3歳になりました ⑨
ジファール公爵家の城が見えてきました!そうです、城なんです!!
あのシンデ○ラ城のモデルになったお城にそっくり!!!私のネズミの王国で推しのプリンセスの1人だったから、もう大興奮!!!周りの家族が驚いているのが分かったけどオタク心を刺激され、気分は聖地巡礼だった。城に着くまでの間、馬車の中でぴょんぴょん跳ねて喜んでいると我にかえったお父様に捕獲されました。お父様、我を忘れてすみません。
公爵家の敷地は王都の屋敷の比じゃないくらい広くて広大だった。もう、城が見えているのに全然つかないのには驚いた。
やっと、ジファール公爵家の城に到着しました。玄関にはローズお婆様が出迎えに出ていらっしゃった。銀の髪と瞳で、スラリとした体型。女性だけどソードマスターで若い時は王宮近衛騎士団にいたそうです。そしてお爺様の護衛騎士でもあったそうで、一緒に過ごすうちに愛が芽生えたそうです。そう、お爺様は先代の国王様の王弟なのです。きゃ〜お婆様、素敵〜!!オ○カルみたいなクールビューティーな感じも憧れる〜!!
「アントワーヌおかえり。みんなもよく来たね」
「お母様、しばらくの間よろしくお願いします」
お父様の挨拶に合わせてお願いしますとみんなで頭を下げて挨拶をする。
「あぁ、よろしく。堅苦しいのは好きじゃないんだ楽にしな。セリーヌ、久しぶりだね。ますますミラに似て可愛くなったね」
「お婆様はますますお美しいですね!!今度私にも剣を教えてください!!」
「おぉ!いいよ!!」「「「「「絶対ダメだ(よ)!!!」」」」」
見事にみんなの声が重なりました。
「私のリトルレディー、そんな危ないことしちゃダメだよ!!」
「怪我したらどうするんだ?!」
過保護チームがギャンギャン騒いでおります。でも、お婆様とアイコンタクトして頷き合います。よし、お婆様は味方につけたぞ!!やっぱりこんな世界に来れたんだから、剣を持って探検してみたいよね!!
「セリーヌ、絶対ダメだからね?!」
それを見ていたアレクシお兄様が再度止めに入る。よし、隠れて練習しよう!!全然懲りていない私をジトっと見てるけどスルーする。
こうして私の公爵家での生活が始まりました。その日は、公爵家の城や敷地内を案内してもらいました。大まかなところだけしか行かなかったけど、それでも半日かかった。そしてみんなで豪華な食卓を囲み、楽しいひと時を過ごして後は寝るだけ。私は白のふわっと広がるワンピースのようなパジャマを着て寝る準備をする。
何だか胸騒ぎがして窓の外を見る。何だろう?誰かが呼んでいる…?
私が窓を見ていると、隣に闇の精霊王であるジェット様が現れた。
「ジェット様、何だが呼ばれているような気がするんです…」
「…あぁ、あの者が呼んでいるのだろう…」
ジェット様の様子はどこか悲しんでいるような様子だった。
「私が助けても良いのだが、私のせいで苦しんでいるのに…」
その表情は苦悶しているようだった。ジェット様ができないこと…でも、私が力になれるからジェット様は私の元に来てくれたんだよね。
「分かりました。では、私が行きます!!」
私は、すぐに部屋の前にいる護衛騎士に声をかけ一緒にお父様の元に向かう。
「お父様、突然来て申し訳ありません。お話があります!」
「セリーヌ、どうしたんだ。もう寝る時間だろう?」
「はい、そうなのですが。私、行かなくちゃいけないんです!!少しの間留守にしますがすぐに戻りますので心配しないでください」
「セリーヌ!?何を言っているんだ?!」
「お父様、ごめんなさん!行ってきます!ジェット様と一緒に行くので心配しないで!!」
いい終わると同時に私は姿を消す。そう、私は魔法具がなくても転移魔法が使えるんです。自分が行った所や見たところに限定されるけどね!
ジェット様に聞くと、その人は昼間に私が行った広間の近くの路地にいるみたい。広間に着くと同時に隠密魔法を展開して姿を消して、その人を探す。ジェット様に導かれながら進むと暗くて寒い路地裏にその人は膝を抱えて俯いて座っていた。体は傷だらけで片足の骨は不自然に曲がっている。体は汚れており、すごく痩せている。しかもまだ5歳ぐらい子どもだ。
私は思わず魔法をといて駆け寄る。私が前世先生をしていた時に担任していた子ども達を思い出し、胸が締め付けられる思いだった。子どもがどうしてこんな酷い目に遭わなければいけないのか!!
私に気づいてその子が顔をあげる。長い黒髪と黒い瞳で、褐色の肌をしていた。頬は痩せこけていたが、目が合うと驚いた表情をしていた。
私は構わずに抱き着き、涙ながらに声をかける。
「もう、大丈夫だよ…」
私は、その子を抱きしめながら転移魔法で公爵家のお父様の執務室に戻る。そして、戻ると当時に回復魔法を施す。もう、この子が辛い目に遭いませんように…。