表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/93

Side ヒューゴVSリュカ

執務室に戻り、仕事机の前に置かれている応接椅子に座った。私に睨まれていても相変わらず飄々としてリュカはニコニコと笑っている。おまけに、濃いめの紅茶とお菓子の要望まで伝えている。


チッ…食えない奴。リュカとは歳が近いこともあり、子どもの頃からの腐れ縁だ。王位についてまだ数年だが、前国王同様に明君の誉高い。しかし、国のため敵には容赦しないことも多々ある。それ故に油断できない相手なのだ。


セバスがリュカに紅茶とお菓子を出すと、リュカは一口紅茶を飲み美味しいと喜んでいた。よく昔から公爵家には遊びに来ており、その時からセバスの紅茶を気に入っていたからな。今度はミルクを入れてミルクティーを楽しんでいる。


こいつ、何を呑気にティータイムを楽しんでるんだ。


「おい、パーティーにはしょうがないから呼んでやったが、まだ時間にはだいぶ早いのだが?時計も分からないほど耄碌もうろくしたか?」


「はははっ、相変わらずの毒舌だな!セリーヌにお前の捻くれた性格が似なくてよかったな!!あの子を…」


「セリーヌはやらんぞ」


「まだ何も言ってないだろ〜?」

クスクスと笑いながらリュカはクッキーを摘んでいる。王家としてはリュカの息子の妃として囲っておこうと思っているのだろう。あの短時間でセリーヌの才能に気付いたのはさすがだな。


大体、予定の時間より早くやってきたところを見ると、なんとしてでもセリーヌに会おうとしていたのだろう。こいつは勘がいいから、私がずっと娘に会わせないことに違和感を覚えていたはずだ。ただ娘を嫁に出したくない父親としての反応だけではないことにも気付いたはずだ。本当に、我が国王ながらたいしたものだ。


「はぁ〜…今から話すことは全て真実だ。心して聞けよ」


そして私はセリーヌが6属性の魔法が使えること、6人の精霊王の愛し子であること、そしてなぜ力が使えるのかは5歳の洗礼の時に分かるらしいと言うことを説明した。私自身も未だ分からない部分が多いが、今後は多くの者の協力が必要となってくることも事実なのだ。そして、目の前にいるこいつほど頼りになるものはいない。認めたくないがな…。


説明を聞き終えたリュカは真剣な目になり、考え込んでいた。


「なるほど…お前が今まで隠していたのも頷ける内容だな。そして、今後どう動くつもりだ?」


「今は表立って動くつもりはない。下手に動いて精霊王達の反感を買うことはないだろう…、しかも精霊王達よりも上位の…創造神が関係している可能性もあるからな。精霊王達はセリーヌが伸び伸びと過ごせることを望んでいる、他者があの子に何か無理強いすれば怒った精霊王達がどう動くか…考えただけでも恐ろしい…。お前も変なこと考えるなよ」


「分かっているよ、欲を出したがために国が滅んでしまっては意味がない。私には国を守る責務があるからな。もちろん、宰相であるお前にも国を守る責務はあるぞ」


「あぁ、せいぜい使えるものは使って守らせてもらう。とにかくセリーヌが幸せであれば世界の平穏は守られるからな」


「はぁ〜…全く、お前といると退屈する暇がないな〜…。」


「公爵家としては、父達が軍事面強化と根回しを手伝ってくれる。お前も国が滅んでほしくなければ骨身を惜しんで協力しろ」


「分かっているよ。とりあえず王家は全面的に後ろ盾になる。しかし、全てを公表するかどうかも含めて5歳の洗礼の後に再度検討した方がいいだろうな」


「そうだな、とりあえず守りを固めて洗礼に備えることとしよう」


互いに頷き合い、お茶を飲む。連日の騒動続きで頭が痛くなってくる。この後パーティーもあるのかと思うと更に疲れが増してくる。はぁ〜…セリーヌのところに行って癒されたい…。私は無意識に内ポケットに入れていたポプリをそっと取り出す。小さな袋にはセリーヌが魔法で乾かして作ってくれた薔薇の花が入っている。持っているだけで心が洗われるようだ。


「それはなんだ?」


チッ、コイツがいたのを忘れていた。つい癒しを求めて出してしまった。


「…これはセリーヌが私の誕生日プレゼントに作ってくれた薔薇のポプリだ」


「へぇ〜!!小さいのにそんなものも作れるのか!!なぁ、ちょっと見せてくれよ」


「嫌だ!!お前に持たせたら穢れるだろ!!」


「失礼な奴だな〜!ちょっとぐらいいいだろ!?」


「いいや、駄目だ!!!セリーヌは天才だから何でもできるんだ。すごいだろう!!…あぁ、それからセリーヌに私のために歌を歌ってくれたんだ!!羨ましいだろう!!」


そう言って、思い切り見下すとリュカは悔しそうに口を歪めていた。しかし何か思い出したようにニヤニヤしだした。


「そういえば、私もさっき聞いたんだったなぁ〜!セリーヌが〈チェンバーロ(チェンバロに似た楽器)〉みたいな見たことない楽器を魔法で作って、弾きながら歌っていたよ」


「何ー???!!!」


「すごく綺麗な曲だったな〜確かこんな感じの…」


〜♪〜♪〜


「???!!!」


「って曲だったけど、初めて聞いた歌だったな〜。お前もこんないい曲をプレゼントに聞かせてもらって良かったな!!……えっ?」


私は自分のうちなる怒りを鎮めることができなかった…。


「お、おいっ!!どうしたんだよ?!何でそんなに怒ってるんだ?!」



何で怒っているかだって…?



それはなぁー…




「私もまだ聞いたことがない曲を何でお前が先に聞いてるんだ???!!!覚悟できてるだろうなぁ?!」


「ちょっと、落ち着け〜!!!」


この後執務室から怒号と叫び声が上がり、屋敷が騒然となったのだった。


因みに、この後セリーヌの元に行きリュカが聞いた曲を弾き歌いしてもらうまで、ヒューゴの怒りは治りませんでした。もちろん他の家族も駆けつけ、みんな泣きながらスタンディングオベーションでセリーヌを褒めちぎったのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ