉だと虐げられ逃げてきたそうです。この国でもお葬式には黒い服を着るのだが、黒を身に纏うのは死者が静かな闇に包まれ安らかに眠ってほしいという願いから広まったものだそうだ。よって『黒=お葬式』のイメージがあって縁起が悪いから黒い服をお葬式以外で着ないのである。でも闇の精霊王であるジェット様も他の精霊王達と同じように尊い存在だと伝わっているし、ジェット様がいるから死んでも安らかに眠れるのである。


しかし、中には間違った認識をしている国もあるようで、『闇=黒=死』をもたらすと言う偏った認識を持っている人はいるみたい。闇の持つ暗いイメージは死を連想させ、死を畏れるあまり黒は不吉だという偏見を持ってしまっているようだ。驚いたことにこの世界では黒髪黒目はほぼいないそうだ。珍しさも相まって恐怖を助長させてしまうのかもしれない。


前世の認識からすると黒目黒髪は当たり前だし、そんなことで人を迫害するなんて許せない。先生として、いろいろな子ども達と接してきた私としては、そんなことで子どもを苦しめるなんてありえない。もちろん大人であっても許せないけどね。ジェット様は自分と同じ色であるために迫害されてしまった状況に心を痛めていたみたい。しかも偏見のある国で育っていたため、手を差し伸べても怖がってしまうと思い私の元に来たみたい。私自身も呼ばれている感じがしたのは彼も闇属性の力があるそうで、力を通して共鳴したからみたい。レアだと思っていた闇属性だけど、この国には3000年現れなかっただけで、他国では人知れず存在していたのかもしれない。ってことは光属性の人もいるのかな??


焦っていたために、ゴリ押しで出て行ってしまったけど今後は家族か護衛騎士を必ず一緒に連れて行くように注意された。心配かけてごめんなさい…。


そしてその子のことが気になったので、そばについていようと思ったけど公爵家の主治医が診てくれるそうなので、お言葉に甘えてその日は眠りについた。






次の日、私はすぐに昨日の子に会いに行った。私が連れ帰った子は未だに目を覚まさず、眠っていました。側にいたお医者さんに容体を聞くとしばらく何も食べていなかったようなので、目覚めたら消化に良いものを食べるようにするといいと言われた。私が部屋に戻って休んでほしいと伝えるとお父様に状態を伝えに行き、それから休むと言って部屋を出ていった。夜通しで診ていただいて本当にありがたいです。寝ている姿を見るとメイドさんが綺麗にしてくれていて、清潔なパジャマに着替えたので昨日よりも元気そうに見える。私が手を伸ばして頭を撫でると、瞼が震え目を覚ました。


「おはよう、起こしちゃったみたいでごめんね」

私が頭を撫でながら話しかけると、その子は目を見開き固まってしまった。


「私はセリーヌ・ド・ラ・ジファールっていうの。よろしくね。昨日は勝手に連れてきちゃってごめんなさい。ここはジファール公爵家のお部屋だよ」


「…ぇ…あっ…ゲホッ、ゴホッ!」


「あ、水!!待って、今水あげるね!!はいどうぞ!!」

私は側にあった水を掴むとその子に差し出した。その子は一瞬飲むのをためらったがそのまま口にした。私が背中をさすってあげると強張っていた体から力が抜け、落ち着いたようだった。


「あなた、お名前は?あ、この国の言葉分かる??」


「…はい、分かります」


「あぁ!良かった!お腹空いてるでしょう?柔らかいものなら食べてもいいってお医者さんが言っていたから、一緒に食べましょう!私もまだご飯食べてないの」


私はジゼルに朝食を持ってきてほしいと伝えると、すぐに準備してくれた。ジゼルはベットの上で食べられるようにベットテーブルを置いてくれて、温かいスープとパン粥、すりつぶしたりんご、ミックスジュースを置いてくれた。私はベットの横の椅子と机で同じものを食べることにしました。


「ゆっくり食べてね。もっと食べられる時はおかわりあるからね!でも、無理はしないでね!」


「………」


「?どうしたの?嫌いな物だった?」


「えっと、俺が食べて…いいんですか?」


「もちろんだよ!いっぱい食べて!!ほら、あーん!!」


「むぐっ?!」


「ほら、美味しいでしょ!私も食べよ〜っと!」

私がもぐもぐと食べだすと、じっと見ていた彼も自分で食べ出した。髪長いから女の子かと思ったけど俺って言ってたから男の子だったみたい。彼は大体半分ぐらい食べるとスプーンを置いた。そしてミックスジュースを飲みながら再度話しかけてみることにした。


「ねぇ、お名前って教えてもらえる?呼ぶときに不便でしょう?」


「…名前は無いです」


「そうなんだ…う〜ん、じゃあどんな名前がいいかな?好きな名前とかある?」


「えっ…無いですけど」


「そっか〜、んじゃテオなんてどう?」


「テオ?」


「うん、『神の贈り物』っていう意味だよ!素敵でしょう?」


「!!!そんな立派な名前…俺には勿体無いですっ」


「私はピッタリだと思うよ!だってテオはすっごくイケメンだし大きくなったらきっとモテモテよ!!」

そうなんです、テオの綺麗になった姿を見てみたら美人なんですよ!切長の二重瞼が素敵で、とってもかっこいいの!


「…は?」


「え?!もしかして無自覚だったの?!テオってすっごくかっこいいんだよ?!あ、っていうか勝手にテオって名前を定着させてしまったね。でもテオにピッタリだしいいよね?!」

私の勢いに負けたテオは頷いてくれたので良かった。


「テオ、あなたイケメンだけど今のままじゃ痩せすぎてて心配だから、いっぱい食べて元気になってね!」


「……っ…うぅ…ぐっ…ぐすっ…」


「えぇ?!どうしたの?!どこか痛いの??大丈夫?!」

私が駆け寄って頭を撫でると更に泣いてしまった。オロオロしながら頭を撫でているとお父様達がやってきた。みんなしょうがないなって表情しているけど、私いじめてないよ?!誤解だからねって弁解するとなぜかみんなに笑われたのでした。

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