スサーノ神殿
海人伝説。
その伝説は、神々の争いの中の一節に出てくる。
海人は神々の一柱、スサーノの眷属と言われる。
元々は外つ悪神と呼ばれたスサーノとその眷属だったが、アマティーラ神、ツクヨ神と和解、三元神の一柱に数えられる。
三元神はこの世界を創ったとされる神々で、この国の御三家、アマティーラ王家、ルナリード公爵家、アラバキ公爵家の元になったとも言われている。
そして海人たちは幾つかの伝説を遺している。
曰く、海人は海から来たが、本来は天人であり、堕ちた後の姿は全身を鎧った醜悪な姿だった。
曰く、海人は半神半人であり、その性は神兵のうつし身である。
曰く、海人は半身が黒灰であり、歪みの魔法に長けるが、死し時、黒灰と塩を残す。
曰く、人を愛し、人と交わることを決めた海人をクニツ・ネフイムと呼び、天へと帰り半神の権能を持って神の座へと戻ろうとする海人をアマツ・デアモロと呼ぶ。
「こんなところでしょうか。
細かな逸話もお聞きになりますか?」
スサーノを祀る老神官は久しぶりの客に嬉しそうに伝説を紹介した。
ルナリード領ではスサーノ信仰はあまり盛んではないが、三元神という三大神に数えられ、規模としては中程度の神殿が置かれている。
しかし、神殿はそれなりの大きさであるものの、人気はあまりなく、閑古鳥が鳴いているのも事実だ。
「あ、いえ、とりあえずはこれくらいで。
必要なことは聞けたので」
客、プレイヤーのアワツキは、にべもなくそう返すと、立ち去ろうとする。
「あ……そうですか……」
あからさまに、ガックリと肩を落とす老神官に、アワツキは取り繕うように言う。
「あ、また何かあったら聞きにきてもいいですか?
個人的には大変興味深いお話だと思いますので……」
「そうですか!
いやぁ、最近の人はこういう古代の口伝はあまり興味ないようで、聞いて下さる方もめっきり減ってしまったのです。
そうですか、興味がおありとはありがたいことです。
では、またお待ちしておりますので!」
途端、機嫌が良くなる老神官。
アワツキは愛想笑いを浮かべつつ、それなりのお布施を渡して、去るのだった。
「まったく……お師匠様も回りくどいことを……。
でも、塩と黒灰が空間系魔法の触媒ということで確定みたいですね。
このくらい、そのまま教えてくれても良さそうですが、まあ、これもおつかいクエストですから、仕方ないですね……」
魔法使いとして修行中のアワツキは誰に言うでもなく、そう独りごちる。
師匠であるノルナニアが伝えたかったのは、おそらくそれ以外の部分なのだろうが、アワツキが魔法に求めるのは実用性が重視されているため、残念ながら真意に辿り着くのは、まだ時間が掛かりそうなのだった。




