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最近、街にプレイヤーという人が来ます。  作者: 月乃 そうま


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スギータ施療院2


「……そうか、夢か」


 ルインは夢を見ていたのだと気づくと、無理やり感情に蓋をした。

 気になる部分もないではなかったが、それでもあの空虚を感じていると、また穴に風が吹き込みそうで、そちらの方が問題だった。


「はい、はい、どいて下さい。

 治療の邪魔ですよ」


 若くして頭髪が乏しくなりつつある薬師がプレイヤーをどかして、ルインの寝台の横に立つ。


「スギータさん、世話になるな……」


 スギータと呼ばれた若ハゲの薬師は、親指程の水晶をルインの目にあてがって覗き込んだり、身体のあちこちを押したりして痛みを確認したりする。


「ルインさん、ついに外に出たって。

 悪食復活かね?」


「痛ッ……きっかけをもらっただけだ……俺は案内人だよ、あ、痛ゥッ!」


「ふむ。復活してたとしても、全治三週間。

 こりゃ、高くつくよ」


「勘弁してくれ……その日暮らしなんだ。

 長居はできねえよ」


「ふむ。野垂れ死に希望ね。

 まあ、施療院を謳っている以上、基本は無料だから、タダにしとく?」


「じ、冗談じゃねえ。

 強制労働は御免だよ……痛ッ……」


 スギータ施療院は基本無料だが、金がなければその分を奉仕という名の労働で返さなくてはならない。

 魔法薬で治したりすれば、すぐに治るが、その後、完全管理の元、一年くらいは強制労働だ。


 冒険者を続ける気概を折られ、かといって冒険者を捨て去る決意も持てず案内人を続けるルインにとって、強制労働は冒険者としての身分を捨て去ることと同意で、頭の痛い問題になりそうだった。


「なあ、それってそんな高価たかいのか?」


「今のまま、地道に治すならこれくらい……魔法薬なら痛みは残るが、明日から動けて、これくらいだね……」


 ザビーの質問にスギータが指折り説明する。

 その金額は、プレイヤーにとって法外だと言っていいほどに高い。


「ぶっ……なあ、これって使えないのか?」


 ザビーが取り出すのはプレイヤーが使うポーションだ。


「プレイヤーはそんなもんで傷が治るのかい?」


「え?」


「そりゃ強壮剤、栄養剤の類いだね。

 アンタらは身体の作りからして呪いの塊だって聞いてるけど、便利なもんだね」


「そうなのか?」


「知らずに使ってんのかい?」


「HPポーションとしか画面……ええと、魔術書には出ないからさ」


「へえ……なんなら一回、切らせてくれないかね?

 どうせ、死んでも関係ないんだろ」


 スギータは笑いながら言うが、目はマジだった。

 それを感じとったザビーたちは、全員が細かく首を振って拒否していた。


 それからプレイヤーたちは隅に集まって相談をする。

 どうやってルインの治療費を捻出するかという相談だ。

 自分たちがルインを担ぎ出したという負い目があるからか、どうにかしようと考えているようだった。


 ルインはそれを横目に見て、そのプレイヤーたちの変化を好意的に受け止めていた。

 自分たちNPCと考え方に決定的な差があるはずが、この世界に馴染もうとしてくれているプレイヤーの変化は、当然、好ましいものだ。

 だが、やられたのは自分で、ここで甘える訳にはいかなかった。


「スギータさん。このまま三週間で進めてくれ。

 金はなんとかする」


「おや、いいのかい?」


「ああ、立ち止まっていられない理由もできたしな……」


 ルインはブレイクのことを想う。

 ブレイクが堕ちた原因は、やはり腕を失い、冒険者が続けられなくなったことが大きいだろう。

 ルイン自身も、案内人として、冒険者の身分にしがみついて来たからこそ、理解できる部分がある。

 つまり、ブレイクは道を違えてしまった時の自分でもあるのだ。


 ただ抜け殻のように生きてきたルインだったが、自分の中にどうしても捨てきれない何かがあるのを感じ取って、ルインは薄く自嘲の笑みを零すのだった。



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