ハジュマルナ街道6
アワツキはどうにか生き延びる術はないかと模索する。
一般的に考えて、銀器の冒険者に骨器の冒険者が勝つのは不可能である。
いくら成長が早いプレイヤーとはいえ、アワツキは前回殺された時からひとつもレベルアップしていない。
このままでは、一撃で終わりだ、そう思うと焦りから余計に頭が回らなくなっている。
「くっ……うご……け……」
崩れ落ちたままのルインは頭だけをどうにかブレイクに向けて、なんとか身体を動かそうとする。
もし、立って動けるのなら、ブレイクの右肩から腕を切り離して、『鬼道』ごと斬り捨ててやりたかった。
堕ちてしまった以上、もう元には戻れないとしてもだ。
だが、身体は言うことを聞かない。
ルインはただ念じるのみだ。
ブレイクはアワツキの目の前まで来た。
アワツキは剣こそ構えているものの、迷いに迷いが生じて、身動きできずにいた。
どう動いても、ブレイクに斬り伏せられる未来しか浮かばない。
「死ね! くそプレイヤーがっ!」
ブレイクが剣を振り上げる。
その瞬間、ブレイクは異音を聞いた。
それは空間が捻れる音で、この時、その場の全員が音を聞いたが、それが何を意味しているか分かる者はいなかった。
同時にブレイクの右肩を中心に爆発が起きる。
意思から解き放たれた那之が金の粉になって散っていく。
ブレイクは爆発に押されてよろける。
そして、見てしまう。
「……あ、あぁぁあっ、俺の、う、で……」
二本目の右腕の消失だった。
一瞬の放心状態。
アワツキは無我夢中で叫んだ。
「わああああああああぁっ!
け、【袈裟斬り】ぃっ!」
アワツキの身体が自動的に動く。
その剣はブレイクの左の肩口から入って、脇腹へと抜けた。
その剣は両断できる程の膂力はなく、ブレイクの筋肉に阻まれ、表面を削るに留まるが、ブレイクの戦意を喪失させるに充分な攻撃だった。
ブレイクは獣のような叫びを上げ逃げ出した。
流れ出る血液は点々と続いていたが、後から追った者たちはそれを辿ることはできなかった。
途中で途切れてしまったのである。
「ルインさんっ!」
アワツキはブレイクが逃げて行くのをそのままに、ルインへと駆け寄るのだった。
爆発の謎は解けないままだった。




