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最近、街にプレイヤーという人が来ます。  作者: 月乃 そうま


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アマティーラ神殿5


 アマティーラ神殿、死体安置所には石の台座が何基と連なっている。

 その内のひとつに光の粒子が集まり、人の形を取ったかと思うと、プレイヤーがリスポーンする。


「くっそぅ……ルインのやつ……」


 運が悪いと言ってしまえばそれまでのようにも思うが、プレイヤーは死に際してリスポーンまでのタイムラグがある。

 そのタイムラグ中、プレイヤーは自分が死んだ後の状況を眺めることになるのだ。


 その死後の状況でルインは自分にしたのと同じような誘って仲間を殺すやり方をしているのを目撃した。

 そこから考えるに、ルインは自分への攻撃をわざと誘導して殺しに来たとしか思えなかった。

 プレイヤーは死に怯えたりはしない。

 痛みはほぼないのだ。

 ただ、その際の精神的苦痛と幾ばくかのアイテムドロップによる喪失があるだけだ。

 プレイヤーが恐怖するとしたら、時間を掛けて獲得したアイテムの喪失、これが今のところ一番になるだろう。


 それはルインの知るところのはずだ。


 ルインはNPCながら、プレイヤーに興味を持ち、プレイヤーを神兵しんへい、各種ウインドウを魔術書グリモワールと呼び、その内容を知りたがる、一風変わった趣味の持ち主だ。

 それ故に、プレイヤーが死ねばリスポーンし、またアイテムドロップのデスペナがあることも知っている。


 さらに言えば、前にルインのクエストである『ルイン護衛任務』を受けたことがあるこのプレイヤーは、ルインがどれほどの使い手なのかを知っている。


 このルナリードの街を中心に活動する冒険者たちは、散々ルインに世話になることになる。

 初めて街に訪れた時には、道案内をしてもらい、武器が欲しいと言えば手頃な価格の掘り出し物を見つけてくれるし、宿を求めれば用途に合わせた宿泊施設を用意してくれる。

 たまに出される『ルイン護衛任務』はプレイヤー間でも人気のクエストで、ルインの技を見ればプレイヤー側の技として解放されるし、この街で得られる経験値としては破格の報酬が得られるレイド戦用の魔物を少人数で山分けできる。


 だからこそルインはプレイヤーに重用されるというのに、ここに来ての裏切りだった。


 このプレイヤーは自分のアイテム欄を眺めて項垂れる。


「マジか……武器やら道具やら、めちゃくちゃロストしてる……」


 新たに粒子が集まり、新たなプレイヤーがリスポーンする。


「なんでだ? 偶然? ルインさんが?」


「いや、偶然はないだろ。

 ルインの技、見たことないのか?」


「いや、あんたもルインさんの護衛任務、受けた口か?」


「ああ、わざと俺たちを殺しやがった……貴重な魔物素材もあったってのに……」


「もしかして、捕まった方がヤバいことになってた可能性は?」


「NPCキラーのやつはレアイベントだって……」


 話している内に、次々とルインの知り合いを名乗るプレイヤーたちがリスポーンしてくる。

 最後にカービンがリスポーンしてきた。


「……俺なんて、蛇腹剣がギリギリはずれたと思ったら、ルインに喉笛掻き斬られたんだぞ!」


「いや、それこそ何か意図があったんじゃないのか?」


「おい、アレ、キマイラキラーズの……」


 何故、殺されたのか疑念と擁護が渦巻く中でリスポーンしたカービンが口を開く。


「聞いてくれ。

 ルインさんが言うには、公爵に捕まるのはヤバいらしい」


「ヤバい? 何が?」「やっぱり助けてくれるつもりだったのか……」「だからって何も殺さなくても……」


「公爵に捕まると拷問が待ってるって話だった。しかも、簡単に終わるものじゃなく、何日も拘束される類いのものらしい」


「よく分かんねえが、対魔騎士が理不尽に俺たちまで捕まえに来たのは、ずっと機会を待ってただろうことは分かるわ」


 最初のプレイヤーが唾棄するように言った。


「確かに公爵ってヤバそうな匂いがプンプンするよな……」


 誰かが言った。


「芸術や芸能を推奨していて、街の様子を見る限りでは特に圧政をしいてる雰囲気でもないよな?」


「善政をしいてるから良い奴とは限らないだろ」


「病弱でまともに自分で歩けないって話は聞いたな」


 そこでまたカービンが口を開く。


「たしか、この世界の権力者は魔法使いの血が濃いとか聞いたな」


「なんかこの世界って魔法使いは特別な存在とか設定になかったっけ?」


「ああ、魔法使いキャラ選ぼうとすると警告みたいなの出るよな。

 それで見た気がする」


「ロールプレイ的に縛りが発生するとかってやつか」


 皆が、あったな、と頷く。

 やはり、一度は魔法を使ってみたいとキャラ作成時に選ぶ者は多いのだろう。


「じゃあ、公爵は魔法使いってことか?」


「確定じゃないからなぁ。分からんとしか……」


「そんな事より、これからどうする?」


「さすがに殺された事に対する弁明くらいは聞きたいよな……」


「ルインに会うなら、冒険者ギルドか?」


「いや、今行ったら、また捕まるのがオチだろ」


「普段なら大通りでフラフラしてるんだけどな」


「家で待つのが確実だろうな」


「なあ、あんた、キマイラキラーズの……ルインの家とか知ってるのか?」


「カービンだ。

 ああ、来たいやつは一緒に来てくれ」


 全員だ。全員がぞろぞろとカービンの後ろに並ぶ。


 死体安置所がやけに騒がしいと確認に来た神官は、ぞろぞろと出てくるプレイヤーに地獄の蓋が開いたのかと一瞬、勘違いしたと後に語ったと言う。



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