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Side 陛下とセリーヌの出会い

「陛下、こうすぐジファール公爵邸に着きます」


「あぁ、分かった」

私は秘書の声を聞き、見ていた書類から目を離し、顔を上げる。


「はぁ…執務が詰まっているのに無理やりはやく王宮を出発してきたんですから、帰ったら寝ないで仕事していただきますからね」


向かいの馬車の座席に座って、小言を言ってくるのはエミールだ。茶色の髪に灰色の瞳、どこにでもいるような普通の青年だが、仕事は実に正確で速くて優秀。しかし小言が多いのが玉に瑕だ。


「陛下、失礼なことを考えているって分かってますよ」


ギクッ、そして勘もいい。


「分かっているから、そんなに心配するな。ちゃんと仕事はする。どうしてもヒューゴの娘に会っておきたいのだ」


「どうしてそんなに会いたいんです?まだ3歳の子でしょう。王子のお妃にでもするつもりですか?」


「あのヒューゴが未だに会わせようとしないところを見ると、何かある気がする。何より私の感が会った方が良いと言ってるんだ」


「はぁ〜…困った上司を持つと部下が苦労しますよ。あ、着いたようですよ」


我々は公爵家の門番に招待状を見せ、中にはいる。ジファール公爵邸の門を馬車で潜り進んでいく。外の景色を見ていると薔薇の花が見えてきた。


そして薔薇と薔薇の間に銀色に煌めくものがあった。


っ!!あれは!!


「馬車を停めろ!!」


「うわぁっ!!何なんですか?!」


「ちょっと行ってくる、お前は先に公爵邸に行ってろ」


「えっ?!待ってください、陛下〜!!」


私は水と風を応用して目隠しの霧を作り隠密魔法を展開した。先程の場所に向かうとそこに居たのはピンクのドレスを着た3歳ぐらいの可愛らしい女の子と護衛騎士が一緒に歩いていた。あの子がヒューゴの娘か?


そう思った瞬間、女の子が振り向いた。金色の瞳がじっとこちらを見つめる。おまけに護衛騎士の2人もこちらを凝視している。姿は見えないはずだが、何かを感じ取ったのだろう。さすがはヒューゴの娘だと感心してしまう。そして公爵家の護衛騎士の能力の高さにも驚く。茶髪の男はいつでも剣が抜けるように構え、もう1人の紺色の髪の男は連絡魔法を飛ばしたのが見えた。これは早くしないとヒューゴに見つかってしまうな。私は更に気を引き締めて後を追う。


着いた先にあったのは温室だった。懐かしいな〜昔はよくヒューゴとここで遊んで、花を踏んでドムに怒られたなぁ。


私は女の子を追って温室に入った。すると女の子は紙に5本線を横に書き、見たことがないお玉杓子のような形を上に書き出した。…何を書いているのだろう?15分程で書き上げると何かを思案し出した。そして思い立ったように魔法を使った。防音や認識阻害の魔法を展開したのだ。そしてものすごい魔力量で何かを作り始めた。


あれは…楽器か?いや、そんな事よりも、あの楽器はどうやって出てきたんだ?魔法で何かを生み出す時、何かしらの材料が必要となる。しかし、あの楽器はそれを必要とせず何も無いところから現れた。まるで創造したかのように…。



自分の行き着いたあまりの答えに鳥肌が立った。




少女は嬉しそうに楽器の元に行き、空を見上げた後にメロディーを奏でだした。そして、歌い出したその歌声を聞いた瞬間その小さな少女から目が離せなくなった。銀色の髪と金の瞳が虹色に煌めき、この世のものとは思えない心が洗われる光景だった。荘厳なメロディーと美しい歌声にすっかり引き込まれ思わず聞き入ってしまう。メロディーと歌声が天井の日の光に照らされながら共に上に登っていくようだった。


そして少女が歌い終わった時、魔法を解き拍手を送っていた。


少女はビックリしながらも冷静に状況を判断しているようだった。まだ幼いのに実に落ち着いており頭の回転も速い。


少女が魔法を解除すると同時にヒューゴが来てしまったので、あまり話すことができなかった。


しかしヒューゴが私に…いや王家に対してなぜこの子を隠していたのか分かった気がする。ほんの少しの時間しかこの子のそばにはいなかったが、この少女…セリーヌが特別な存在なのだとヒシヒシと感じた。きっとヒューゴのみならず、前公爵達も巻き込んでセリーヌを守る算段をつけていたのだろう。そこに王家として、そして幼馴染の友として仲間に加えてもらわなければな。


では、ヒューゴとの楽しい楽しい地獄の話し合いでもしましょうか。


これは王国、いや全世界に関わることかもしれないのだから…。

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